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ライオン転生  作者: 赤野用介@転生陰陽師7巻12/15発売
第1巻 ライオン転生

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22話 リオとお散歩

 ライオンが居着いた場所からは、草食動物が逃げていく。

 そのため俺達も移動して、最初に俺が群れに合流したエリアに戻った。

 この辺りには、スイギュウの群れが定住しており、食料が豊富だ。


『この辺りのスイギュウって、あまり逃げないよな』

『川があって、草が生えているからかも』

『それはあるかもな』


 その上、俺達のナワバリの真ん中辺りで、他所のライオンが寄って来ない。

 メスライオン2頭が出産まで1ヵ月に迫り、出産に向いた場所に移ったようだ。


『どこに行くの?』

『ちょっと、その辺まで』


 リオに尋ねられた俺は、近所のコンビニにでも行くノリで答えた。

 なお庭先とは、サバンナであり、様々な肉食獣が徘徊している。

 競合するライオンは居らず、ハイエナも半壊させて追い払った。

 だが、ヒョウ、チーター、リカオン、ジャッカル、コヨーテは生息している。

 生後5ヵ月の俺は、リカオン1頭と同程度の力だ。

 サバンナでは、まだまだ弱いほうである。


『どこに行くのって、聞いたの』


 ちょっとその辺と誤魔化したところ、リオから「正直に言え」と怒られた。

 理由もなく徘徊しないのは、サバンナの常識だ。

 子供は群れの中に居て、親に守られて育つ。

 だが群れにスイギュウを供出した俺は、新たな非常食を確保しておきたい。


 ライオンは餓えた時、子供に食料を回さず、自分の分を確保する。

 餓えた食事では、周りの仲間をライオンパンチで打ち払い、肉を奪い合う。

 俺が念のため、空間収納に食料を蓄えておきたいと思うのは、当然であろう。


『仕方がない。気になるなら付いて来て良いから、見逃してくれ』

『何をしに行くの』

『食料確保だ。前にスイギュウを出して、もう持っていないからな』


 結局俺は、リオには正直に話すことにした。

 リオは頭が良いので、説明すれば分かってくれる。

 食料の備蓄がゼロだと、いざという時に困る。

 前世であれば、地震に備えて3日分の水と食料は基本であった。

 そんな感覚で、俺は最低限の食料を確保しておきたいのだ。

 せっかく空間収納が使えるのだから、出来れば沢山入れておきたい。

 さしあたって現在の行動は、食材の買い出しである。


『一緒に行く』


 リオは付いてくることにしたらしく、俺の隣を歩き始めた。

 クロサイを取りに行って以降、母ライオンは、俺の自由行動に寛容だ。チラッと俺を見て、気にせず寝入った。

 行動の自由を得られるのは、とても有り難いことである。

 リオを連れた俺は、しばらくサバンナを歩いた。


 そして俺が見つけたのは、緑の草地に映える黒の巨体、スイギュウだった。

 ナワバリの中心には豊富に草が生え、草食動物にとっては、恵まれた土地だ。

 だがライオンが居るので、シマウマやヌーは嫌がって、あまり来ない。

 それゆえに大量の草が残っており、スイギュウはいつでも草を食べ放題だ。

 スイギュウを簡単に見つけられる所以である。


『よし、居たな。あれを狩るつもりだ』


 俺は付いてきたリオに、狩りの内容を事前に説明することにした。

 もちろん簡単にまとめる。


『作戦は簡単だ。先に穴を掘る。スイギュウを怒らせて誘導する。穴に落とす』


 ライオンは、「茂みで待ち伏せる。仲間が追い立てる。捕まえる」が出来る。

 一頭で狩る場合は、上り坂に追い立て捕まえることもある。

 作戦内容を説明したところ、リオには伝わった様子だった。


『どうして穴を掘れるの?』

『分からないな。いつの間にか、使えた』

『スイギュウを入れる力も、いつの間にか使えたの?』

『そうだな。いつの間にか使えていた』


 魔法や祝福に関する確認に、俺は分からない振りをした。

 俺が使えるのは、前世で評価ポイントを入れる善行を積んだからだ。

 だが言語翻訳の祝福があろうとも、ライオンに理解させるのは難しい。

 そして言ったところで、今世では再現できないので、意味は無い。

 それらに鑑みて、俺は転生者ではない場合に聞いても難解な説明を省略した。


『あたしには、使えると思う?』

『どうだろう。分からない』


 天使との会話から得た情報によれば、ライオンは土属性や光属性を持っている。

 だが俺が魔法を使えるのは、転生時に土魔法と光魔法を得たからだろう。

 もしかすると、言語翻訳を得たことも関係しているのかもしれない。

 俺が「ガオー」と鳴いても、異世界転生を行った世界を管理する神の祝福『言語翻訳』は、正しい魔法言語に翻訳してくれているはずだ。

 普通のライオンに魔法が使えないことは、俺がクロサイの取引を行ったグンターと娘のヨハナとの会話で言及されていた。

 ライオンは属性を持っていても、魔法は使えないのだと思う。

 実際には、やってみないと分からないが。


『穴を掘る時に、俺が鳴いて力を使う。それを真似したら、使えるようかもしれない。だけど出来ないかもしれない。ちなみに母達は、使えない』

『ふーん、分かった』


 リオは、一先ず納得したようだった。


 ――魔法の行使は、どういう原理かな。


 俺は、転生時に土魔法と光魔法を取得し、グンターからは古代魔法と呼ばれた。

 古代魔法と呼ばれるなら、現代の現地人は使っていないのだろう。

 おそらく、古代に転生した小説投稿サイトの利用者が使ったのだ。

 そしてグンター達には、現代魔法などがあるのかもしれない。


 前世で小説を読み漁った知識に基づけば、大気中には魔素マナが存在する。

 魔素を変換する力が、各自が体内に持っている魔力。

 実際に変換する命令が、イメージや、魔法陣や、魔法の詠唱など。

 大気中の魔素を、各自の魔力とイメージや詠唱で変換し、形にするのが魔法だ。

 俺の場合、そのような魔法を使っているのだと思う。


 ――現地人には、古代魔法は難しいのかもな。


 現地人は、転生時の魔法獲得など無いし、言語翻訳も持たない。

 善行を積んだ転生者は、異世界で無双できるわけだ。

 言語翻訳の祝福を獲得して人間に転生できれば『チートハーレム無双』、あるいは『婚約破棄からの逆転溺愛ざまぁ』を楽しめるだろう。

 ライオンの俺とは競合しないので、ぜひ今世を楽しんでほしい。

 大国を統治しようと、大聖女様と敬われようと、俺は一向に構わない。

 恐竜への転生者の生涯に関しては、ちょっと見てみたい気持ちもある。

 だれか体験談を小説にして、石碑に残してくれていないだろうか。


『その力でスイギュウを倒して、保存する。獲物を捕まえられない時に出すから、見逃して、内緒にしてくれ。いつも食べていると、無くなるからな』

『保存って、何?』


 再びリオが、説明を求めた。

 俺は、なるべく分かり易い言葉を考える。


『運べて、いつでも入れた時の状態で出せる。腐らないと思う』


 言語翻訳が、ちゃんと伝わるように仕事をしてくれたらしい。

 俺の言葉が理解できたリオは、目を丸くして驚いた表情を浮かべた。


『どうして腐らないの。どれだけ入れられるの』

『分からないけど、大人のスイギュウ10頭以上かな』


 スイギュウ10頭を入れたことはないが、アフリカゾウ1頭分の土は収納した。

 今世ではアフリカゾウを見ておらず、リオに分かるようにスイギュウで例えた。

 少なくとも6トントラックと同じ輸送力は、あるわけだ。また重量に関しては、ピラミッドの9倍の大きさの岩で、25トンを確認している。

 そして空間収納には、冷凍保存ならぬ、謎の保存機能も付随している。

 この力を前世に持ち込めたのなら、運送業者に成れるかもしれない。


 ――運送業者になっても、自分が長距離移動するから、負担は同じかな。


 運送業者になっても、あまり楽には稼げなさそうである。

 治癒魔法は、医師法違反になりそうだ。

 翻訳は、便利な翻訳サイトがあるので、食べていけないかもしれない。

 自分の能力は、サバンナのライオン向きだったと再認識した俺であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 治癒魔法、、売れっ子のマッサージ屋さんか整体師さんか新興宗教の教祖とかなるしか笑
[良い点] リオは最後まで難しいかもしれないが、直子なら魔法を使えるかな
[良い点] いざという時に備えてお肉を確保しようとはさすがですね。 落とし穴には水牛も驚くでしょうねえ。 [気になる点] 前話ですが、出ましたね〜オスライオンの横取りアタック。 まぁ、頼りになる用心棒…
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