表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライオン転生  作者: 赤野用介@転生陰陽師7巻12/15発売
第1巻 ライオン転生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/62

20話 ギーアの英才教育

 エムイーが、メスライオン達に追い払われて、2日が経った。

 ビスタが狩ったシマウマを食べた俺達は、周辺でゴロゴロと転がっている。


 俺達ライオンは、ナワバリは持つが、巣は持たない。

 ライオンが巣を作れば、近隣の草食動物達は、一斉に転居していくだろう。

 それを追ってライオンも移住を余儀なくされるので、巣は持てない。

 夜行性の俺達が、昼間に群れで集まって木陰でゴロゴロしているのは、人間が自宅で寝るのと同じようなものである。

 そんな群れでの最近の変化は、2歳代の兄達が、戻って来なくなったことだ。


『エムイー、戻って来ないね』

『あの2頭は、独立したんだろう』


 木陰に伏せながら呻るリオに、俺は唸り返して予想を告げた。


『戻って来ようと、したみたいだけど?』

『そうだけど、母達が追い払っていただろう』


 俺が知る限りで2度、エムイーは群れに戻って来ようとした。

 そしてメスライオン達に見つかって、追い払われていた。

 追い払われた理由は明白だ。


『ビスタの狩りを邪魔して、アンポンタンの食事を奪い、ギーアを突き飛ばし、母達に逆らった』


 メスライオンは、子が生後1歳半までは発情しない。

 つまり1歳半を過ぎた子供は、保護対象と認識しなくなる。


・生後1歳4ヵ月のアンポンタンと、4ヵ月のギーアは、保護対象の子供。

・生後2歳4ヵ月のエムイーは、保護対象の子供ではない。


 父ライオン達ではないオスのエムイーが、保護対象の子供達に攻撃した。

 それでメスライオン達の子供を守る本能に、スイッチが入ったわけだ。

 メスライオン達に追放されるのは、無理もない。


『オスライオンは2歳代で独立する。ちょうど時期だったのだろう』


 オスは概ね2歳から3歳の間に、群れの親達に追い出される。

 追い出される引き金は、オスの本能が強くなってきて父ライオンと争ったり、食料を独占しようとしてメスライオン達と争ったりすることだ。

 まさにエムイーの状況である。


 成長したオスライオンは、食事量が多い。

 大きくなったオスが群れに残ると、養うのが大変で、次の子供を育てられない。

 俺達の群れでは、メスライオン2頭が妊娠して、追い出される事情もあった。

 逆に考えれば、食料が十分に満たされていれば、追い出す必然性が一つ減る。

 食料事情が良かったジンバブエのマツサドナ国立公園では、オスライオン4頭が3歳後半まで、母ライオンと一緒に居た事例も報告されている。


『どこに行ったのかなぁ』

『シマウマを追っていったんじゃないか。腹も減るだろうし』

『シマウマは、どこに行くかなぁ』

『草が生えているところを、グルグルしているだろうな』


 草食動物の群れが追い求めるのは、群れを養える草地と水場である。


『いつか戻ってくる?』

『シマウマは戻るけど、エムイーは別の動物も追いかけて、遠くに行くだろうな。そのうち、どこかの群れを乗っ取って、俺達の父達みたいに君臨するさ』

『ふーん、そっか』


 リオは渋々と、エムイーとの別れを受け入れたようだった。

 オスライオンの最盛期は、5歳から6歳頃に始まり、3年ほどは保つらしい。

 エムイーが3年ほど生き延びれば、どこかの群れに君臨できるかもしれない。

 すると最初の子供達は、独立するまで育てられる。

 肉体的な最盛期にあるライオンは、ほかのライオンに勝てるのだ。


 その後は、衰えていく身体で群れを保つための戦いが待っている。

 王座から陥落するまでに、どれだけの子孫を残せるかは、実力と運次第だ。

 同い年のビスタは群れに残ったので、2歳上の兄姉達は、去就が定まった。


『俺の独立時期は、遅らせたいな。身体が大きいほうが、争いで有利だし』

『まあ良いけど』


 独立の時期が遅ければ、その分だけ身体が大きくなって、強くなる。

 父達と争わず、母達から食料を強奪しなければ、先延ばしに出来る。

 俺の懸念事項は、同い年のギーアだ。


 ――ギーアの理性では、オスライオンの本能を抑えられないだろうなぁ。


 既にギーアは大食漢で、勝負を好み、オスライオンの本能が強く窺える。

 いずれエムイーのように暴れて、群れから追放されるのは、目に見えている。

 その時に俺が一緒に出ていかなければ、俺は独立時にオス1頭となってしまう。


『ギーアが早々に暴れたら、先に出て行ってもらって、仲間を見つけるかな。最優先は、リオだし』

『仲間って?』

『オスライオンは、ほかの放浪オスとグループを結成する道もあるそうだ』

『そうなんだ』


 血縁関係の無いオスが群れる報告は、それほど珍しい話ではない。

 オスが子孫を残すためには、群れに君臨しなければならない。

 そのためには既存の群れのオス達を倒す必要がある。

 それを一頭で行うのはつらいので、オスの仲間は必要だ。

 そのため放浪オス達は、連合を組むようになったのだろう。


 そんな放浪オス達は、群れを乗っ取れていないので、優秀ではない。

 少なくとも、周辺で群れを持っているオスライオン達には劣る。

 知能はエムやイーと同レベル、下手をすると低い可能性もある。


『他所のオスと仲間を組んだ場合、俺の主導権を認めるかが問題だな』

『そもそも信頼できるの?』

『他所の群れで育った知らないオスは、あまり信頼できないな』


 最大の目的であるメスについては、俺は上手く分けられると思っている。

 それはライオンの場合、上手く子育てが出来る年増で経験豊富なメスのほうが、子孫を残し易いので人気があると聞いたからだ。

 ちなみに俺は、日本人男性に一般的な嗜好のほうだ。


 ――若い子のほうが、良い!


 すなわち、ピチピチギャルである。

 今世では、社会の圧力に屈さず、自分に正直なライオンとして生きたいと思う。


 俺と、ほかのオスライオンとは、メスの好みが競合しない。

 仲間に経験豊富なメスライオンを譲り、俺が若い子をもらえば、争いは無い。

 なお俺は『可愛い幼馴染み最強説』を信奉するので、リオは例外とする。

 朝起こしに来てくれたり、一緒に登校したり、最高ではなかろうか。

 今世では登校しないが、幼馴染み枠は捨てがたい。

 そのためには、連合を組むオスに対する主導権の獲得は必須だ。

 幼馴染み枠を確保するためには、俺はオスライオン達すら打倒する。

 もちろん、魔法込みでやるが。


 ギーアと組む場合、ギーアの姉であるリオを巡る争いは発生しない。

 さらにギーアが一般的なライオンの嗜好なら、俺とは競合しない。

 性成熟する頃、ギーアの性的嗜好は要確認だろう。

 もしくは今から、年増好きになるように、英才教育を施す手もある。

 名案が浮かんだ俺は、ビスタの姿を探した。


『ビスタ、どこに居たかな』

『あっちだけど?』

『ありがとう。ちょっと散歩してくるわ』


 リオと分かれた俺は、リオが前脚で差した方向に進み、ビスタに声を掛けた。


『エムイーが居なくなって、ギーアが寂しがっていたよ。舐めてあげて!』

『ふーん、別に良いけど?』

『優しく慰めてあげてね!』

『はいはい、分かったわよ』


 2歳年上のビスタは、軽い調子で引き受けた。

 生意気になってきたとはいえ、ギーアは幼児期だ。

 そして性成熟前のビスタは、まだ自分の子供を持てない。

 ビスタは、さぞかしギーアを可愛がってくれるだろう。

 そしてギーアも、ビスタに懐くはずだ。

 三つ子の魂百まで。

 今こそ、ギーアに英才教育を施し、『熟女好き』に育てる絶好の機会である。

 将来のライバルは、先に減らすのだ。


 ――クックック……ハッ、いかん。


 思わず笑みが浮かんだ俺は、湧き上がる感情を必死に堪えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の投稿作が、TOブックス様より刊行されました。
【転生陰陽師・賀茂一樹】
▼書籍 第7巻2025年12月15日(月)発売▼
書籍1巻 書籍2巻 書籍3巻 書籍4巻 書籍5巻 書籍6巻
▼漫画 第2巻 発売中▼
漫画1巻 漫画2巻
購入特典:妹編(共通)、式神編(電子書籍)、料理編(TOストア)
第7巻=『七歩蛇』 『猪笹王』 『蝦が池の大蝦』 巻末に付いています

コミカライズ、好評連載中!
漫画
アクリルスタンド発売!
アクスタ
ご購入、よろしくお願いします(*_ _))⁾⁾
1巻情報 2巻情報 3巻情報 4巻情報 5巻情報 6巻情報

前作も、よろしくお願いします!
1巻 書影2巻 書影3巻 書影4巻 書影
― 新着の感想 ―
[良い点] リオも会話が徐々に高度になっているけど、ギーアも熟女好きを刷り込まれると長々と年上の良さを語ってくれるようなるのか・・・・
[一言] なにを見せられてるってライオンの一生なのですがおもしろい!!!すごい! 次回も楽しみです
[良い点] ふむ。レオンなら長期政権も楽々行けそうですね。 となるとレオンにいかについて行くかで人生がイージーになるかハードになるかの分かれ目になるなぁ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ