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ライオン転生  作者: 赤野用介
第1巻 ライオン転生
17/62

17話 弟妹の予感

週間ハイファン2位、異世界転生2位、ありがとうございます!

 肉を食べ始めてから、1ヵ月半の時が流れた。

 生後4ヵ月の俺達は、身体の成長速度を緩めず、日々大きくなっている。


 ――まだ、幼獣だからなぁ。


 一般的な生後4ヵ月のライオンは、体重16キログラム前後で、中型犬サイズ。

 柴犬が体重10キログラムほどで、ゴールデン・レトリバーが体重32キログラムほどなので、その間くらいだろうか。


 C+という強いライオンに転生した俺は、積極的な食生活と、心肺持久力を高める運動により、平均よりも大きなライオンに育ちつつある。

 俺の比較対象は、又従兄弟のギーアだ。

 又従兄弟のギーアは肉が大好物で、大食漢になった。


「ガウッ、ガウッ」

『お前、良く食べるなぁ』


 ギーアは肉を食らい、そのために俺やリオを押し退けようとする。

 程々にしかミルクを飲まなかった頃のギーアなど、既に面影がない。

 ギーアはグングンと大きくなり、スタートダッシュで有利だったリオに並んだ。

 そんなギーアよりも大きな俺は、確実に平均よりも大きいはずだ。

 体重計の持ち合わせはないが、今は18キログラムほどではないだろうか。


「ガウッ、ガウッ、ガウッ」

『俺やリオ達から取るなよ。父……ではなく、兄のエムイーに挑め』


 父ライオンに挑めと言わなかったのは、リスクが大きすぎるからだ。

 父ライオンと喧嘩が始まったオスの子ライオンは、群れから追い出される。

 2歳のオスライオンの体重は、大人のメスライオンに劣る。

 その状態で独立しても、獲物を狩るのが大変だ。

 3歳ならメスに勝てるので、2歳の何ヵ月目で追い出されるかは重要だ。


『どうしてエムイー?』

『エムイーなら、喧嘩をしても追い出されない』


 生後4ヵ月と、2歳4ヵ月では、そもそも勝負にならない。

 体重では16キログラムくらいと130キログラムほどの差がある。

 幼児と大人のままごとにしかならないので、群れからは、微笑まれて終わりだ。


 もっともギーアも、独立間近の兄達には勝てないと分かっている。

 もちろんアンポンタンにも勝てない。

 リオに挑めば、お馬鹿なギーアを賢いリオより上位にしたくない俺が妨害する。

 ミーナに挑めば、可哀想なので俺とリオが介入する。

 するとギーアが挑む相手は、勝負が成立する俺となる。


『勝負!』

『甘いぞギーア』


 俺は挑んできたギーアを受け流して、すっ転がした。

 するとギーアは、土煙と共に、ゴロゴロと茂みを転がる。

 母ライオンは、俺達の争いを止めない。

 これは序列争いであり、将来のオスライオン同士の争いの練習でもあるからだ。


 大人になってからの喧嘩は、大怪我をするし、血も見ることになる。

 先に力比べをして上下を理解し、将来の練習をすることは、とても大切だ。

 だから俺は、毎回ギーアをきっちりと倒している。

 大人のライオン達は、俺とギーアのような争いは止めない。


『このっ!』

『払い腰』


 俺は柔道の技を使い、腰に乗せたギーアを、身体を使って投げ飛ばした。

 柔道の原理や物理学は、こちらの世界にも通用する。


「ガオオッ」


 転がったギーアは、体勢を立て直して、再び飛び掛かってきた。

 俺が優しく投げたことで、ダメージは皆無だったようだ。

 俺は飛び掛かってきたギーアの顔に、ライオンパンチを繰り出した。

 鼻をパンチされれば、流石にダメージは発生する。

 ライオンパンチを受けたギーアは、俺の前脚を噛もうとしてきた。


 ――噛み付きは、有りなんだな。


 ギーアの噛み付きを回避した俺は、逆にギーアの後ろ首を噛んだ。

 そして後ろ首を噛んだまま、前後左右に振り回した。


『痛たぁあぁ』


 痛いと言っているが、負けたとは言っていない。

 俺はギーアを噛んだまま、地面に押さえ込んだ。


『負け、負けっ!』


 降参されると、流石に試合は終了である。

 俺がポイッと離すと、ギーアはグルリと寝転がって、腹を見せた。

 殺し合いでなければ、明確に決着である。


 ――ナワバリを巡るオスの争いでも、降参は有効らしいな。


 負けたライオンが目を逸らして降参すると、殺されずに許されることがある。

 こういった幼い頃の練習で、勝ち負けを学ぶからかもしれない。

 兄弟や従兄弟の存在は、ライオンにとって重要だ。

 俺はピョンと飛び退いて、こちらを眺めている母ライオンの介入を避けた。


『他所のオスと戦う時は、腹を見せても駄目かもしれないから、気を付けろよ』

『……分かった』


 俺は膨れっ面のギーアに、ちゃんと指導しておいた。

 今のところギーアは、俺の独立時に連れて行くつもりだ。

 現在の競争相手になっているが、敵側のオスライオン1頭を抑えるくらいは期待したいので、ちゃんと強くしている。

 俺がギーアに負けてはいけないので、バランスは大切だが。


 ――身体、大きくし続けないとなぁ。


 戦いでは、体格差も重要だ。

 そのため俺は、空間収納で確保した肉も食べ、心肺持久力を高めるために走る。

 食料供給が安定しないライオンで、成長期に空間収納を用いた肉の定期摂食が叶うのは、大きなアドバンテージだ。

 それにスポーツ医学で成績が向上するのも、オリンピックで証明されている。


 そもそも俺の群れは、ハイエナとの争いが減ったので、食料獲得が有利だ。

 そこで育ったギーアに勝てるなら、ほかの同世代のライオンより強いはずだ。


 ――前世では、アフリカゾウを狩るライオンの群れもいたけどな。


 C+のライオンは、俺だけではない。

 魔法は有るが、俺が挑むオスライオンは、同数までにしたほうが良いだろう。

 何事も、油断大敵である。


 そんな地道な成長を続ける俺の生活に、最近1つの変化が訪れた。

 ハーレムに旅立っていたメスライオン2頭の腹が、膨れてきたのだ。


『弟と妹が生まれるの?』

『そうだよ』


 俺が尋ねると、俺達の世話が好きで一緒に居ることが多いポンが、肯定した。

 ライオンの妊娠期間は、100日から110日ほど。

 そして現在は妊娠50日ほどで、外から見ても分かるようになってきた。

 ライオンは、わずか1キログラムの体重で生まれる。4頭が同時に生まれても、合計で人間の赤子1人を少し上回るくらいだ。

 メスライオンの体重は人間の3倍ほどで、身体の負担は、人間よりも小さい。

 だが狩りでは影響するので、狩りの中心は、残る4頭のメスライオンに移った。


 ――あと2ヵ月で、弟と妹が生まれるのか。


 出産するメスライオンは、4週間から8週間ほど、群れから離れて過ごす。

 すると弟妹に会うのは、俺達の生後7ヵ月以降だろう。

 俺達への哺乳期間は過ぎるので、ミルクの取り合いにはならない。

 その辺りは、ちゃんと本能などで調整しているようだ。


 ――弟と妹が生まれるの、早くないか?


 誕生が半年差だと、独立時に弟達を連れて行くことも有り得る。

 群れのメスが多くなると、出ていく子ライオンのメスも増える。


 ライオンの子供は、生存率が2割から4割ともいわれる。

 だが俺の世代と同じだけ生き残るとしても、結構な増加である。

 俺の将来設計にも、いくらか修正が必要かもしれなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんかこの作品読んでると、妙にライオンだけでなくサバンナに住む生き物の生態に詳しくなりつつマサイ族SUGEEE!に詳しくなるw [一言] たしか国内最高齢の雄ライオンが25だったよな?と改…
[良い点] 寿命はどんな設定されたんだろう 真っ白になるまで生きてほしいですなー
[気になる点] >>野生下のオスの生存記録 少し前に調べていて見た記事ですが、アフリカ東部ケニアで野生では世界最高齢のライオンの1頭とみられていた19歳の「ルーンキト」 飢えて民家に侵入…「世界最高齢…
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