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ダンジョンってこうやって出来るんですね(吐血)9

 舞が他人事なのはまだ分かる、しかし今まさに狙われている波平まで何処吹く風とした顔をしているのは意外だったようで、当事者がそんな態度では外野が騒いでいるのも馬鹿らしくなるというもの。秘密を抱えた悪友のような振る舞いをする2人を見て新堂は毒気を抜かれて拳銃を下げていた。

「……いや悪い訳じゃないんだけど、そう淡々とされると調子狂うって。恨み言のひとつでも言ったらどうなんだ?」

「だってよ」

「そう言われるとこちらも困るというか……なるほど、夜巡さんがどうしてそういう態度なのかよく分かるよ」

 んなもん分からんでいいと新堂の顔が物語る。

 話が合うとは好意的になるもので、新堂の事など目に入らないというように舞は波平に話しかける。

「私の場合は深く知る前に接続切ってるからね。あっ、い号ダンジョンに妹の銘がいるから仲良くしてあげてよ」

「ちょっと待て。ふたりだけで納得されると困るんだが、ちゃんと説明してくれよ」

 はーいと返事をする波平の間を割くように新堂が言う。半ば叫びのように聞こえてしまうのは状況についていけていない証拠でもあった。

 対して舞はというと嫌な顔ひとつせず、むしろはてなと首を傾げていた。新種の生物を偶然発見してしまったかのようにあどけない顔をされて新堂のこめかみにシワが寄る。

「いいけど……何がわからないの?」

「全部だよ全部、一から十までわかんねぇっての」

「……私、課長の先生でもなんでもないんだけど」

 言いたくなる気持ちも分かるが、酷い言い草である。今拳銃を握っていたら標的が舞に変わるくらいには。

 ただ新堂は軽くため息をついてすぐに気持ちを落ち着かせていた。こんなことでいちいち目くじらを立てていては彼女の相手など出来ないからだ。諦めたとも言うが。

「上司命令だ、全部話せ」

 こういう時は少しくらい理不尽でも有無を言わさぬほうがいい、学んだ結果が存分に発揮され、不満げに唇を尖らせる舞がそれでも口を開こうとしたとき、その言葉を遮るものがいた。

「まだ僕のほうが人間の感性していると思うからこっちで説明するよ。今後の身の振り方についても伝えておかなければだしね」

 波平から暗に、どころかド直球に人間の感性をしていないと揶揄されていることに気付かず、舞は楽できたとほほ笑む。

 そんな彼女に一同落胆の表情をするが、舞の行動ひとつひとつを注意していては日が暮れる、無視して話を進めるしかなかった。

 波平は両手を広げ、

「新堂課長、そもそもダンジョンって何だと思いますか?」

「……哲学的な話か?」

「わからない話を全部哲学でまとめようとするのは感心しませんよ」

 言動を注意される。しかしこの場合は質問も悪かった。

 ダンジョンとは何か、物質の構成の話をしているのかその目的なのか、言葉の取りようによってはどうとでも取れる質問に波平の想定する答えなど出せるわけがない。新堂はやりきれない気持ちを顔に出して地面を蹴る真似をするが、いかにも子供っぽいところがまた彼らしい。考えることも嫌で適当な答えを出した本人のせいでもあるのだが。

 その仕草も見慣れたものだと波平は笑みを浮かべながら、大きく息を吸って語りだす。

「ダンジョンとは地球が進化を求めて出した答え、その過程、化学反応なんですよ」

「……さらにわからなくなってきたんだが?」

「今から約5千万年前、地球は覇者を求めていました。植物の時代、昆虫の時代、恐竜の時代と進化は緩やかに、そして結果だけ見れば覇者として生き残った者はいない。どんな環境にも耐えうる生物が繁殖し更なる進化をするように、地球は考えたのです」

 すぐには理解できないことなど織り込み済みというように、余計な茶々を入れ出した新堂を無視して話す。

「どうすればいいか、2千万年ほど考え出した答えがダンジョンなのです。カンブリア紀を超える雑多な土台を生み出し、互いに交じり合い洗練されていく、その先に覇者たる生物を生み出すのだと」

 気の遠くなるようなスパンの長い話、与太話にしても荒唐無稽だと笑われるだろう。しかし波平はそれをまじめな顔をして語る。

 一呼吸置く彼は誘うような目つきで新堂を見つめていた。そんな期待をされても根拠のない大法螺に頭が受け入れることを拒否していて理解が進まない、それでも顔を苦渋に染めて何とか絞りだす。

「あー……ちょっと待て、そしたらダンジョンは大昔からあったってのか?」

「いえ、ダンジョンができたのは10年前、それまでは地球の準備期間です。かなり急いでもそれだけの時間がかかるんですよ、惑星規模だと。そしてひと仕事を終えた地球は待っているのです、だいたい2万年ほどですかね、変化の結果を見てそれでから次の変化を起こす予定となっています」

「……つまり、どういうことだ?」

「先の長い話なんて気にしてもしょうがないってことです」

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