予知した未来をちょこっと変えられる伯爵令嬢、王太子に気に入られる〜婚約者がいる貴方からの求婚はお断りします!〜
今回はとにかく、勢いに任せて書きました!サブタイトルは「浮気、ダメ!ゼッタイ!」です!
人ならざる能力を持って生まれる貴族が何人か住んでいる国・マジティリア。
この国の由緒正しきマルセム伯爵家のご令嬢である私、ヴィヴィア・マルセムには、生まれながらにして二つの能力を持っていました。
一つは、予知能力がある事。ふと頭に流れてくる映像のようなもので、ほんの数十秒しか見る事が出来ません。
そして二つ目は、一日一つだけ未来を変えられる能力がある事。日記帳やメモ用紙に文章を書く事で、未来を変える事が出来るというものです。
実は、この二つの能力のおかげで、昔起きたであろう両親の馬車事故を、未然に防いだ事があるのです!えっへん!
けれど、未来を変えるのは一日たった一つだけなので、それ以外の出来事は変える事が出来ません。
しかもこの能力は、この国にとっては禁忌の類なので、何かあったら隠れて使用しますし、毎日使う事もしません。
なぜなら、悪用されてしまうのを防ぐためなのです!
…ですが、この国の王立学園に入学した時、私は非常に嫌な光景を見てしまったのです!
それは、同じ学園に通う同い年の第二王子・ダニエル殿下が、婚約者を放っておいて、他の女子生徒と遊びまくっているという光景なのです!
正直に言って、カチンと来ました!
王子ともあろうものが、王族の仕事も生徒会の業務も勉強もサボって、別の女子生徒とイチャイチャしているだなんて!
彼の婚約者で私の推しである、才色兼備なシュプリーム公爵令嬢のヘレン様を除け者にするとは、戴けないです!
しかも前に予知能力で未来を見ていたら、ダニエル殿下がアシュリ男爵令嬢を侍らせて、ヘレン様に婚約破棄を突きつける光景が見えまして!もう『ふざっけんな!』って話です!
あああああ!今日もお昼休みに教室の机の上で物思いに耽ってたら、婚約破棄されて泣いているヘレン様が脳内に流れてきて、うぎゃああああああ!!
「…ヴィア…ヴィヴィア嬢…頭抱えてどうしたんだい?」
「うぅ…ヘレン様が…ヘレン様がぁ…」
「ん?ヘレン嬢がどうしたんだい?王太子である俺に話しておくれよ」
「そ、そんなの無理ですぅ…。だって…だってぇ……。へ?」
ふと、聞き覚えがある声が頭上から聞こえてきて、私は顔を上げました。
するとそこには、黒い髪と碧い目を持つ素晴らしい美貌をお持ちの、ヌース王太子殿下がいらっしゃいました。
…うわぁ…また来たんですね、この人。
他に同い年の婚約者がいるのに、毎日一つ下の学年である私のいる所にノコノコやってきて…この人も非常に癇に障ります!
私は浮気なんてしたくないのに、私を見る眼差しがすんごく熱くて、かえって塵になってしまいますぅ!
つい口元を下げて嫌そうな顔をすると、ヌース王太子殿下は困ったような笑いに変わって、「ははっ」と声を出しました。
「もう、本当に嫌な顔も可愛いなぁ…。そろそろ俺の側室になる気はあるかい?」
「ないですし、嫌です!貴方様が最初に告白してきたその日に私、貴方の婚約者であるキンドル公爵家のフルリア様に土下座したの、覚えてないんですか!?フルリア様は美しくてとっても優しいから、気にしてないって言って下さったけれど、本当に毎日私の所に来ないで下さい!」
「え〜?でも、フルリアとは政略結婚で、お互いに愛はないよ?むしろ、俺が一番愛しているのは、ヴィヴィアだからねっ!」
「呼び捨てで呼ばないで下さい!反抗するのは不敬だと分かっていてもやめて下さい!私を呼び捨てにしていいのは、家族と未来の旦那様だけです!」
「ん〜…じゃあ、君の未来の旦那様になるには、どうすればいいんだい?」
「…王太子の地位を捨てて、私と一緒に辺境の地でのんびり暮らせるんだったら…考えます」
「あー…それは無理だね。うん…」
王太子殿下は、私のこの発言に冷や汗をかきながら、自分の頭を掻きます。
それを見て、私は顎を手の上に置いて、そっぽを向きました。
実は、ヌース王太子殿下は『人の能力を見抜く力』を持っているので、私の持っている能力は全てお見通しなのです。
多分それも含めて、私を側室に入れたいとお考えなのでしょうが、そんなの嫌なんですよ!
この能力を王族に悪用されたくないから、突っぱねているのに、彼は気付いていないんでしょうか?
…そもそも、私は将来独り身で過ごす気満々なんですよね…。
でも…こんな…こんなっ!『王太子の地位を捨ててきたから、結婚しよう!』って私に求婚する王太子殿下が、今さっき『予知』で見れただなんてっ…!
ぜったいに、近くにまだ居座っている王太子殿下に伝えたりしないんですから!!
こうして私は予鈴が鳴るまで、不敬だと分かっていても、ヌース王太子殿下を無視し続けたのでした。
※※※
王太子殿下との『予知』を見てしまってから数日後。
私は自分の能力をヘレン様のために使おうと、早速日記帳を開いて文章を書きました。
ちなみに明日は、ダニエル殿下とアシュリさんが中庭でキスをしながらイチャイチャする光景が予知で分かっています。
なので、私はこの未来に対して『ダニエル殿下はアシュリさんの腰を抱きながら、手に持った隣国の言語であるフーディリア語の単語帳を音読し始めました』と書きました。
すると、なんという事でしょう!
次の日は日記帳通りに、ダニエル殿下がフーディリア語の単語帳を使って単語を音読しながら、アシュリさんとイチャイチャし始めたのです!
これは味を占めました!しかもダニエル殿下はどうした事か、途中でアシュリさんを放って、単語帳に夢中になっています!
ああ。ここまでは予想出来なかったですけど、本当に…!
「おっ!ダニエルが勉強してる!女子生徒を無視してるのはアレだけど、やるねぇ…」
「ええ、ええ!素晴らしいですね、ダニエル殿下!…って、ふぁああああああ!?」
中庭の近くの茂みに隠れてダニエル殿下たちを見ていたのに、いつの間にか近くにヌース王太子殿下とフルリア様が私の近くにやってきて、つい小声で叫びました。
「ふふっ。本当にヴィヴィアさんは面白いですわね。あと、私とは身分関係なく気軽に話しかけていいわよ?側室になって下さるのよね?」
「なりません!なりませんから、フルリア様!私は辺境の地で、のんびり暮らしたいんです!あと、私の能力はもう王太子殿下から聞きましたよね!?」
「ええ。でも側室になれば、王族が貴女を守れるから、いいんじゃないかと私は思うわよ?もちろん私も、貴女をちゃんと守るわ」
「結構です、フルリア様!殆ど誰もいない場所であれば、私の能力を悪事に使う人は来ないはずですし!王宮は陰謀渦巻いていて怖いんですって!」
「んもう。そんな事、絶対ないと思うわよ。ねぇ、ヌース様?」
「当然だ!世界一愛しいヴィヴィアを守るのは、俺の責任だからねっ!」
「……」
…もうダメですね、この王太子殿下。婚約者の前で『浮気してます!ドヤッ!』って言ってるようなものですよ、これ…。
フルリア様も「もう、ご冗談を」って言ってるけど、目が笑ってないです!
そもそも、私もフルリア様が王太子殿下を好きなのは知ってますし…。
とにかくです!この場から離れようと、私は一人でゆっくりと低姿勢を心がけながら、中庭から抜け出そうとしました。
けれど、そんな事をこのアホ王太子殿下が許す訳なく、いきなり彼に左腕を掴まれました。
「どこ行くんだい?愛しのヴィヴィア♡」
「ひいいいぃ!!」
怖い怖い怖い!ヌース王太子殿下の笑顔の圧と、フルリア様の恐ろしい真顔が突き刺さりますううう!!
…結局、私たちはその場で学校の予鈴が鳴るまで、中庭でダニエル殿下たちの様子を眺めていたのでした…。
もういい加減、王太子殿下から解放されたいですうううぅぅ!うわああああん!!
※※※
それから、私はより積極的に自分の能力を使い、ダニエル殿下をちゃんとした王子にするべく奮闘しました。
例えば、頑張って朝の挨拶をしたヘレン様にダニエル殿下が笑顔で「おはよう」と挨拶するようにしたり、他の男子生徒とヘレン様が話しているのを見てダニエル殿下の中にモヤモヤする気持ちを植え付けたり…もうとにかく色々な事をしました。
その結果、素晴らしい作用が働いて、ダニエル殿下は遊んでいた全ての女子生徒と縁を切ったんだそうです!
…ただ一人、アシュリさんだけはダニエル殿下に振られてもめげずにアタックしているようですが…。
それでもですよ。ダニエル殿下は最近、ヘレン様といる時間が結構増えまして!
まぁ、まだ彼はぶっきらぼうで、ヘレン様を突き放してばかりではありますが、どうやらヘレン様も心を入れ替えた(?)ダニエル殿下にちょっと惚れ直しているという情報も入りました!
いやぁ、これでダニエル殿下とヘレン様がくっつくのも時間の問題となりました!
…ええ。最大の問題は、まだ足元に転がっているんですけどね…。
そう!ヌース王太子殿下が私を好きすぎて、1週間後にある舞踏会へのエスコートを申し出てしまった問題がありまして!
もう勘弁して下さいよ!私はただの一介の伯爵令嬢に過ぎません!
ああ…本当に泣きたくなってきました…。しかも、休日である今日の夕方頃に、私の元に王太子殿下からドレスとアクセサリーが届いたんですよ!?しかも王太子殿下の目の色と同じ碧の色って!!
ああ、絶対に着たくないですね…。エスコートもお断りしたいですし…。
ついさっき届いた王太子殿下からの贈り物に、白目を向いて呆然としていたら、ふと頭の中に舞踏会の『予知』が流れて来ました。
それは、赤いドレスを身に纏ったフルリア様が泣いている姿と、王太子殿下と踊っている私の姿が映っていました。
…ヤバいです…。この未来は阻止しなくてはっ!!このままでは王太子殿下のせいでフルリア様が悲しい思いをさせてしまいます!!
私は急いで家令に馬車を出させて、王太子殿下からの贈り物を持って、すぐにキンドル公爵家に向かいました。
そして、キンドル公爵家の門を叩いて屋敷に入れさせて頂き、応接間にやってきたフルリア様に2度目の土下座をしました。
「フルリア様!そしてキンドル公爵様!この度は、申し訳ありませんでした!!」
「えっ!?いや、えっと…顔を上げてくれるかな?確か…君ってフルリアと仲がいいヴィヴィア嬢で合っているかい?」
「はい、公爵様!そして、何故か王太子殿下に気に入られてしまって、側室打診をされております!そんな私が、王太子殿下にこんな贈り物を貰ってしまい、申し訳ありません!!本当は王太子殿下を張り倒したい気持ちでいっぱいなんですが、一介の伯爵令嬢がそんな事も出来ず!…なので、この贈り物はフルリア様にお送りします!」
「えっえっ!?これって、ヌース様の瞳の色と同じドレスとアクセサリー…?な、なんで…?私には一度も贈られた事ないのに…」
「あああああああ!もう、何やってるんですかこのクソ王太子いいいいい!!こんなに超美しくて優しいフルリア様に贈り物をせず、何やってるんですかあああああああああ!!」
訳が分からず泣き叫んでいる私に、フルリア様は慌てて私を慰めようと背中を撫でてくれました。
『…やっぱり、もういい加減王太子殿下とは離れよう…』とそう思わざるを得なくなった今日の出来事。
こうなったら物理的に距離を置こうと思った私は、明日にでも辺境の地へと向かう事を決意したのでした。
※※※
マジティリアの辺境にあるマルセム伯爵家の別荘に住んで、ちょうど1週間が経ちました。
私はそこで、一人の侍女と一人の料理人、そして一人の庭師と一緒に住んでいます。
ちなみに、王立学園には行っておりません。通ってたら、王太子殿下に出会ってしまいますので。
あと、日記帳も一応持ってきましたが、まだ何も書き込んでいませんし、予知も全く見ていません。
けれども、なぜかどこか寂しいと思っている私がいるんです。
いつもは、王太子殿下が私の元に来ては私をたくさん口説きまくって、煩かったはずでしたのに…。
なぜか、心にぽっかり穴が空いたような気がするんです。
…本当は、ヌース王太子殿下からの贈り物は、すごく嬉しかったんです。
沢山考えて選んだんだろうって、心がこもってるなって思いまして…。
けれど、王太子殿下がフルリア様に贈り物を贈った事がないのも嫌だったんです。
…もし私にこんな禁忌の能力がなければ、きっと側室打診も喜んだかもしれません。
けれど、一度外の世界にかまけて平民の女性と関係を持っていた昔の父上と、婚約者を蔑ろにして私に夢中になっている王太子殿下を、つい重ねてしまって…。
「…もうそろそろ、ベッドから降りて日の光を浴びないとだわ…」
私はゆっくりとベッドから離れて、靴を履き、寝巻きのまま外の庭へと足を運びました。
辺境の地はとても空気が美味しいので、大きく深呼吸をして伸びをします。
すると、遠くから馬が走る音がして、私は音のする方を向きました。
なんとそこには、馬に乗ったヌース王太子殿下がいたのでした。
「…ヴィヴィア…!ああ、ヴィヴィアがいるっ!ヴィヴィアー!!」
「ぎゃああああああああ!!」
あろう事か、王太子殿下は馬から降りて、私のいる所まで全速で走ってきました。
私は急いで別荘の中に入り、庭へと通じる窓ガラスを閉めます。
けれど、王太子殿下はその窓ガラスをドンドンと叩いて、「ヴィヴィア!聞いてくれ!」と叫び始めました。
「ヴィヴィア!俺はもう心を決めたんだ!俺と結婚して夫婦になってくれ!」
「嫌です!貴方にはフルリア様がいるでしょう!?婚約者がいる貴方の求婚はお断りです!」
「違うんだ、ヴィヴィア!もうフルリアとは婚約解消したし、王太子の地位を捨ててきたから、結婚しよう!」
「……え?」
あれ?今、ヌース王太子殿下は何て言いました?
確か『王太子の地位を捨ててきたから、結婚しよう!』って言いましたよね?
結構前に見たであろう予知通りになってますよね!?
彼の言った言葉につい驚いて、私は窓ガラス越しに王太子殿下の顔を見ます。
すると、彼は「やっとこっち向いてくれた…」と言いながら、目を潤ませ始めました。
「ヴィヴィア、本当に勝手な俺でごめん…。俺、実はヴィヴィアを見た時から一目惚れしてて、本当にすっごく好きだったんだ。けれど、当時の俺は王太子だったし、伯爵令嬢である君を王妃にすると反発を買うっていうのも理解していたから、君にずっと側室打診していたんだ。…けれど君は本当に嫌そうで、でも俺の好き勝手に動いちゃったから、多分今はもっと俺を嫌いになったと思う。でも諦めたくなくて、1週間前に君にドレスとアクセサリーを贈って…結局そのドレスとアクセサリーはフルリアが着ていて驚いた。…絶望したよ。こんなにも好かれてないとは…思わなかったから…」
「…王太子殿下…」
窓ガラス越しに、王太子殿下が涙を流していて、私は少し心を動かされそうになりました。
けれど、それとこれとは話が全く違います。
私は思いっきり窓ガラスを開けて、彼の頭に思いっきりチョップをお見舞いしました。
「ぐおおおおおおお!?いったああああああ!!」
「ふん。例え私が好きでも、浮気と呼べるような行動を公にした貴方に好かれる筋合いはありません!こういう時は思いっきり告白して思いっきり振られて、例え政略結婚であってもフルリア様を大事にすべきではないですか!?というか、フルリア様はどうしたんです!?王太子の地位を捨てたと言いましたが、次の王太子は誰になったんです!?」
「くううううううぅぅぅ…。ふ、普通泣いている人に、思いっきりチョップする方が間違ってると思うんだけど!?…言っておくけど、フルリアは俺と婚約解消した際に、すぐにフーディリアの第二王子と婚約したからね!舞踏会にこっそりやってきた彼が『フルリアを絶対大切にする』って俺に言ってきて、フルリアも納得していたし、今日フルリアはフーディリアに旅立ったよ。そして、王太子についてはダニエルがなる事になったんだ。なんとダニエルは今までより賢くなったうえに、ヘレン嬢を本気で好きになったらしくて、舞踏会では結構イチャイチャしてたんだよ!?しかも、ダニエルはアシュリ嬢を嫌悪するようにもなってさ!すごいだろ!?」
「…う、うそっ!」
お、思いっきり予知した未来が変わってますよおおおおおおお!?な、なんでこうなりました!?
私は全く理解が追いつかず、自分の頭を両手で押さえます。
それを見たヌース王太子殿下、いや元王太子殿下は、ゆっくりと立ち上がって私を正面から見据えました。
「そういや、言ってなかった事がまだあって。ヴィヴィア、実は君には三つ目の能力をもう既に有しているんだ」
「え…?み、三つ目の能力…?」
「そう。一言では言えないけど、君が直接関わる予知は君の行動次第でガラリと変えられる。そんな力だ。…何か覚えがあるかい?」
「お、覚え…そう言えば…」
私は昔、平民の女性と密会する父上の予知を見て、朝食を食べ終えた父上にギャン泣きして抱きつき、すごい勢いで彼の顔を殴った事がありました。
結局その顔で女性に会った父上は、ものすごい勢いで心がズタズタになるまで振られてしまったそうで、この日は『もう二度と浮気しない』と言って母上に土下座したんでしたよね。
…確かに私の行動で未来が変わってますね。全然自覚ありませんでしたけど。
しかも今回の舞踏会の件で、元王太子殿下から貰ったドレスをフルリア様に送って辺境の地に来た事で、『赤いドレスを身に纏ったフルリア様が泣いている姿と、王太子殿下と踊っている私の姿』という予知がなくなりました。
…日記帳に、この予知を変える文章を書いていなかったというのに…。
とうとう、私は目を大きく見開きながら、その場に膝をついて項垂れました。
その後を追うように、元王太子殿下はその場にしゃがみ込んで、私の頭を優しく撫でました。
「ヴィヴィア。やっぱり、三つ目の能力は受け入れられそうにないかい?」
「…いや。ただただ驚いて、自分の行動次第で予知が大きく変わるとは思ってなかったですし…」
「うんうん。あ、そう言えば、『王太子の地位を降りて、一緒に辺境の地でのんびり暮らせるんだったら、未来の旦那様として俺の事を考える』ってヴィヴィアは言ってたよね?言っておくけど、俺はもう王太子じゃないよ。王籍も抜けてきたし、マルセム伯爵家の婿養子として君の元に嫁ぐ事も出来る。…俺はまだ服の着替えぐらいしか自分で出来ないけど、それでもここで君と暮らしたいんだ。…だから、俺のこと考えてくれる?」
「っ!」
せっかく王太子として今まで何不自由ない生活を送れていたというのに、それを捨ててまで私と暮らしたいだなんて…。
なんて、真っ直ぐで一途な人なんでしょう。
こ、こんなの…肯定以外の選択肢が全くないじゃないですか!
視界が段々とぼやけていき、私の両目からポロポロと涙がこぼれ落ちていきます。
そのままゆっくりと首を縦に振ると、ヌース元王太子殿下、いえヌース様はとても嬉しそうに笑って、座ったまま私を抱きしめました。
「神に誓うよ、ヴィヴィア。もう二度と浮気じみた事はしないって。君だけを死ぬまで愛して、幸せにするって。君の能力も誰にも言わないし、もし君が危ない目に遭いそうになっても全力で守るから」
「…はいっ!ヌース様っ!…ヒッグ…で、でもっ!煩いぐらい口説いて貰わないとっ…ゆ、許しませんからねっ!死ぬまでですよっ!」
「ふははっ!うん。絶対絶対死ぬまで君をいっぱい口説くから。愛の言葉を沢山贈るから。…愛してるよ、ヴィヴィア」
「はいっ!ヌース、様っ!」
こうして、私とヌース様は強く抱きしめあいながら、辺境の地で結ばれたのでした。
※※※
その後、私たちはすぐに婚約を結んでから、王都に戻って学園生活を送りつつ、半年後に結婚。
ヌース様は国王陛下の計らいでハワディ伯爵となり、マルセム伯爵家の別荘がある辺境の地を、後にハワディ伯爵領として統治する事になりました。
この結果は、ヌース様と結ばれた時に予知していたものと同じものです。
また、結婚初夜に見た予知によると、私とヌース様の間には三人の子供が出来るのだそうです。
でも、もっと子供は欲しいので、きっと私の行動で四人目も出来るかもしれませんね。
…けれども所詮、予知は予知でしかありませんし、未来は誰にも分かりません。
だから、これからもこの能力と共に、ヌース様と子供たちと幸せになろうと思います!
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!
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