僕
1話での誹謗中傷の話は事件ではないですが私が昔実際にあった物をモデルにしました。
ミステリー要素を上手く伝えられたら良いなと思っています。
どういうことなのか?
理解出来ない状況で僕は救急車を呼んでいる
「病気ですか?事故ですか?」
電話の向こうの返答に何をどう説明すればいいのか
「すいません!よく解らないんですけど彼女がブヨブヨになっていってます」
これが一番素直な伝え方だった
付き合って間もない彼女が初めて家に来た。
料理が得意な僕は彼女が好きだと言うイタリアンを作っていた。
家に呼ぶ口実だったが家にも来るし、得意な料理で胃袋まで掴んでやれと気合いが入っていた。
彼女は雑誌記者を目指す大学生
あらゆるジャンルを観ては細かく色々な視点で物を言う
その洞察力で見つけられて僕は彼女から告白された。
何でも僕の行動力が気に入ったらしい
僕は顔がタイプだったので告白を受け入れた。
そんな彼女が料理をしている間「仕事していい?」
と言うので僕はOKとソファを片付けて彼女をお姫様を迎え入れるように座らす。
キッチンから覗くと彼女はイヤホンしながらスマホをいじっていた。
真剣な顔もかわいい
僕はいつも以上に盛付けに拘りテーブルへと料理を出す
イヤホンで気付いていないようだ
出来たよと肩をたたく
ブニョ
なんだろう腐った柿みたいな感触がした
彼女の身体が痙攣をしながらみずみずしいミイラになって行く
口をパクパクさせながら、頬はコケて目が飛び出しそうなくらい剥き出して青くなる
身体が2まわり位小さくなった。
皮膚が余ったかのようにブヨブヨになっている。
救急車が着くが部屋に入るなり救急隊の人も腰を抜かしていた
数分後警察も来た
まるで殺人事件のようにkeepoutテープが張られ
鑑識が来る、僕は警察官に現状を話した後に警察署へと連行される
マンションの前はパトライトに引き寄せられた群衆がスマホを僕に向けている
一昔前は人の視線が怖かった
自意識過剰と言われればそれまでだろう
別に何も悪いことはしてないが観られてる感じが嫌だった
特に狭い空間で目でも合おう物なら、悪く思われた気がしていた
今はスマホのレンズに同じものを感じる
「こっち向いて」「何したの?」「殺し?」「何でもいいから喋れよ」
よく解らない言葉が僕に飛んで来る
先に救急車に乗った彼女を観て推測してるのか?
僕は何もしてないし
大好きな彼女があんなになって正直ショックで落ち込んでいるのに容赦なく"言葉"が僕を殴る
僕の前にスマホを持った若者がバカにしたような笑い顔で現れた
警察が押し退けるのを避けながら
「殺したの?ストーカー?」と楽しげに撮影していた
"僕はどうしたらいい?"
何も考えられないままパトカーに乗って警察署へと向かった。
-取調室-
目の前には怖い顔した刑事さんが座り、隣には若い刑事さんが立っている
部屋の角には制服警官が僕の話をパソコンに打ち込んでいた。
僕は経緯を話した
高ぶっているのか涙が止まらず呼吸も乱れていた。
怖い顔の刑事さんが優しい目をしたのが印象的だった
僕の肩をポンポンと慰めるようにたたく
最近似たような事件が多発しているそうだ
「え?」
驚きもありシャックリみたいに返事をした
解剖してみないと解らないが多分同じだろうと言う
若い刑事さんが教えてくれるには
この2ヶ月で同様のケースが日本中で数十件起きていて
日に日に増えているようだ
原因は不明 外傷は無し 被害者の共通点も今のところは無い
共通しているのは
身体中の血液が一滴も残っていない
余りにも謎すぎて公にも出来ない
事件か事故、あるいはウイルス、細菌テロかも解らない
捜査本部すら立ち上げられない状況だそうだ
なので僕は本当に事情聴取だけで呼ばれた
疑いなどは無いそうだ。
鑑識がまだ部屋に居るので僕は帰れない
若い刑事さんが仮眠室へ案内してくれた
「自腹だけど食事はどうする」
と聞かれたが食欲が失せたので断った
「何でもいいので何か解ったら教えてください」
僕は涙声で言うと若い刑事さんは優しく頷いてくれた
僕は短い期間だったが彼女との想い出が頭に巡り
出逢い、初デート、何気ない日常を思い出しては嗚咽しながら泣いていた。
朝に近い夜中に怖い顔の刑事さんと若い刑事さんが僕の所に来た。
解剖結果は言った通り血液が一滴も残っていない
外傷が無いので事件性が無いとしか言えないと伝えられた。
「また、何か解ったら教えて」と怖い顔の刑事さんが言う
僕も「何か解ったら教えてください」と答えた
朝日が目をつつく
僕は朝日に負けた痛い目をこすって歩いて家まで帰った。
keepoutテープはもう無い
彼女の所持品は後日親御さんへ渡されると言っていたので彼女を偲ぶ物は何も無かった。
なんとも言えない虚無感にのまれて
ベッドにそのまま倒れる
いつ寝たのかは解らないが電話の着信音で目が覚める
大学の友人からだ
重い口調で出ると少し興奮気味で
「お前何したんだよ!ネットで晒されてるぞ」
訳が解らないので事情を聴いたが友人も憶測だらけでよく解らないと色んなURLを送ってくれた。
LINEの着信バイブ音が鳴り続く
僕は暫く無視してコーヒーを飲みながら鳴りやむのを待った
「すげぇな」
張られたURLの多さに驚いた
開いて観てみると僕は殺人犯やストーカー、サイコパスとまで書かれている
全てに"?"が着いている
なんなんだろコイツら
ご丁寧に僕の中学や高校のアルバムまで載せられ実名まで出ている
更には昨日の撮影したやつのコメント欄には会ったことも無いであろう人達から僕を否定するコメントがダムの放水の様にドンドン噴き出していた。
起きた事に対してのコメントに正解は1つも無い
容姿に対して言われるのはなんなんだろ?
目付きが悪い、人殺しそう、既に何人も殺してる?
生理的に無理、服がダサい
本当に同級生なのか?僕の過去を勝手に捏造している
"僕は何もしてないのに"
観ていたら肩が重くなった、耳の奥でゴンゴンゴンとノックする音がする
何処にぶつけていいのか解らない苛立ちが自分へ戻ってきた時 僕の胸は誰かに握られたような気持ちの悪い物になった。
人間ってなんなんだろ?
起きてもいない不確かなものに憶測だけで一方的に物を言う
まるで正論の様に
暫くしてほとぼりが覚めたらそれでいいのか?
僕はきっと今回の事を忘れないだろう
僕はスマホの電源を切ってもう一度寝る事にした
次の目覚ましは玄関チャイムだった
1話を読んでいただきありがとうございました。
最近小説に評価が有ることを知りました
作品として向き合いたいと思いますので
良かったら感想、評価お願いいたします。