994.我が物顔
「えー、では会議を始めます」
福島副社長改め社長代理に許可を貰った俺たちは、阿久井田アイドル事務所の会議室に全員を集めて秘密結社関連の話合いを始めることにした。
ここの人身売買の売り払い先に悪の組織がある。
それがどうやらクモリエルではないか、という話になったので、正義の味方同士で連絡を取り合って、カイセイジャーに連絡を取ってみた。
そして集まったのは、俺、散紅さん、案内人君、なのさん、勇者ブレイド、りんりんさん、レイレイさん、マイネさん、格ゲー少女、キマリスさん、キカンダーさん、グレートマンさん、ジェイク、プリピュアの五人、カイセイジャーの五人である。
社長とマネージャー君はレムさんと共にお帰りいただいた。レムさんもう飽きて来てたからここに居ても悪戯してくるだけだしね。
ハナコさんたちはオガムさんたちと共にアイドル業に向かっているので今はテレビ局である。
あっちは祝さんが仕切ってるから大丈夫だろ。
できれば俺もそちらでハナコさんの勇姿を応援したかった。
「さて。今回阿久井田の野望は皆さんのおかげで潰えました」
基本散紅さんの考え通りだったかと思うんだけど。
俺たちの暴れがなかったくらいかな。
散紅さんとしては今回の結末が理想的。その途中で阿久井田が怪人化したり、雇っていた用心棒的な奴が現れた場合、俺たち実働部隊が駆除を開始する、という手筈だったらしい。
マイネさんにとっては悲しいことに、阿久井田はただの一般的な悪人でしかなく、闇組織に売り払っていただけで闇組織の人員ではなかったということだ。
「ところで散紅さん。社長さんのパワハラ音声、アレどーする?」
「別にどうもしないわ。社長さんが居なくともあの事務所なら私が回せるし」
あ、これアイドル業やりながら事務所も経営するつもりだ。
あの事務所乗っ取る予定だな散紅さん。
まぁアイドルが揃って来てるからかなり人気の事務所になりそうだしね。
金の生る木だからできれば自分で牛耳りたいんだろう。
そうなると、社長さん、邪魔でしかないしね。
今回のマネージャー君のしでかしはむしろ散紅さんに追い風だったかもしれない。
その後、辞めることになった社長さんに手を差し伸べて下働きとして雇ったりするかもだなぁ。
散紅さんならそういうことしそう。
そして四つん這いにした社長の背中に乗って高笑いとかしちゃうんだ。
「今回は裏方の仕事が多くて大変でした」
「ええ、案内人さんが居てくださったおかげでかなりスムーズに進みました。弁護士さんの手配までお願いして申し訳なかったわ」
「いやー、なぜか前に一度知り合う切っ掛けがあったもので、まさかゲーム世界で弁護士さんに依頼することになるとは思わなかったよ」
「普通に生きてたら弁護士の世話になることがまずないからなぁ」
「え、そうなの? 私結構利用するけど……」
マイネさんそんな頻繁に弁護士さん使ってるの? まさか現実世界でクレーマーとかだったりしない?
なんか変な罪でっち上げて一般人相手に詐欺とかしちゃってない?
あ、アレか! 炎上職人か! なんか呟いて炎上させて、罵声浴びせて来たネットのクレーマーに弁護士通じて慰謝料請求して金儲けしてるタイプか!
「あんたと一緒にしないでくれる!? 普通に依頼することが多いのよ。なんか私って騙しやすそうに見えるらしくってね」
なるほど、実際弁護士頼んでる時点で一回騙されてるのは確かっぽい。
喧嘩っ早いし騙されやすいし、マイネさんいいとこ一つもないな。
「そう言えば、従兄妹も一度弁護士に依頼してましたね。確か畑がイノシシにやられたから保証できるのか、みたいなこと尋ねてた気がします」
「普通に泣き寝入りじゃねぇの?」
「その後鳥獣捕獲許可証だったかなんだったかの資格取ってましたね。いろいろあるらしくて罠にしたとかなんとか?」
未知なるモノさん許可証持ってんのか?
「そんなことはどうでもいいわ。それよりこの先クモリエルだっけ、そこがどう出るか、クモリエルについてどういう対応をするかを話しましょう」
散紅さんが俺たちの話題を一蹴する。
そこからはカイセイジャーを交えた正義の味方たちによる本格的会議が始まった。
乗り込むべきだって主張と、刺激するのはやめるべきって主張が真っ向対立しているらしい。
マイネさん、乗り込むのは良いんだけど本拠地分かってる?
まぁあの地図使えば分かるんだけどさ。
俺としては向こうがどう出るか見たい気分だね。
イベント目白押しで七不思議最後の大学もクリア出来てないんだ。
今日の夜こそはと思ってるんだけどさ。
まさか今から乗り込むとか言わないよな。俺は断固拒否するぞ。
今日こそ、本気で、大学七不思議に行くんだいっ!
フラグじゃない、フラグじゃないからなぁ!!




