表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

993/1103

989.汚仕事

「いやー、ようやく許可降りて良かったですよオガムさん。あ、こっちです」


 バンに乗せられたフードを被った女性と、件のマネージャーが撮影現場で降りる。

 俺たちはとある情報をもとに先回りして撮影開始、証拠映像をしっかりと残すことに従事することになっている。

 荒事があったら割り入る予定だけど、マイネさん、暴走しちゃだめだからな。


「えーっと、この辺りにいるはずだけど……」


 と、やってきたのはどう考えても人気が無さすぎる路地裏の奥。

 俺たちが隠蔽スキルという段ボール箱で隠れている以外何も……あ、いや、居るな。

 彼らが入ってきた道を塞ぐようにして現れたのは十人程のヤバそうなオッサンたち。


 随分と嫌な顔してるなぁ。

 おそらくやって来る女性は襲っていいとか言われてるんだろう。

 これから何が起こるか理解して楽しそうにしていらっしゃる。


「よぉ、マネージャーさぁん。アイドルさんは俺らと仕事だぜぇ」


「ひっ!? あ、あの、貴方達が? でぃ、ディレクターさん、は?」


「おぅ、俺だぁ。けひひ、早速始めようか撮影をよぉ」


「撮影、何を撮るか聞かされてません、けど」


 フードを被った女性が告げる。

 マネージャー君はオガムさんと声が違うことに気付いたようだが、それを告げるより先におっさんたちに押しのけられる。

 あ、蹴られた。


 バンのタイヤに背中から激突したマネージャー君が咳き込む。

 何が起こったか理解できないようだけど、分かって無いなぁ。キミ、騙されたんだよ。


「ま、待ってください! ここでの撮影はじっとくしとくだけのお仕事じゃないんですか! 社長から高額の割のいい仕事だと!」


「はぁ? あははははは、おいおいマネージャー君、キミ、馬鹿なのか? いやー、阿久井田社長さんも悪人だねぇ。自分の奴隷作るために俺らに下準備させるんだもんなぁ! そこの落ち目のアイドルは今から強制AV出演で人生終わって貰うのさ!」


「なっ!? ま、待ってくれ! オガムさんはもっと輝けるんだ! 社長が引き抜くって、だから、なんでAVにっ!? そちらのアイドルはそちらの希望者が成ればいいでしょ!」


「ぎゃはははは、おいおい、こいつ自分がアイドル生命終わらせたこと理解してねぇぞ!」


「お前んとこの社長たちは気付いてなのになぁ」


「あ、でもここに来たってことはオガムちゃん切り捨てられたってことか?」


「いーじゃん、オガムちゃーん、俺らがちゃぁんと面倒見てやっからさぁ。社長さんに飽きられても俺らがきっちり有名人にしてやるぜぇ?」


「男たちのアイドルって意味じゃ一緒だしなぁ」


 これさぁマイネさん、健全なVRゲームだよね?

 私に聞くなって? そりゃそうだけど、さすがにこいつら出てくるの間違ってね?

 これ俺らがいろいろ画策してなかったらオガムさん襲われてたわけだろ? 全年齢対応じゃなくね?

 いや、確かに、暴力シーンとかヤバいから18禁対応になっててもおかしくないけどさ、運営がクソ?  それは同意だわ。


「逃げられるとは思ってねぇよなぁ。オガムちゃぁん」


「そんなフード被ってねぇでさ、おっぱじめようぜ!」


「撮影で有名になろうねぇ、オガムちゃ……あ?」


 男の一人が女性のフードを掴んでひっぱる。

 そこから現れたのは、包帯に塗れた踊り子だった。


「え? なん?」


「オガム、じゃねぇ、よな?」


「いや、違っても女に代わりねぇなら、やっちまおうぜ」


「いや、でも……」


 襤褸の女はニィっと笑みを浮かべ、その場で踊りだす。

 あ、やっべ。皆あの踊り見ないように。

 SAN値直葬食らっちまうぞ!


 くねくねさん改め黄衣の王の配下となった踊り子さんが破滅の舞を踊りだす。

 それはまさしく地獄絵図。

 ははは、俺らが殺したりしたわけじゃないから犯罪ではない。

 ただ一人のお姉さんが踊りを踊っただけだからな。


 ただ、その踊りは、人間にはあまりにも許容範囲外すぎた。

 人は踊りを見たことで腐り崩れ、溶け消える。

 それが黄衣の踊り子たちの舞である。


「お、おおおおオオオオオ」


 うわぁ、目を閉じててもおっさんたちの変化が分かる気がする。

 しばしの間俺たちは目を閉じて脅威をやり過ごす。

 くねくねさんが終ったよー。と告げた後で目を開くと、そこには怯えて蹲ったままのマネージャー君と、人だった何かのどろりとした汚泥が十数個。主を無くした服も散乱していた。


 人型のモノはくねくねさんとマネージャー君以外残っていなかった。

 え、えげつねぇな。この作戦考えたの誰だよ!?


「いやー、初めて発動させてみたけど、威力ヤバいね。頭がぱんってなるより酷くなった気がする」


 照れ笑いして言うこっちゃねぇよ!?

 

「な、ななな。何が、これ、どうなって……あ」


 脅威が去ったと知って顔をあげたマネージャー君。

 俺たちを見つけて硬直する。


「よう裏切者君。オガムさんの人生奪いかけた感想、聞かせてくれねぇか?」


「ギルティよね? ギルティでいいかしら? 私のマンホールはいつでも発射可能よ?」


 おいおいマネージャー君、そんな絶望的な顔しないでくれよ。心外だなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
マイネさんの料理番組は〜じま〜るよ〜!今回の材料は裏切り者君とマンホール2枚に汚泥が材料となります まず始めに裏切り者君を汚泥に漬け込み 鼻をつまみ1分待ちます いい具合ににおとなしくなった裏切り者君…
OHANSIの時間だ ヒロキ「キリキリ吐かないとマイネさんの 拷問ショーになっちゃうよー」 マイネ「先ずはヒロキの身体で試すよ…」
せめて仕事くれた人の怪しい噂を裏取りしないのはマネージャーとして失格よね(社長はできてた訳だから
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ