98.幽霊嫌いを克服したい6
イツマデさんはイツマデ狩りに遭って所持アイテムと経験値を奪われました。
いやー、オヤジ狩りを彷彿とさせる不良共のリンチを見てしまった気がするよ。
ほんとえげつない。
「うぅ……」
おっと、小さい男の子が泣いてる。
あの三人恐かったもんなー。
っていうかこいつも幽霊だろ。
昔の服装だし、どう考えても農民の子供か浮浪児の幽霊だ。
「おぅ、どうしたクソガキ?」
「ダメよヨシキ、小さい子にそんなメンチ切っちゃ。恐かったねー」
と、ヒバリさんが無防備に近づく。
頭を撫でようとした彼向けて、幽霊君は顔を上げた。
両目は抜け落ち漆黒の眼窩からは血の涙が流れていた。
「あ゛ァ゛?」
えぇ? 何今の声?
あの、ヒバリさん?
固まってる? あ、子供の方がなんか恐れを成して成仏しちまったぞ!?
「おーい、ヒバリさん?」
「ヒバリ? もう幽霊いなくな……死んでる!?」
「いや、勝手に殺すなユウ。気絶だ気絶。目の前で幽霊見て睨みつけた顔のまま気絶したみたいだな。多分ログアウトしちまってるぞ」
さっきも同じことしてなかったっけ?
「無縁仏はこの位かな?」
残念ながら新しく仲間を見付けることは出来なかったようだ。
「さっきの子供幽霊とか交渉して肝試し会場に来てもらえればよかったんだが……」
残念ながらもう居なくなってるからなぁ……ん?
申し訳程度に置かれた岩というか石というか大きさ的には岩でいいのかな?
その後ろに必死に隠れている幽霊と思しき物体が一体。
女の子だ。
「お嬢さん、俺、今肝試しに脅かし役で参加してくれる存在を探してるんだけど、君、出てみない?」
手を差し伸べると、びくっとさらに怯える少女は、しかしこちらが動かないでいると恐る恐る岩場から出て来た。
これは……幽霊、じゃないな。かといって妖怪でもない?
複眼にふさふさの襟首、いや首元のはこれ地毛か?
体は人型だけど全体的なフォルムは蜂のよう。
「蜂怪人?」
「い、いえ、アベイユ星人です」
宇宙人だったらしい。
体の蜂っぽい模様はキイロスズメバチの色と同じだな。お尻に黄色と黒のしましま尻尾が付いてるし、蜂女と言われてもしっくりくるが、宇宙人らしい。
小柄だし宇宙人の子供かな?
「こんな場所に居るってことは迷子か?」
「う、うん。その、幽霊苦手で。迷ってたらここに来ちゃって幽霊いっぱいで、身動き取れなくて……」
おおぅ泣きだした。
思わず両手を開いて中腰になると、アベイユ星人の女の子が飛び込んで来て泣きだした。
「いや、何その自然な抱きとめ!?」
「こいつ、伊達にハーレム築いてねぇな。雌の扱いに慣れてやがる……女なら何でもいいのかよ!?」
「ユウ、お前もアバター女だし狙われてんじゃね?」
「はぁ!? ちょ、さすがにそれは……まさか現実世界で俺を堕とす気じゃねぇだろうな!? へ、変態っ」
「人を勝手に変態扱いしないでくださいません!?」
―― アイネルシャントーハス・プレハラリアーマ・フェスフェスフェヘリヘが仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――
名前長っ、アイネさんでいいかな。YESで。
―― アイネさんをテイムした ――
名前が略された!?
落ち付いたらしいアイネさんを引きつれて、俺達は一旦お寺へと戻る。
坊主のお兄さんが僕に何か憑いてるからお祓いしようか? と聞いて来たけど、ソレ多分ハナコさんとテケテケさんとメリーさんだと思うので遠慮させて貰った。
しかし、ヒバリは大丈夫だろうか?
強制ログアウトしてから戻ってこないんだけど。
皆でしばらく待っていたけど戻ってくる気配もないので、一度学校に戻ることにした。
本人の教室に向って自分の座席に座らせ、その教室に居る輝君にヒバリが気絶した経緯とここに置いたことを伝えて貰うように告げて、ヨシキとユウがログアウトしていく。
俺も一旦自室に……っと忘れるとこだった。
最初に市役所行こうと思ってたのにユウ達に会ったことで完全に忘れてた。
自宅も既に手狭だし、せっかくだ。このまま市役所に向って新しい住居を手に入れよう。
うん、そうしよう。
今の自宅既に狭すぎるし。変え時だよな。
お金も……霊子の欠片売っぱらえばそれなりになりそうだし。
と、言う訳で、急遽思い出した市役所向けて俺達は移動先を変更するのだった。
というか、市役所に子供が向って大丈夫なんだろうか?
まぁゲームだから問題は無いんだろうけども、絵面が酷いというか。
小学生が家買うんだぜ? おかしくね?
まずは商店街に行くのも面倒だったので学校の購買でさっさと欠片を売っぱらうことにした。
そういえばここ、なんかすげー武器とかも売ってたな。買うか、ロケラン……いやいや、今は自宅のグレードアップ優先だよな。余ったら……買うか。
 




