984.獅子身中の虫
「うーっす、おはー」
ドリームランド内ではアンダハドに辿り着いたところで宿を探してログアウト。
ちょっとした事件もあったし歩きが結構長かったのでほとんど探索せずにログアウトさせて貰った。
現実世界で小用を済ませ、再びログインすると、ドリームランドではなくゲーム内世界の現実へと戻ってきていた。
自分の部屋で目覚めた俺はいつものように皆の元へと向かう。
本日はアイドルグループ側で裏切者の状況確認。
あるいは、その場で斬り捨てるのも視野に入れるつもりだ。
そもそもハナコさんがアイドルしてるってのに裏切ろうとはふてぇ野郎だ。
当然ながら万死に値するので許す気は全くない。
一応、裏切ってない可能性も調べはしたけど、どう調べてもアウトっぽいんだよな。
そもそも泥船が沈み始めたきっかけもこいつみたいだし、どっかからアイドル事務所潰すために遣わされたスパイか何かなんじゃないかと俺は思ってる。
「んじゃ、今日はハナコさんたちとアイドル事務所行くことにするよ」
「おー、ようやくマネージャーさんらしい仕事してくれるのね!」
「失敬な。マネージャーとしての仕事はしてただろ。練習用のコーチ集めたり、練習場集めたりさ」
「デビュー関連は基本アルケスの人がやってくれたけどねー」
あの社長さん結構やりてだったみたいだな。
オガムさんが落ち目のアイドルだったからダメかと思ったけど、祝さんたちが来たおかげで社長さんがいろんな場所で仕事取って来てくれてるらしい。
オガムさんのマネージャーはちょっとダメっぽいけどな。
あの人、オガムさん用の仕事取って来るんだけどどれも怪しいのばっかなんだよな。
だからいつの間にかマネージャー業から外されて今は裏方に回されてる。
マネージャー業は案内人君や勇者ブレイド、祝さんなど手が空いてるメンバーがやってくれているそうだ。
案内人君、ドリームランドにも来てるのにいろいろ任せてすまないな。
最近はくねくねさんやら散紅さんがフォローしてるのでそこまで大変じゃないっぽいけど。
特に、仕事取りは散紅さんが強いらしい。
相手の弱みを見つけて大きな仕事を取ってきているそうなのだ。
タツタさんの料理教室コラボも彼女が他の会社に行く仕事を奪ってきたらしい。
相手の会社が敵視してきそうだけど、最近話題になり始めているアイドルたちなのであまり表立っての妨害は出来ないようだ。
その分スパイ君が活発に動いてるらしいけどな。
「じゃ、今日はよろしくねー」
「ヒロキ、私も一応アイドルなのよね。最近は仕事取る仕事がメインになって来てるけど」
「散紅さんと祝さんのおかげで皆の知名度も上がって来てます、ありがとよー」
「誠意が足りないわね。全く」
「散紅さんにはお世話になっております」
さて、今回同行するメンバーはっと、ハナコさん、アカズさん 、レムさん、散紅さん、稲荷さん、ディーネさん、ルースルスさん、ルルルルーア、キマリスさん、そして案内人、なのさん、勇者ブレイド、りんりんさん、レイレイさんだ。案内人君以外はアイドルでもあるので基本マネージャー業で動くのは俺と案内人君だけになるはずだ。
さぁて、どんな感じになるかないなっと。
「えーまたボクが行くのかい? なんか最近出ずっぱりじゃないかな? もしかして少年君、ボクのこと……」
「うん、使い勝手のいい魔王だと思ってるよ」
「爽やかに言うことかな!?」
メンバー集合が終った時点で外に出て今回のプレイヤーを見る。
すでに案内人君たちはアイドル事務所に向かっているので、ここに来てるのは、格ゲー少女とマイネさんだけのようだ。
「おいーっす、今日はどこ行くのー? 正義の味方と戦うんじゃなかったら参加するわよ」
「もはやトラウマになってますね、それ。で、どこ行くんですか?」
「今日は無難にアイドル事務所だね。ちょいと怪しい動きしてる奴がいるんでとっちめに」
「お、いいねぇー。それなら私も手伝うわ!」
マイネさん手伝うのはいいけど大事にしないでくれよ。
どっか燃やしたとか、倒壊させたとか言われても俺弁償しないからね。
俺は若干の不安を覚えつつ、格ゲー少女がマイネさんを止めてくれるだろうことを祈ってこのパーティーで向かうことにした。
アイドル事務所RCSへとやってくると、早速社長が出迎えてくれる。
「やぁ待ってたよ散紅君! 早速今日の打ち合わせをしよう!」
揉み手だよ社長。
これじゃあ散紅さんの方が社長っぽいよ。
散紅さんもまんざらではないようで、案内されるままに事務所へと向かっていく。
俺ら完全に付き人扱いだな。
まぁ別にいいんだけどさ。
事務所にやってくると、応接用のソファにどかりと座る散紅さん。
多分わざとだけど上座に座りやがった。
オガムさんが紅茶を入れて持ってきて、散紅さんが上流階級の御令嬢みたいに優雅なティータイムを始めてしまった。




