983.地下へ行こうぜ
「おまったせぇー」
すでに皆が待っていた。
未知なるモノさんが何とも言えない顔をしてるのは、状況を遠くから見てたのかもしれない。
バハルナ郊外で集まった俺たちは、ようやく次の場所へどう向かうかと話し合う。
「目的地は地下世界だ。ングラネク山の入り口から入って地下に向かい、ナスの谷へ移動する。そこにワーム型巨大生物、ドールが存在する」
「んで、ングラネク山の入り口ってのが、ここの逆方向なんだっけか」
「バハルナから向かうよりはもう一つの都市を回った方がいいんでしたっけ?」
「案内人君としてはどういうルートがいいのかな?」
「そうですね。やはり常道としてはアンダハドに向かうのがいいですね。あちら側からなら入り口があるはずです」
「確かあっち側に顔みたいなのがあるんだっけ? その辺りから入れるのかな?」
「まぁ行くだけ行ってみようぜ」
「んじゃ、今日のところはバハルナ出てティルヒア、出来るならアンダハドに行こう」
「てぃる? なにあるか?」
「レイレイさん勉強してないな。バハルナとアンダハドの間にティルヒアって廃墟があるんだ。一応ヤス=リとかいうのが封印されてて、ニャルラトホテプにより宝が眠ってるとか言われてるんだよな。冒険者たちを誘い込む罠とかなんとか?」
「はっはっは、風評被害だよヒロキ。私がそんなことするわけないじゃーん」
「ニャルラトホテプならそれくらいはする。やはり害悪だ、燃やしてしまおうヒロキ」
「吸血鬼を蘇すのか。面白そうなことをするのだなヒロキ」
土星の猫さんよ、どう聞いたらそんな話になるんだよ!?
「ティルヒアに行くのはやめとこう、あそこ夜中はヒーモフォーとかいうの出てくるし。野営も出来ないからさっさと次の町向かって宿取ろうぜ。今回みたいなことになってもアレだし」
「なぁ、なんか英雄の凱旋みたいな噂立ってるんだが。アレ、お前のやらかしでいいのか」
ははは、なんのことやら。
猫たちから情報集めたらしい天王星の猫が俺によくわからないことを言ってくる。
英雄の凱旋? 知らんがな。俺英雄的な行動一切してねぇぞ。
「とりあえず行こうぜ。なんかこの町の住民、俺見た瞬間拝み始めるから怖いんだよ」
「よかったな拝まれる方で」
冗談じゃない。俺は神様とかじゃねぇんだから拝む方であって拝まれるほうじゃねぇ。
面倒だし、もう二度とバハルナには来ない。そう決めた。
なのでさっさと出発してティルヒア越えてアンダハドに向かおう。
歩きだとかなり時間かかるようだけど、今日のログイン時間目いっぱい使えば行けなくはないらしい。
ングラネク山を側面にしながら、回り込む様にアンダハドに向かって歩く。
さすがにゲーム世界でも距離があるようで、一時間ぐらい何もない平原を歩いていく。
たまにクリーチャーが出てくるが、雑魚キャラだったので俺たちのメンツ相手じゃ力不足だ。
ほぼほぼ瞬殺されていった。
「左手に見えますのが滅びしティルヒアになります」
案内人君がティルヒア見つけて思わず案内を始める。
覚えた知識を披露し始め、この内部に存在するヤス=リのいる墓所の話や、復活のさせ方。いや、それ話されても復活させねぇよ? 何で自分から地雷を踏みに行くんだよ。土星の猫、ワクワクした目で見てこない。
ヒーモフォーとかいう謎生物が居るはずだけど、あいつらが活発になるのは夜らしいので今はどこか木陰などに身を隠しているそうだ。ここからだとさすがに見えない。
案内が終ったのでティルヒアを放置してアンダハドに向かう。
バハルナから180度くらいングラネク山の麓を回り込むと、ようやくアンダハドの町が見えて来た。
さすがにこの町に来るまでで一日過ぎそうだ。
今日は宿を探してお休みだな。
「地下世界かぁ、どんな場所だろうな?」
「地獄みたいな場所だろ。見たことないけど」
「そういえば、ヒロキさん。元世界で地獄ってあるんです?」
「あるよ。地蔵のある場所で地蔵蹴ったりすると地獄に落ちるらしい。あとは地獄の住民に連れてってもらうか、とかかな」
「さすがに地蔵蹴るのはちょっと……」
「魔界とは違うのか?」
「ちょっと、ボクの世界を地獄なんかと一緒にしないでくれないかい未知なるなんとか」
どうやら魔界と地獄は違うらしい。黄泉も別の区画になるんだよな。となるとコキュートスはどうなんだろう?
あとダンテさんの地獄門とかどっかあるんだろうか?
「あの、地獄、入ります? リンフォンの奴ですけど?」
「止めておこう。コトリさん、ソレ入ったら出られなくなるタイプの箱型地獄じゃね?」
「そうですね、これはインフェルノでリンフォンの場合は地獄ではなく地獄のような場所、を差しています。つまりこの中は地獄本来ではなく疑似地獄、と言ったところでしょうか」
わざわざリンフォン出さないでくれません!? それも特級呪物だからねコトリさん。




