976.道返玉の奇跡
「オオオオオオオオオ!!」
小型ながらガラクタゴーレムとなったソレは産声を上げた。
目につく生命体に向け、襲い掛かって来る。
当然、傍にいる俺らに向けて、だな。
「エルエさん!」
「はイ!」
即座に割り込んだエルエさんが渾身の拳を受け止める。
ガラクタゴーレムと古代兵器が激突。
力任せに全身を破壊しながら繰り出される連撃を、女性型ロボが掌で受け止めていく。
「行けそう?」
「受け止めルだけ、なら」
つまり、今回防御に徹する訳か。エルエさんを攻撃に使えないので、他のメンバー……
「スキュラさん、あの珠取れる?」
「私、海特化型なんだけど!? こんなゴミの山で触手以外何ができるってのよ! ファイアブレスでいい! いいかしらぁ!?」
やけくそ気味に足の代わりの犬たちが一斉に息を吸い込む。
って、止めてくれます!? 俺ら逃げ場がないですよ。
「ストップストップ! とりあえずブレスは無しだ! テインさん、キマリスさん、なんとかアレ取って!」
「無茶を言う!?」
「さすがに無理かなぁ。破壊せずには」
やっぱり破壊するしかないか。
「エルエさん、アレに使用されてるアイテム全部分かる? 一応報告書に乗せないとダメっぽいし」
「後方や内部に使用されてイるモノが分かりマせん」
そこが問題か。
ええい、仕方ない。
俺はきゅいきゅいっと腹を抱えて笑っている小悪魔の元へ向かうと、むんずっと掴む。
「きゅ、きゅい?」
「責任取って、珠ァ取って来いやぁ!!」
「きゅいぃーーーーっ!?」
ゴーレム向けてレムさんをぶん投げる。
投擲スキル使ったせいでしっかりと命中するレムさん。
ぎりぎりゴーレムにしがみつき、自分へのダメージは防いだようだ。
こっちに抗議が来るが自分が原因だろ。道返玉を取って来いってんだよ!
「シャー」
お、おお? ツチノコさんも投擲しろって?
いや、アレは遊びじゃないんだが。
ま、まぁいいか、おお、自分から丸まった!?
球体となったツチノコさんを持ち上げ砲丸投げの如く投擲。
激突の瞬間ぶわっと広がったツチノコさんがレムさんの隣に引っ付く。
おー、ツチノコさんさすが!
って二人とも抱き着いたままで動きやがらねぇ!?
何してんだよお前ら!? 攻撃当たらないようにしなきゃいけないからテインさんたちが狙いづらくなったじゃないか!
「おい、ヒロキ、なんで投げた!」
「あれ? 俺のせいにされてる!?」
違うんだテインさん、アレは道返玉を取って貰おうと……
ぎゃあぁ!? ゴーレムが爆発した!?
ちょっとフェノメノンマスク何してんの!?
「クソ! なんだあのゴーレム! 爆破したのに復活した!? 再生能力付か!」
「違うぞフェノメノンマスク、奴の能力ではなく道返玉の力だ!」
なんだって!? テインさんそれどういうこと!?
「道返玉の能力は常道から失われるものをもとに戻す働きがある。本来は魂を戻し固定するモノだが、今回はゴーレムの体を補っているようだ」
つまり、道返玉が混入してる限りあのゴーレム倒せないってことじゃん! さっさと抜き取らないとどうしようもねぇ!?
そろそろコンテナのおっさんたちも異変に気付いて様子見に来かねない。
テインさんがいるという恐怖感で近づきたくなくても、俺たちが何かしてるかも、と様子見に来ない訳にはいかないもんな。それで犯罪者認定されたらどうしようもないぞ。
「仕方ねぇ、本格的にやるしかねぇか。レムさんツチノコさん、自分たちで捕れないってなら覚悟してくれよ。文字通り、死に戻る覚悟を、な」
両手にレーザーソードを構え、俺は覚悟を決めた。
さぁ、行くぞ!
「行って!」
……え?
リテアさんの指示の元、音速に近い勢いで近づいたポチがゴーレムから道返玉を奪い取る。
「オオオオオ? オ……ォ……」
ありゃ、道返玉奪い取ったらゴーレムが自壊しちまった?
「きゅいー……」
あーあ、壊れちゃった。とレムさんが残念そうに言う。
いやレムさんや。残念がってる場合じゃないだろ。
「ちょぉっとレムー。こういうのボクがいうことじゃないけどさーっ」
と、レムさんとツチノコさんを正座? させてぷりぷりと怒り出すキマリスさん。
お前が怒るんかい!?
ま、まぁいいか。キマリスさんも今回は許せなかったんだろうし。
「ゴーレム作るならもっと頑強にしないとっ、ゴーレムづくりにはボク一過言あるかんね! しかも道返玉なんて使う必要ないでしょ。再生スキル付ければ……あいったぁ!?」
当然、阿呆だったキマリスさんには飛び上がってのげんこつを差し上げる。
なんで怒る方向性がゴーレムの作り方なんだよ! やらかしのほう怒れや!




