975.がらくた山の宝の山
俺たちは手分けしてゴミの山を探索していた。
しばしいろいろ発掘していると、コンテナ事務所から一人のおっさんがやってきた。
なぜか足ががくがく震えてるけど、どうし……見てるの、テインさん?
ああ、ティンダロスの王について知ってるNPCさんかな?
「どうしたんです? さっき許可は貰いましたよね?」
「……あ、ああいや、可能であればなのですが、持っていかれるモノの内容物を控えさせては貰えませんか、これも仕事でございまして。ええ、決して無断持ち出しが犯罪で捕まったりするわけではないのですが、持ち運ばれたモノを把握しておかなければこちらとしても少々面倒がございましてですね」
「あー、仕事ならしゃーないっすね。エルエさん控えてる?」
「問題ありマせん」
「ではアイテム発掘が終ったらまとめた用紙を提出しますよ。ちなみに用紙と筆記具とかあります?」
「え、ええ。こちらを使ってください」
「うっす。あ、ちなみに、俺ら一番の目的は十種神宝の一つなんとか珠を探してんです。この山にあることだけは分かってんですけど、知ってたりします?」
「いえ……基本纏めて捨てられますので貴重品なども山の中に埋まったままになっているかと」
「あー、やっぱり自力で探すしかねぇか。俺の幸運値とポチのお宝発見力に期待だな」
スキュラさんが無数の犬たちに匂いをかがせてここ掘れワンワン、触手で掻き分け豪快に山を掘り進めている。
その近くではキマリスさんが適当に発掘。ガラクタばっか手にして一喜一憂してやがる。喜んでるところ悪いけどそれ、ゴミだからね。
フェノメノンマスクはマイペースだな。いろいろ発見しているようだけど、とりあえず手に入れたモノ全部リスト化するからパクるなよ。どうせ持って帰るんだから。
「さすがにそれはしないぞ。お前じゃないんだ」
「それどういう意味だよ。さすがに俺も自由に持って帰れるのにちょろまかしたりしねぇよ。意味ないし」
「意味があるならするのかよ……さすが外道」
「お、ポチよくやったわ。おーよしよしよし」
それ、一応古代兵器なので犬の姿してるけど犬じゃないですよリテアさん?
まぁポチもまんざらでもなさそうだからいいけどさ。
「シャー?」
「きゅい」
レムさんとツチノコさんは発掘作業に飽きたのか、二人で何かを作成中だ。
まぁ放置で良いだろう。いくら悪戯好きといえども前回のアインシュタイゼン研究所みたいなことにはなるまい。
今回は人型兵器もないから止めれんぞ?
「で、では私はこの辺で」
ここにはいたくない、とでもいう様に、作業着のおっさんはそそくさと帰って行った。
完全にテインさんに怯えてたなぁ。
「ふむ。私がティンダロスのモノと知っても近づいて来たのか。仕事人の鑑だな」
「一応テインさん話は分かる方だと思うんだけどなぁ」
「それについては貴様等と行動を共にしているからだろう? リーギグスの奴らに掴まっていなければ私とて人間を見たら即殺すぞ?」
マジっすか。
「お前が特殊過ぎるのだ。憎悪を抱く理由もなくなるくらいに、なぜ蕃神どもが貴様に近づいてくるのか未だに理解できん」
それは俺にもよくわからん。もしかしたら幸運とラッキースケベスキルが作用してるのかもしれんし。基本テイムされるの女の子ばっかだし。
ああいや、一応男は一人いるのか?
でもあれ本人が仲間になったというよりはイエローさんの付属品としてついてきたようなもんだしなぁ。人数に入れていいのかどうか。
っと、なんかみっけ。おお? 宝箱、だと!
よっこら、しょっと!
見て見てテインさん、宝箱!
「ヒロキ、それはミミックだ」
マジか!?
俺が慌てて投げ捨てると、ばかっと開いた宝箱から触手の群れが……
「オオオオオ!!」
そんなミミックへと黒い何かが突撃し、拳を叩きつけて圧殺。
「きゅいー!」
やったー! じゃねぇよ!? やっぱ塵塚怪王みたいな奴作ってんじゃねぇか!?
背丈140くらいのゴミ製ゴーレムってか、ツチノコさんも変なの作らせな……
おい、おいいいっ! そのゴーレムの首に掛かってるの、道返玉ぁ――――っ!!
「きゅい?」
「クソ、あのゴーレム破壊しねぇとダメか!?」
「ヒロキさん、さすがにアレ壊すとその分用紙に書かないといけないんじゃ……」
「うっそだろぉ!? ちょっとレムさん、アレ止めて! 珠だけ抜いたら後遊んでていいから!」
「きゅい?」
止めかた? わかんない。じゃねぇぇぇぇぇ!!
どうする、アレを破壊せずに止めるとか、できるのか?
つかツチノコさん、さすがに必要なモノ使うの止めてくれよ!
「オオオオオ!」
「うわー、暴走してない?」
「ですよねぇ!? クソ、やるしかねぇ!」
レムさんがなんか造ると結局俺らがその後始末じゃねぇか。ちょっと本気でお灸据えるかこの小悪魔め!




