96.幽霊嫌いを克服したい4
「幽霊の、正体見たり、枯れ尾花、ってね。霊視スキルで見えるようになると大抵の浮遊霊はあんな感じなんだよ」
「足がなかったりするけど、基本普通にお爺さんやお婆さんなのね。ちょっと怖いけど、前よりはまだ、マシかしら?」
はいはい、テケテケさんは隠れてねー。ハナコさんこっち。もうすぐヒバリさんこっち向くから気楽な挨拶お願いします。
「霊視を取るとそこまでの恐さは無くなるわね」
「な、やっぱ幽霊なんざ見た目がわからんから恐いだけだろ」
と、ヨシキとヒバリがこちらを振り向く。
丁度俺の隣にやってきたハナコさんが笑顔で軽く手を振った。
「おお!?」
「ひぃっ!?」
ヨシキが歓喜に眼を開き、ヒバリが今までいなかった少女の出現に悲鳴を上げる。
「どうも、初めまして」
二人にも聞こえるように声を出すハナコさん。
今までは俺のみに聞こえる念話だったから他の人には聞こえなかったけど、これで遠慮なく周囲に声を届けられるし普通に会話が出来そうだ。
「おおお、マジハナコさんじゃねーか! はぁー、実際に動いてる姿みるとなんか感慨深ぇな」
「お、驚いたわ。急に居るんだもの。いえ、ずっと、居たのよねすぐ近くに」
駆け寄ってくるヨシキとおそるおそる近寄ってくるヒバリ。
ハナコさんはサービス精神旺盛だから、二人と握手までし始める。
はいはい、時間でーす。
「うをい!? ヒロキ、テメェは握手会の警備員か!?」
実際そのようなもんだろ。
ヒバリさんは女性だし、ユウもまぁ容姿女の子だからいいとしてもヨシキは5秒以上は却下だ。
「おま、どんだけ過保護だよ!?」
「そこまで、ハナコさんに近づかないでくれたまえ」
「うをい!?」
「ふふ……」
「あはは、ヒロキの奴マジガードしてやがるっ」
「笑ってんじゃねーよお前らぁ!?」
生でハナコさん見る機会だもんな。そりゃテンション上がるよ。俺だってそうだし。
でも俺はともかく他の野郎共をハナコさんに近づかせると思うなよ?
「あー、でもハナコさん、握手会っていいよね? ディーネも参加して開かない?」
あ、こら、ディーネさん勝手に出ない!
「な、な、何?」
「精霊のディーネさんだよ。突然出てくるけど幽霊じゃないから」
何度言われても慣れそうにないなぁ。大丈夫だろうか?
「せっかくだしよぉ、先に全員紹介してくれや。突然出て来ても問題ないようによ」
それもそうか。
「えーっとじゃあ、稲荷さんとメリーさん」
俺の胸ポケットから飛び出した稲荷さんが寄り代を巨大化させる。
少女の姿に狐面の稲荷さんが、遅れて出て来たメリーさんを摘まみ上げ、皆の前に出す。
「こちらが人形霊のメリーさん、そしてワシが稲荷の寄り代じゃ」
「んで、こっちがツチノコさん、既に出てるけどディーネさん、ネネコさん、スレイさん、ハナコさん。そして……テケテケさん」
最後に紹介されたテケテケさんが俺の後ろから現れる。
当然。驚き悲鳴を上げるユウとヨシキ。
「って、あれ? ヒバリ、悲鳴上げてないのか、すげ……ぇ?」
「おい、ヒバリのヤツ立ったまま気絶してんぞ!?」
しまった、やっぱりテケテケさんは刺激が強過ぎたか!?
おそらく脳の負荷が酷過ぎて現実世界にはじき出されたっぽい。
なんか、すまん。
「こりゃテケテケさんに慣れるのが最優先っぽいな」
「なんか、ごめん」
「いや、ヒロキのせいじゃないだろ」
「お前もなんとなく一番ヤバそうだからって最後まで紹介しなかったんだろ。俺もユウもテケテケさんの容姿にゃさすがに恐怖覚えるし、ヒバリが大丈夫になれるかどうかは……ちぃっと不安だな
」
不安しかない気がするけどね。
「あー、そうだ、お前ってここに脅かす側の幽霊探しに来たんだろ。奥の方に怨霊いるらしいし、ヒバリが戻ってくるまで行ってきな。こいつは俺が見てっから」
「そだな。ヒロキ、行こうぜ」
あれ、ユウも付いてくるの? まぁいいけども。
ユウは拳にメリケンサックを填めてやる気十分だ。
でも塩持ってないみたいだからあのスキルが手に入るまでは塩渡しとくか。
「あん? 塩?」
「これを幽霊に振りかけてから殴ると普通に殴れるよ」
「はー、幽霊って殴れるのか。サンキュ」
墓の上を浮遊したりしている幽霊達に挨拶しながら奥へと進む。
さすがにこの辺りは清掃も行き届いているようで、ヤバそうな霊は見当たらない。
お寺でしっかり供養されているようだ。
「ここから無縁仏のテリトリーか」
「テリトリーって、まぁそんな感じでいいか。皆、戦闘態勢お願い」
さすがにトンネルみたいなボスが出るとは思えないけど、ユウのレベルは恐らくまだ一桁のはずだ。無理はさせられない。




