964.ほのぼのな航行
宇宙戦艦【千年帝国】はゆっくりと浮き上がり、現代世界を模した世界の空を移動し始める。
お、スレみたら早速これの話題出てんじゃん。
リテアさん見て見て。
「あー、ほんとですね」
「題名が【これってやっぱ】総合雑談スレⅢ 5【ヒロキ関連?】とか、何でこいつ的を射てんだ?」
「ああ、キョウヤ君だなこれ書いてるの。おそらく総合スレサードの更新役になったんだろう」
「あいつこの戦艦見てないはずなんだが……」
まぁ戦艦とかASとか俺が関わってそうだもんなあいつから見れば。
「ヒロキさん、これ書いてもいいか? 俺乗ってるって」
「別に構わんよ。せっかくだし行先も書いといてやれば?」
「なるほど。では遠慮なく」
「あは、私も書ーこおっと」
「せっかくだし俺も書いとくか」
皆ミーハーだなぁ。
まぁ楽しそうで何より。
ドリームランドの空だと空賊とやらが出てくるからゆっくり航行は出来ないけど、こっちの空はどうだろうか?
一部鳥は行き交ってるし、ムクドリか何かの大群が遠くに見えるけど、こっちには寄ってこないな。
敵対生物としていそうなのは妖怪とか怪異の空飛ぶ系生物だけど……近くにはいないらしい。
あ、あそこに烏天狗っぽいのいるな。こっちを遠巻きに見てるから警戒されてるのかもしれん。
多分祝砲とか撃ったら敵と思って殺到してきそうだな。
下手に敵対すると鞍馬天狗が殺しに掛かってきそうだからやめとくけど。
あの人のステータスもヤベェからな。コトリさんがいない今回は下手に敵対すべきじゃない。居ても敵対したくない人だし。
「それにしても、この高さから街並み見ると壮観だよな」
「結構な盆地だよなここ。山に囲まれてるように見えるけど海にも面している、変な地形だ」
「海きれーい。いいわねこの高さから見る海洋。水平線の彼方まで見えるみたい」
言われてみれば、宇宙戦艦からの景色って意外と絶景だよな。
おー、なんか海のあの辺りでっかいのいねぇ?
「海坊主か何かか?」
「怪異系もさすがにこんな場所から見られてるとは思ってないから意外と見つかるな」
「あ。ね、ねぇ、アレ、何だと思う? なんか凄く大きな柱、山の先にあるんだけど」
柱と言うかアレは……足?
「なんだありゃ?」
「二本あるし、雲から見えるのは多分尻尾だろ。ってことは……あれじゃね? 天の牡牛だかなんだったか。グガランナとかそんなじゃなかったか」
普通にありそうだな。なんでこっちに背を向けてるのかも謎だけど、とりあえず動く気配はないし、実装前なのかイベント用なのか、まぁ下手に突くと運営に怒られそうだし。グガランナの神話は確か殺すと英雄の友人が死ぬとかそんな話だったはず。
下手に破壊すると俺の大切な存在が殺されるかもしれん。
それは十中八九、ハナコさんになるだろう。
絶望フラグが立つと分かってる危険生物には近づかないに越したことはない。
それに、あっちは多分現状のほのぼのオンラインで行ける区域の外っぽいしな。
多分こっから見えるだけで実際にはあそこまで行けることはないはずだ。
建物や山の上を通り抜け、俺たちはついに海上へと辿り着く。
おー、海岸沿い結構なプレイヤーがいるな。
海水浴かぁ。いいなぁ。
俺らが向かうとおそらく変なイベント起きるだろうからまともに遊べないだろうけど。
いつか、皆と行きたいなぁ。
プール以来皆の水着見てないし。
ハナコさんに悩殺されたいです。
「あれ? ねぇ、あそこサメじゃない?」
「お、イベント起こったみたいだな。プレイヤーたちが一斉に海から海岸に向かいだした」
「ジョーズ系のイベントかな? ま、俺らにゃ関係ないイベントか。がんばえー」
「手伝わないのか?」
「必要ないだろ。むしろ下手に手伝うとイベント破壊したとかクレーム入りそうだし。このイベントは砂浜にいるプレイヤーのイベントさ。俺らが掻っ攫う必要はないんだ」
なるほど、確かに、とフェノメノンマスクが納得する。
俺たちは彼らを見送り、さらに遠洋へ。
この辺りまで来ると海だらけになるな。
えーっと、エルエさん場所はわかってる?
「地図と照らし合わセて確認済み、です」
「なんかよぉ。こっから釣り糸垂らしたら何釣れんだろうな?」
「船が傾くようなの釣らないでくださいよ」
「さすがにそれはないだろ……いや、このゲームならあり得るか?」
「海の巨大生物と言えば海坊主とかあやかし、あとクラーケンにヒュドラとかかな」
「ゴ〇ラとかいないだろうか? 運営だし放射能汚染生物とか出てきそうじゃないか?」
「そしたらグレートマンさんのお仕事になりそうだなぁ」
「ん? なぁ、あそこに島、移動してね?」
はぁ? そんなはず……あ、アレはアスピドケロンかな? ほら、頭見えるし。
「あすぴどなんて?」
「アスピドケロン。巨大亀だ」
「あの島、上陸してみたいですね。何かありそうだし」
エルエさん、寄れる?




