959.いろいろ端折った処女航海
全ての銃器による一斉射。
【千年帝国】が持つ攻撃手段全てを使った先手必勝。
大空を舞う推定ウェネリア人とやらが爆撃の海に消えていく。
うわー、えげつねぇ。
相手の容姿、俺がしっかり認識するより前に全滅しちまったよ。
まぁ海賊らしいから近くまで寄られても面倒なだけだけども。
「海の中にもいろいろ生物いるみたいだね」
「あ、なんか跳ねた」
「ありゃ人魚か? 三本腕のおっさんに見えたけど」
「それは多分ノオリだね。海中に住む人魚の一種だよん。四本腕から二本腕までいるよ」
ニャルさんが外を見ていた皆に説明を始める。
機械いじりながら随分と余裕だね。
「ん? 操舵手、前方の雲は避けろ。アレはヤバい」
しばらく航行していると、不意にティリティさんが何かを発見した。
「あ、はい、こんな感じ……あれ?」
「ダメか、こっちを補足されたな。マイノグーラ、頼む」
「あいよ、全砲門発射ー」
だからなんで攻撃の度に全力放出してんだよ! 弾の無駄だろ!
限りあるんだから遠慮して使……
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアっ」
うおぉ!? なんだ!?
「へ? く、雲が悲鳴上げてる!?」
「ありゃ雲の獣か。ティリティ、よく気付いたな」
「うむ。アレはドリームランドで見つけたら逃げるべき存在の上位に位置するからな」
ドリームランドの生物って多種多様だよなぁ。
雲に擬態する生物までいるのか。
「ドリームランドは少しの油断が命取りだ。雲の獣なんてその最たるものだぞ。気付いた時には腹の中、だからな。ニャルのような番神でもない限りは脱出する前に吸収されて新たな雲の獣へと成長するだろう」
「それはそれで嫌だな」
でも、雲が襲い掛かって来るとか想定すらしてないわ。
「処女航海なのに危険がいっぱいだな」
「そら、またウェネリア人の海賊が……燐光を放つ怪物までいるぞ」
「なぁにあのでっかいの?」
「なぁ、あいつウェネリア人の海賊とかいうの食べてね?」
「奴は馬鹿だから味方の区別とかつかないのよね。だから運悪く近くにいると一緒に餌とまとめて飲み込まれるんだ」
なんだその生物。
いや、確かにアレだけ巨大だとそうなってもおかしくないのか。
ざまぁ案件だな。
そもそも俺はウェネリア人の海賊とかいうのからして初めましてが多いんだ。
こいつらも初めましてだから……会話可能かどうかとか調べたいんだけど。
「全砲門発射ー」
だからマイノグーラさん、一回一回全力放出しなくていいから。
マイノグーラさんが見敵必殺してるせいで俺の出番は全くない。
つかウェネリア人の海賊多いな。
「お、そろそろ見えるぞ」
「オリアブ島かぁ、ほぼ一瞬だったなぁ」
「航海なのに、一切海入ってないという……」
「一応海風は感じられるぞりんりんさん。外出るか?」
「風に飛ばされて海ポチャするからやめときますっ」
まぁそりゃそうなるか。
この船意外と速度出てるもんな。
普通は海の波抵抗とかがあってここまで加速出来ないし。
ロケットエンジンのおかげでマッハとはいかずとも結構な速度出せるからな。
その分空気抵抗とかはかなりあるっぽいけど海の中行くよりはまだ軽いはずだ。
「どこ止めるの? なのはわからないの」
「とりあえずちょっと広い場所がいいんじゃね。さすがに町の傍は騒ぎになるだろうし」
「んじゃ適当に決めるぞ。あの辺りで良いだろ」
町からはちょっと離れてるけど、まぁいいか。
とりあえずオリアブ島到着。
船だといくらかかるかわからない場所だけど、宇宙戦艦なら本日中の到着である。
「ふはー、着いたー」
「なんっつーか普通に船で行くよりはだいぶ早く着いた気がするな」
「というか、ヒロキさん、宇宙戦艦なんてアリなんですか? 運営にナーフされません?」
「さすがにナーフされるのは困るな。運営に直談判しに行かねぇと。運営さんよ、頼むぞマジで。俺ばっかナーフするのはどうかと思うんだ」
「いや、そもそも最先端突っ走ってるお前が一番やらかしてるからナーフ食らってんだろ」
そうなんだよなぁ。俺が手に入れたものとかいろいろナーフされてんだよな。
今のところはその気配ないし、とりあえずこの船使うとこまではそのままにしておいてほしいな。変な船に乗船して戦う間もなく殺されるよりはマシなんだから。
あ、いや、最悪船の乗組員全員殺し尽くして船奪うなんてことは可能か。
運営の出方次第じゃそうするのが一番安全かもしれないな。
頼むぞ運営さん、変なナーフして俺の行動阻害とかしないでくれよ。
それこそ月棲獣以上の虐殺をしないといけなくなるだろうから。
その時は俺は声高に叫ぼう。全部運営が悪いんだ。ナーフされたから安全のためにこうするしかないんだーって。




