956.猫派と犬派
デスエさんのお料理教室から脱出した俺たちは、一部メンバーを残して解散となった。
一部メンバーってのは当然ながら俺たちだ。
話題はデスエさんのデスゲーム。皆そっち行ってたからな。
死にかけたことも皆で力を合わせたことも、楽しい話題になっているようだ。
俺ら三人は外にいたから体験してないけどな。
実はデスゲーム内では目玉しゃぶりさんとかルルルルーアさんとかシコメさんが大活躍だったらしい。
俺が見てる時は全然活躍してないのにな。珍しい。
「ところで空飛ぶ茶碗さんと猫滅殺ワンコさんはなんでまたご一緒に?」
「あ、はい、実はこの茶碗さん、猫好きということが発覚しまして」
「この犬好きが猫のことを嫌いだと言うので」
うん?
「「勝負することにしたの!」」
なんでだよ?
「ちょうどデスエさんの料理教室が募集されてたんで応募して、どっちがおいしい料理を作って愛する犬と猫に喜ばれるか。勝った方が負けた方の愛する動物を捨てるという闇堕ち勝負よ」
「止めろよ、負けた方地獄じゃん」
「「だからいいんじゃない」」
「犬好きなんて滅べばいいわ」
「猫好きなんて滅べばいいのよ」
こいつら、別ベクトルの同類だ。
この争いは下手に首突っ込んだら俺が大変なことになる奴だ。
「あー、そっか。じゃあまぁ頑張ってくれ」
「ええ。任せて」
「猫好きを滅ぼしてくるわ」
「滅びるべきは犬派よ」
バッチバチしてやがる。
ん? どうしたマイネさん?
「赦せない、赦せないわ! 犬? 猫? ハムスターが一番に決まってんでしょうがァ!!」
あれぇ、まさかの別方向から参戦!?
「ペット枠は、おじさん……いえ、なんでも……」
アミノサンまで参加しようとしないっ。
「んー、ねぇタツキ、私兎派なんだけど、参戦した方がいい?」
「キョウカ、下手にああいうのにかかわらない方がいいよ。別に何派でも自分の好きな動物を飼えばいいと思うんだ。ね、ヒナギ」
「え、あ、そう? その、他の生物とかでも、いいかな?」
「ん? ヒナギも動物飼ってるの?」
「えっと、うん……白いアオダイショウ……なんだけど」
爬虫類派だった!?
一定数いるな確かに。
トカゲ系の人もいるけど蛇好きかぁ、タツキ君、ここは男を見せる時だ。絶対に引いちゃダメだぞ。
「えっと、まぁ、その、個人の趣味なら、いいんじゃないか」
「そ、そうだよね。えへへ……」
う、うーん。惜しい。もうちょっといい言葉のチョイスはなかったのか。
好きな相手ならそういうのも含めて君が好き、くらい言いやがれ!
どうしても蛇が無理なら土下座して別のペット飼ってください、でもいいぞ。その代わり振られるか一生頭が上がらなくなるけど。
「んじゃ、今日は帰るかぁ」
「あ、そうだヒロキさん」
「ん? どうしたアパポテト君。珍しい」
「いえ、そういえば料理教室で思い出したんですけど、昨日からタツタさんの料理教室って奴も募集始めてんですよね。あれもデスエさんと関連あるのかな、と」
「あー、マジかぁ……」
サユキさんとユウキさんのイベントだよ。
つまり明日の夜はそっち関連だろ。理解したよ。
「アパポテト君情報ありがと。おかげで明日の夜も七不思議はキャンセルになりそうだ」
「あー、なんかすいません」
「いいよ、毒を食らわば皿までっていうし。イベントラッシュなら最後までやってやるさ」
つーわけでサユキさん、タツタさんの料理教室に参加表明を……え? もうしてる?
「蛇々利さんがもう一つ料理教室見つけたからついでに登録しよう、って。こっちはユウキも一緒やの」
なんでそっちだけユウキさん一緒なの? まぁいいけどさ。
つまりすでにフラグは立っていたわけか。
明日の夜も七不思議には行かさねぇって意志が透けて見えらぁ。
「さって、ドリームランド行くかぁ、未知なるモノさんたちと船出の日だしな」
「おー、ご一緒しますわ旦那様!」
「そういえばコトリさんテストどうなったの?」
「はい、全力でヤりますわ!」
あれ? ヤるのやの字が殺るに聞こえたのは気のせいかな?
カマン=ターさんたち逃げてぇ!?
「ドリームランドかぁ。そっちも気にはなるんですけどね」
「この時間から延長してゲームってのはなかなか時間的にキツいんだよな」
「ん、私は大丈夫」
「アミノサン、だったら僕と一緒にドリームランド旅しませんか!」
「……時間が合えば」
今の間、絶妙だな。
お前がオッサンだったらワンチャンあったかもしれんが、生まれた時期が悪かったんだ。
「それじゃヒロキさん、俺たち帰りますね」
「おーぅ」
現地解散、ということで、タツキ君たちが去っていく。
マイネさんは……三つ巴の戦いが始まってるのでキカンダーさんに俺ら先帰るわ、とだけ伝えておいた。




