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954.作った料理は完食すること

「さーって、何にしようかしら? 一品料理なのよね。美味しいだけなら幾らでも作れるけど、最初だし凝った料理はどうかしら?」


 ふふふんっと鼻歌交じりにデスエさんが食材を選び出す。

 どんなのが出来るか今から楽しみですな。

 んじゃサユキさん、料理しよっか?


「あ、あんなヒロキさん、料理教室ってのは通ったから上手くなる訳ちゃうんよ?」


「そんなのは知ってる」


「じゃあなんでウチなん!? どう考えても……」


 不安げにしているサユキさんの両肩を掴み、俺はまっすぐな瞳で告げる。


「今回は君の料理がいいんだ。俺の為に、君の手料理を作ってほしい」


「はぅっ」


「うぬぬ、私が旦那様の料理作りたかったのに……」


「いやいや、ダーリンの料理じゃないよコトリさん、ここで作ったの食べるのはデスエさ……あー、そういうことかぁ。ご愁傷様」


「えっと、どういうことです?」


 タツキ君たち外野は黙って見ていなさい。


「まずは何作る? 一番作りやすいのでいいけど」


「ウチ何作ってもアレになるんやけど……よし、決めた。グラタン作る!」


 おにぎりだけでもよさそうなんだけど、まさかの凝った料理だった。

 とりあえず材料を冷蔵庫から取り出していく。


「どうしたデスエさん?」


「変なモノ仕込まないか見てるのよ」


「安心しろよ。俺は何も仕込まないし、サユキさんはただ調理するだけさ」


 そう、俺たちは別に不正をする必要なんてないのだ。正々堂々と作り、相手に出すだけである。

 っと、サユキさんが料理を始めると、デスエさんも料理を開始。

 こちらをちらちら見つつもオーブンを用意して温め始める。


「ひゃぅ!? あああっ。どうしてぇ!?」


 サユキさん悪戦苦闘。

 まぁサユキさんの料理スキルじゃそうなるわな。


「あら? あまり料理が得意じゃないのかしら? これならカスレで勝負しなくとも良かったわね」


 オーブンに料理を入れて焼き始めたデスエさんは余裕綽々、こちらの料理を見ながらそんなことを言う。

 もはや勝った気でいるようだ。


「ああ、それか、適当に料理を作ってこっちの評価と合わせるつもりかしら? 確かにそれなら勝負はつかないわね」


「あんたと一緒にしないでくれ。こっちはちゃんと点数を付けるさ」


「そう、ならいいけど。料理はこっちの方が先に出来そうね」


「そう……みたいだな」

 

 サユキさんはようやく準備を終えてオーブンに入れる段階に入った。

 食材見てみたけどそこまで悪い感じじゃないんだよな。

 なんでここからアレに変化するのか。俺にはこの謎を解明することは出来そうにない。


 オーブンにグラタンがセットされて焼かれていく。

 あとは焼き上がりを待つだけ。

 その間に、デスエさんのカスレとやらが出来上がる。


「さぁ、お上がりなさい」


 俺とサユキさんが審査員である。

 ほほう、白いんげん豆を使った料理か。肉とかソーセージが煮込まれてるな。

 うん、程よく柔らかく程よく美味しい。

 これは文句なく9点くらい出せるな。


 俺は9点、サユキさんは10点を出す。

 とはいえ、二人分の点数が反映されるわけではないので点数が低い方が優先されるらしい。

 それでも9点だ。


「驚いたわ。まさかこの対決で高得点だすなんて。負けるつもりなのかしら?」 


「ははは、そうでもないさ。さぁ、焼き上がり完了だ。サユキさん特製グラタン、どうぞ召し上がれ!」


 オーブンが開かれた瞬間、蒸気と思しき禍々しい何かがオオオオっと虚空に消えていった。

 熱々のグラタンをサユキさんがデスエさんの前へと持ってくる。

 なぜか黒紫色に変色し、ぼこぼこと髑髏みたいな気泡が生まれては消えていくグラタンというなの冒涜的な料理。


「……な、なに、これ?」


 デスエさんは思わず立ち上がり、俺たちの使ったオーブンを覗く。


「何も、ない? え。どうして!? ここに入れるまで美味しそうな色だったじゃない!? どうしてこんな得体のしれないモノに!?」


「悪いな、サユキさん、料理下手なんだ」


「下手とかそういう次元じゃないでしょ!? 却下! こんなの食べるまでもないわ! あんたたちの負け確定よ!」


「おいおい、そりゃルール違反だぜぇデスエさん。ルールは相手の作った料理を完食し、札をあげてようやく決着だ。あんたはそれを完食しなけりゃ負けになる」


「なっ!? は、謀ったわね!?」


「謀るも何も、俺は最初から伝えていたつもりだがね。勝算はある、と」


「で、でも、そもそもこれが料理という保証がないわ。私を毒殺するつもりなのかもだし、それなら料理を作ったことにならないから反則負「食べて無事と保証されればよいのだろう?」んなぁ!?」


 デスエさんが何とか食べずに済む方法をと悪あがきしているので、俺はアイコンタクトを彼女に向けた。反則負け、とデスエさんが告げようとした瞬間を見計らい、ティリティさんがグラタンと呼ばれる冒涜的なナニカを試食する。


「うむ、全然食えるゾ」


「な、な……」


「ティリティさんが食べて無事みたいだし、これは料理だよな?」


 ちなみにティリティさん以外が食って無事かどうかの保証はしません。

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954.作った料理は完食すること 「食べて無事と保証されればよいのだろう?」 [703.自宅で打ち上げ 人間食から魔族食、線香、花の蜜、まっくろいナニカにエネルギ ーリアクターなどなど。] ゴ…
サユキさんの料理はあれだね 形容し難い何かが手招きしてステンバーイしてるんだね
さすが、隠し眼帯と首枷と手枷と足枷と腕枷と太腿枷と口枷と狐耳カチューシャと狐耳ヘッドホンと狐耳枷と狐尻尾枷を着けた何も見ることも聞くことも話すことも動くことも考えることも思うことも出来ない無口で無感情…
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