951.お料理体験デスゲーム
スクリーンに放映されている映像は今回入ったメンバーやサユキさんたち以外にも幾人かのグループがデスゲームに挑んでいるのが見えた。
その中に、なんか見覚えのある人物がいるね。
「デスエさん」
「なんですかぁ?」
「ここからグループに話とかできる?」
「できますけどヒントとか出されても困るんですが?」
「あー、そういうのじゃなくて、別グループに知り合いがいたので挨拶しようかなって」
「ふむ。まぁ挨拶だけならいいですよ。どこです?」
「九つある映像の右真ん中のやつ」
「こちらですね。じゃあこっちの映像も見せちゃいますね。あい、話できますよー」
突然声が聞こえたようで、画面の中のグループメンバーがざわつきながらこちらを見る。
「空飛ぶ茶碗さんと猫滅殺ワンコさんじゃん。二人とも知り合いだったんです?」
『ああ――――っ!! ヒロキ! 何でそこに!?』
『ヒロキさんもデスエさんイベントですか? これ意外と面倒ですよ』
二人はどっかのイベントからこっちに誘導されたようだ。
せっかくなので世間話、って、なんか向こうに余裕がなさそうだ。
『おい、話してる場合じゃねぇ! コロッケが来るぞ!』
『うわっ、ヒロキ、話はまた今度! 今は忙しいから!』
どうやら向こうはもう話してる余裕がなくなったようだ。
なるほど、このデスゲームは料理関連のデスゲームらしい。
ちょうど初心者向けのタツキ君たちが向かった場所では料理の基礎クイズが始まっていた。
所有時間は無限らしいので誰かが正解すればいい簡単なクイズ。
間違ったら罰ゲームがあるらしいけど。
あ、ダイスケが間違えた。その瞬間真上から胡椒がどさっと落下してくる。
うっわくしゃみ凄そう。
「うふふ。まずは味付けよねぇ」
罰ゲームからして、なんか嫌だな。
「アレだなダーリン。注文の多い料亭だか中華飯店」
「それを言うなら料理店な。ああなる程、確かにそれっぽいと言われるとそれっぽいな」
「なるほど、この攻略法を調べるために旦那様は私たちを残したのですね」
ん? あー。
「ウン、ソウダヨー」
「ふふふ。また一人調理完了ー。うふふふふふ」
一人、ミッション失敗でコロッケという名の巨大岩に巻き込まれて消え去った。
どうやら大玉みたいに転がって来るコロッケ避け損ねると、コロッケに埋め込まれて窒息死してしまうらしい。
なんという恐ろしいデストラップ。
「どうかしら? 私のデスゲームは!」
両手を開き、画面に映る阿鼻叫喚の地獄絵図を見せつけ、悦に入るデスエさん。
これ、どう反応するのが正解だ?
「初心者は失敗するほど下味を付け、中級者は篩に掛けて一級品を残し、上級者で最高級の食材たちを最高の料理器具で料理する」
「んで、生還者は誰もなし、か。やっぱり内部に入っての攻略はミスディレクションって奴だな」
「うん? ダーリンそれって……」
「ああ、このデスエさんの料理教室、あの扉を潜った時点で攻略不可能になるイベントだ。おそらくどんなに頑張ってもいつか死ぬように出来てる」
「あは! さすがヒロキさん! そこまで見抜いちゃうとか本当、デスゲーム委員会を滅ぼすだけありますね! 私もデスゲーム以外が趣味だったら貴方の傍で貴方を見つめ続けたかったです」
それはつまり、テイムされる気はないってことか。デスゲームが趣味でなければ、だからな。デスゲームが趣味なので俺にテイムされる気はない。ということだ。
「では、真なるデスゲームを致しましょうヒロキさん。私と貴方たちの四人だけで、殺し殺され調理し合うデスゲームを!」
「なるほど、本来であればデスエさんとデスゲームで勝利すれば彼らの解放に繋がる訳か」
「ええ、その通りです。仲間たちの死はさすがに嫌でしょう? 死人が出る前に、私を殺せますか? 私は当然、貴方たちを料理する気満々ですよ」
はぁっと物憂げな顔で息を吐くデスエさん。
久々に自分自身が表舞台に立ち命を懸けた料理ができると、気合十分で戦う気満々のようだ。
「ふむ。ちなみにそのデスゲームはどんなことをするつもりかな?」
「うふふ、当然料理に関する戦いですよ。あくまでもここは料理教室ですから。料理勝負を致しましょう。美味しい料理程高得点。相手の料理を食べて得点を自分で告げるの。それで得点が低い方の負け」
それ、審査する自分たちの匙加減次第じゃん。
勝たせる気一切ねぇな。
となると、やはりこれもミスディレクション。
デスエさんメインの戦いに乗った時点で勝ちがなくなる。
なるほどな。デスエさんの戦い方ってのがなんとなく見えて来た。
なら、俺がやるべきことは一つだけだ。
「んじゃ始めようぜデスエさん。闇のゲーム、起動!」
当然、相手の土俵に立つのではなく自分の土俵に引きずり込むのが必勝である。




