948.寄せ集めと精鋭と
「オラァ!」
キョウヤの乗るASの一撃。
拳を振り抜くものの、不意打ちではなかったからこそ、レムさんの乗る塵塚怪王が受け止める。
無数のガラクタが飛び散るが、反撃とばかりに逆の腕でASを殴りつける。
「ぐがぁ!? や、やるじゃねぇか!」
「むぅ、やはりダメージがデカいの」
そりゃダイレクトに響くもんな。もうちょっとダンパーか何か取り付けてダメージ緩和した方がいいと思うな。
これ、もしかしてキョウヤ、内部で血塗れなのでは?
そもそもついさっき復活したばっかならデスペナルティ受けてるはずだよな。
能力値半減状態であの巨大な塵塚怪王からダメージ受けるとか、下手すりゃ一撃レッドゾーンでは?
「しゃらくせぇ!」
凄いな。ダメージ受けてもものともせずに反撃してるぞキョウヤの奴。
巨大ロボット同士の激突は、そのまま拳の連打による互いの壊し合い。
壊れるペースは塵塚怪王が多い。もともとガラクタなのでこればかりは仕方ないのだろうが、レムさんが常に補強しているのでダメージ量はどう考えてもキョウヤのほうだろう。
ASべっこべこになってるし、なんというか見るも無残だな。
「こりゃすごい。でも負けるんじゃね?」
「戦力値計算の結果でハ、99%の確率でキョウヤさん死にマす」
だよなー。
つまり、一対一だとキョウヤは負け確定ってことだ。
「エルエさんが手伝うと?」
「勝率五割」
「なら仕方ない。シルビアさん、武器解禁。アイネさん、貰った装備早速使おう、フロルさんはかく乱、タヌメさんはあの一撃耐えれそう?」
「やってみるけど、無理だったら骨拾ってね」
「おーけー。んじゃ俺はいつも通りに遠距離攻撃で補助しますか」
早速エルエさんが真上に飛翔。全砲門を開いて塵塚怪王向けて一斉射。
「きゅいぃ!?」
「へっ、手伝いなんざいらねぇが、俺から意識離してんじゃねぇぞ!」
エルエさんに一瞬意識が持っていかれたことで、塵塚怪王の側頭部へと渾身の一撃。
「ふふふ。まだまだ行くわよっ」
ぎゅいいいいいいいいいいいいい
血桜持った瞬間水を得た魚みたいにシルビアさんが塵塚怪王へと襲い掛かり、足の一つを切断。
さらにバランスを崩しかけた塵塚怪王の残った一本足をフロルさんが舌を巻きつけ引っ張る。
倒れながらも近づくASへとなんとこ振りかぶった拳は茶釜さんに受け止められ、俺のレーザーでところどころ粉砕された塵塚怪王。そこへトドメとばかりにキョウヤ渾身のアッパーカット。
「これで、終わりだあぁぁぁぁっ!!」
塵塚怪王の頭部が爆散し、レムさんが空高く打ち上がる。
気が付けば、すでに夕方になっており、レムさんが茜色の空に馴染む。
落ちて来たレムさんをエルエさんが受け止め、俺の傍へと戻って来る。
シルビアさんはまだ雄叫び上げていたけど、フロルさんにより武器を取り上げられたことで鎮静化。
「タヌメさん大丈夫だったか?」
「ムリな体制からの一撃だったからそこまでダメージなかったよ」
皆集まって大団円。のはずなんだが、アインシュタイゼン博士が小首をかしげる。
「どうしたんすか?」
「うむ、なんでじゃろな? ASからの生体反応がなくなってもうたんじゃ」
「は? まさか! アイネさん確認を!」
「えー、またぁ?」
面倒、と言いつつも飛翔して確認に向かうアイネさん。コクピットを開いてしばし。
「真っ白、燃え尽きてる」
「キョウヤ……いい奴だったのに」
「なんじゃい、また死におったんかい」
「おそらく出血による継続ダメージでしょう。回復アイテムが底を突いていたのかも」
「ならしゃーないの」
それで済むのか……
「そうか、キョウヤの奴命がけでレムさん止めたのか。おいレムさん、分かってるよな?」
「きゅぅぅ……」
「せめてキョウヤの奴に謝っとけよ。お前の悪ふざけで死んじまったんだからな」
「きゅい!」
なぜか任せろ、とばかりにレムさんはアインシュタイゼン博士の元へと向かい、何か話始める。
「ほぅ! 良いのかね。いや、それはそれで助かるが……」
「彼の主武装はスコップらしいよ」
「きゅいきゅい」
あー、これ、もしかしたらキョウヤの武装、レムさん作成になるかも。
恐ろしい機構が入りそうだな。
まぁ俺のせいではないし、キョウヤの武装が強化されるから問題ないだろう。
お詫びも兼ねるだろうし、レムさんとアインシュタイゼン博士の合作か……
よし、見なかったことにしよう。
どうなっても俺は知らん。
「そんじゃ帰るか。さすがにこの時間だと別の場所には行けそうにないし」
「夜の時間ですしねー。また七不思議?」
「タヌメさんも来る? 一応大学の七不思議予定だけど。ゾンビが出るからシルビアさんは確定」
「そうだなぁー、どうしよっか」
「ゲェッコゲコ。どうせまた突発イベでおじゃんになるのよきっと」
うるさいフラグを立てんな。
 




