946.茶釜魔改造
ヒツギたちは企画室に置き去りにすることにして、俺たちは別の企画室へと向かう。
そこでは蛙娘と狸娘が白衣の男女と、相談中だった。
「あ、ヒロキさん!」
「もう戻ってきたのか。ねー、ご主人さん、これ私たちの企画書なんだけど、どう? 何か足りない気もするんだけど私たちじゃこれ以上意見がでなくって」
ほーん。どれどれー?
まずは蛙娘さんことフロッグガール。
早速取り入れられてるのが強化服。
ただ、手足が壁に貼り付けるのでここは生かすようだ。
簡単に言えば指ぬきグローブとかそんな感じで手足は素肌を晒すらしい。
普通の人間と違って軟体系生物なので伸縮性のある素材にすること、全身の可動速度を人間の物よりも優れた速度域まで調整できるようにすること、舌の補強方法模索?
まぁ蛙娘さんの攻撃方法なんてそれくらいしかないか。
とはいえ、それだと差別化も難しいよな。
んー。武器、武器ねぇ。
「蛙娘さんや」
「思うんですけど、せっかくテイムしたんですしもうちょっと可愛いあだ名付けてよヒロキさん」
「じゃあフロッグガール略してフロルさんで」
「う、うーん?」
「んでさフロルさん、舌は何か巻き付けて持ち上げることできんの?」
「とりあえず人くらいなら持ち上げられるよ? って、フロルさん確定なの!?」
あれ? なんか凄く嫌そう?
でもあだ名付けろっていったの君じゃんか。他に良い呼び方があるなら言ってみ?
「んー、ふろっぐ、ガール? 蛙娘……かえることかはありきたりだし……かえる、そのまま。かえむす? あー、私の名前良い感じのあだ名にならないっ」
諦めておくれ。名前についての怒りは運営にどうぞ。
「ま、名前はとりあえず置いといて、舌で何か持てるなら武器を舌で振るう様にすればいいんじゃね? 例えば麻痺毒付きの短剣とか」
「それ、間違って自分の口にしまって痺れる気がする」
実際やりそうだな。
自滅覚悟でやるのはさすがにどうかと思う。
「なるほど、その方法で武器を考えるとなると……」
「機構付きなら濡れ防止が必須か」
「いや、そもそも口にしまうことを想定しなければ普通に帯剣できるだろう!」
「別に剣にこだわる必要もないだろ。そうだ! 剣じゃなくていいんだ! 苦無でもいいし、あえて重量物のハルバードとかでもいいんだ!」
「なるほど、舌は細すぎるからそこまで重量物を持てないと先入観があったが、人が持てるなら50から80キロくらいまでの耐荷重があるということか!」
「スクラマサクスとかどうだ?」
「ブーメランもありじゃないか?」
「いや、モーニングスターだろ!」
ありゃー、科学者たちの火を付けちまったようだ。
「とりあえず今のうちに茶釜さんも見てみるか」
「あっれぇ、フロルは愛称貰ったのに私は茶釜なの!? 茶釜はこれのことなのにぃっ」
茶釜さんも名前が欲しいのかよ。
つっても狸娘さんか分福茶釜だろ。分福さんか茶釜さん敢えて分茶さんとか?
んー。あ、待てよ。ならこれでどうだ。
「狸と娘でタヌメさん、どよ?」
「お、おお。意外と捻られた! ふっふっふ、どうよフロルさん、私の方がなんかこう、特別感出たよ! ヒロキの特別な女、なんちゃって」
「別にそこは悔しくもなんともないんだけどね。それでヒロキさん、茶釜さんの「呼んでよ!?」タヌメさんの茶釜はどう?」
茶釜さん改めタヌメさんは茶釜という防具を強化することにしたようだ。
一応強度的にはアダマンタイトを使うのが一番らしい。
硬いのは良いけど、重量とかどうなんの?
「そこなんだよねー、問題は。正直重すぎて動けないと思うのよ。茶釜に顔とか全部しまっちゃえばほぼ確実にダメージゼロなんだけど、さすがにこれは拙いよね?」
「なんっつーか、どっかの清姫騙した坊さんみたいに茶釜の中で蒸されそうだな」
「こ、怖いこと言わないでくれる!? そうでなくても私のエピソード沸騰させられたそうになったんだから!」
そうだったっけ?
とはいえ、そういうことにならないように移動くらいは出来る方がいいよな。
あと耐熱系素材も使うべきだな。
ドレイクの皮を内部に張るとか。
「おー! そうか。金属でばかり考えていたが、鎧として考えるならば皮もありか!」
「いや、そもそも皮や金属にこだわる必要がないなら魔石を使う手もあるぞ!」
「待て、それを言うなら霊素を使う方法も模索できるぞ!」
「あーっと、他には移動できりゃいいんなら、もう全身動かすのは諦めてキャタピラとかの移動要塞にするのもアリかもな」
「いかん、創作意欲が高まってきた!」
「発明したいっ」
「俺に発明をさせてくれぇ!!」
うっわ、ハイペースでアルコール摂取したかのような盛り上がりだ。
血走った目で会議を始めた企画の悪魔共。
とりあえずフロルさんとタヌメさんを回収し、そのうち様子見に来ます、とだけ告げて後にする。
うん、こっちの話、一切聞いちゃいねぇ。




