941.科学の暴走の果てに
今、なんと?
俺たちの反応が薄かったのか。もう一度告げるアインシュタイゼン博士。
「シルビア嬢専用装備、トゥーハンデッドソード型チェーンソウアインシュタイゼン改式四号、通称【血桜】じゃ」
それは持ち手が両手剣のチェーンソウ。
何をどう考えたらこうなるのか意味が分からんが、ヘファイで頼んだチェーンソウは巡り巡ってこの研究所で謎の進化を行っていたらしい。
「まぁまずは手に持って貰いたい。周りの人間は距離を取るように。ひとまず訓練室に戻ろうかの」
そこで試すのが一番よさそうだな。
じゃあシルビアさん、行こうか。
「え、ええ、でも私近接武器より銃みたいな遠距離武器の方が得意なんだけど」
「安心せい、こいつは遠近両用じゃ」
オイ待て。一体どんな機構付けやがった!?
魔改造にしても程度がないか?
訓練室に向かうと、シルビアさんだけを中に入れ、指示出しを始める。
「ではシルビア君。まずは持ち手にある引き金を引きたまえ。これを引いたまま持っているだけでチェーンが回るぞ」
これ? とシルビアさんが持ち手にあるらしい引き金を片手で押さえる。
すると、ギュイイインとチェーンソウが稼働する。
これは酷い。
撃破用のドールが複数現れ、シルビアさんに攻撃指示が出る。
剣はド素人なので自分を切らないように気を付けて、と伝えて攻撃を見守る。
おー、ドールが豆腐のようだ。
金属系ドールも出てくるが、火花こそ散らしつつもぶった切っていく。
あの剣はヤバいな。相手の剣すら切断しそうなヤバい武器だ。
「うむ。剣としての能力は十分じゃの。では一度引き金から手を離したまえ」
引き金から手を離すと、チェーンの回転も止まる。
とはいえ、急には止まれないようで少しだけ回転を続けていた。
「では、横に倒して先端をドールに向けたまえ。それから柄の回転部を回して引っ張るんじゃ」
柄? と、持ち手の底が回転できるようになっているようだ。回すと浮き上がり、引っ張れるようになる。
それを引っ張ると、ガシャンっと鍔部分が持ち手へと変化。まさかのロケットランチャーのような持ち手に変化した。
「さぁ、引き金を引きたまえ」
言われるままにシルビアさんは引き金を引く。
すると刀身両側面から謎のレーザーが二連発射。
無駄に貫通力高けぇ!?
「反動も少ない。これ。凄く良い」
「連射も可能じゃ。少し時間は空くがの」
「うげ、これ魔剣になってる」
どうやら魔改造しすぎて魔剣になったようだ。
まぁドール相手にはダメージになるみたいだからいいけど、デメリットないんだろうか?
「ふふ、これがあれば……」
あれぇ、シルビアさんの目が怪しい光灯してないか?
これ本当にデメリットないの? マジで?
「さて、渡すもんはまだあるんじゃ。時間も惜しい、次に行くぞ次!」
シルビアさん行くよー?
「ヒロキさん、私もう少しこの武器使ってます。手に馴染ませたいので」
「ではそこのキミ、ドールの出現速度見ておいてくれたまえ」
白衣のお兄さんにここはお任せし、俺たちはアインシュタイゼン博士に再び案内されて別の部署へと向かっていく。
ここは……ダイルンバー君があった場所じゃん。
「今ここでは別のモノを作っておってな。あれが研究しているものなんじゃ」
あれは……パワードスーツ!?
「ふっふっふ。理解が早いのぅ。そうあれがパワードスーツじゃ。現実世界でもいくつか発明はされておるが、今回は着るタイプのパワードスーツ。今回作っているのはタイツ型じゃな。あれを着ることでレベル1の少年でもレベル50程度の実力で動き回れるんじゃ」
う、うん。凄いのはわかるんだがレベル250超えの俺らからすると、ふーん、あっそ。くらいの感覚である。
いや、凄いんだよ。アレ一つあればゲーム開始の俺でもハナコさん倒せる実力を持って安全に交渉できただろうからな。
その場合ハナコさん仲間になってくれない可能性もあったけど。
そう、あの時はレベルがハナクソ以下の俺が土下座でお願いしたからハナコさんが仕方ないなぁヒロキは。ってテイムされてくださったんだからな。
さすがハナコさん。慈悲深いハナコさんを思い出して俺はハナコさんへの愛を再認識したのだった。
「そういえばアインシュタイゼン、ワタシの何かしらはないの?」
あー、そういえばアイネさんだけ武器も防具も提案されてないな。
アインシュタイゼン博士もこれはしまった。みたいな顔をしてるので普通に忘れてたな。
「ま、まぁともかく、次はこれじゃ」
次に案内されたのは戦艦ドッグ。どうやら俺の目的のブツを見せてくれるようだ。
しかし、これは……
「どうじゃ? ええ船じゃろー船というか戦艦じゃがな」
そりゃ船を求めはしたけども。さすがにこれは想定外だ。いや、うん、えーっと。
「ふふ、皆迄言うでない。ちゃんと水陸両用、潜水機能もあるんじゃぞ!」
でもこれの用途、そっちはおまけみたいなもんだよな……まぁ、これなら十分だ。運転に関してはどうするべきか……あ、これ出来るかな。ちょっと彼女に尋ねてみるか。




