937.どの船で向かう?
夜、UFO内の自室でベッドに入って目を瞑る。
すると自然とドリームランドへと向かって目を覚ます。
寝ているのに目覚めているという謎感覚を覚えながら、ダイラス・リーンの宿にあるベッドで目を覚ました俺は、宿に併設されている酒場へと向かう。
朝食が出るので料理人のおっちゃんに注文して、しばし。
食事が出てくると同時に未知なるモノさんを筆頭に、皆がやってきた。
おお、マジでスパウさん来てるし。
「コトリさんがいない代わりにスパウさんだっけか。なんでいんの?」
「この肉は神の子である。ゆえに居る」
「アブホースの落とし仔だからな。アブホースって確か現実世界とドリームランドの中間地点辺りにいるんじゃなかったっけ?」
「あー、テストであったな。へー、今更だけどよ、どんな能力使えるんの?」
「未知なるモノさんと同じ?」
「あん? 同じってなんだよ? え。他人の能力覚えるのか?」
「うんにゃ、スパウさんは食べるだけ、だよな?」
「ん。吸収同化。全ては母なるアブホースへと還る」
「マジか……」
未知なるモノさんの場合、吸収したら自分のスキルになるんだけど、スパウさんの場合は普通に吸収するだけだから違いはあるんだけどな。
ま、俺らからすりゃ似たようなもんだ。
ちなみに、未知なるモノさんは物理攻撃喰らうけど、スパウさんは物理系全部吸収するから、そこも違うかな。
「えーっと、今日はどうするんです?」
「船が出航するようになってるはずだ。だからバハルナ行きかオリアブ島行きの船に乗せて貰おう」
「間違っても黒いガレー船には乗るんじゃないぞ」
「ヒロキよ、黒いガレー船はまだ月に帰って来ていないのだ。海の途中で行方不明になっているので新しい船を建造中らしい」
土星の猫がそんなどうでもいい情報を告げてくる。
そうかー。あの船一つしか持ってなかったのか月棲獣。
一応船自体はあると思うんだけど、まだルビーの中の何かが猛威を振るってるはずだから下手に近づかない方がいいと思うな。
「とりあえず船見に行こうぜ」
あ、未知なるモノさん、待って。せっかく朝食来たからこれ食べてからな。
「なんでお前だけ食ってんだよ!?」
一番最初に着たからさ。
まさかすぐに皆揃うとは思わなかったんだよ。
「む、ヒロキよ、そこのハム食べてもいいか?」
「一切れだけな」
俺だけ食べてるとさすがに申し訳ないというか、なんか嫌な気分になるので天王星の猫を巻き込ませて貰った。
しかし、ドリームランドの食事なのに、結構美味いよな。これどうやって脳をだましてるんだろうか?
もしかしてあの筐体、俺に内緒で同じ食事食べさせてたりしないよな?
つか毎度思うけど食事してないのにゲーム終わって現実世界戻ると満腹感があるんだよな。なんでだろ? まさかとは思うが俺が排出したアレを食べさせられてたりしないよな? 今度食事方法に関してちょっと調べておこう。
「うし、ごっそさん」
食事が終ったので食器をおっさんの元へと持っていき、俺たちは宿を出た。
まさか本当に俺の食事待ちになるとは思わなかったよ。他の誰も食べねぇでやんの。
ダイラス・リーンはけっこういろいろ回ったからな。
今更どこかに寄ろうとか思わないのでさっさと波止場へと向かう。
今止まってる船は、レモン色の帆を持つ象牙の船と、緑のガリオン船、あと黄金のガレー船もあるな。
他にもいくつかあるみたいだけど、とりあえず一つ一つ聞いていくか。
「あのー、すいません、これどこ行く船っすか?」
まずは白い象牙の船の近くに居た黄色い目の船乗りに聞いてみる。
「サルルブから来た。ワイン売る、サルルブ帰る。ワイン買うか?」
なるほど、この船はサルルブ行き、と。
どこよ?
多分オリアブ島内部にはいかないと思うのでワインは買わないと告げて別れる。
次は緑の船近くに居た船乗りに未知なるモノさんが尋ねる。
この人、白いターバンをしてるけど人間にしてはヤベェ顔だな。
落ちくぼんだ眼と幅が広く唇のない口、細すぎる手や首の船乗りだ。
話を聞くに、タラリオンやズーラという場所には行くらしい。どうやらオリアブ関連とは別口のようだ。
「すいません、オリアブ島に行きますか?」
次に向かったのは金色のぴっかぴかした船。
その船乗りに尋ねみれば、こっちはセレファイス行きの船らしい。
ほんといろんな場所に行く船があるな。
運がいいのか、セレファイス行きの船乗りさんにバハルナ付近に行く船が停泊する場所を聞くことが出来たので、俺たちは少し離れた波止場へと向かう。
どうやらこの辺りとは別の場所が停泊地になっているようだ。
バハルナやオリアブ島、専用地と思しき波止場には、青いガレー船や白い帆の帆船が停泊している。
どうでもいいけど最近の船はないのだろうか?
豪華客船とかドリームランドに在ってもいいと思うんだ。
タンカー船とか軍艦とかさ。なんでないの? 木造系ばっかじゃん。




