93.幽霊嫌いを克服したい1
「おい、ヨシキ、ヒバリ。ヒロキ見付けたぞ!」
美術室のドアを乱暴に開け、ユウが俺の襟元掴んだまま部屋に乱入した。
部屋にはう○こ座りしていた二人の男が驚きに眼を剥いていた。
「お、おぅ、ユウか」
「まぁ、ヒロキ! 何処に居たのよ、私たち凄く探したのよ」
「へ? いや、でも三人とも幽霊嫌いだからって別行動するんじゃ?」
「はぁ? ンなこたぁ一つも言ってねぇだろ」
「はぁ、やっぱり。私のせいで勘違いさせちゃったのね」
ん? どゆこと?
「あのなぁ、別に俺らは幽霊がいるからお前と行動しない、なんて言ってねーだろ。そりゃ個人で行動位はするだろうから個別行動すんなって訳じゃねーけどよ、一言も無く離れてくなぁ、納得できねぇな」
「え? え?」
「そうよ。私だって幽霊は苦手だけど皆で一緒にゲームプレイしたいって思ってるんだから」
「あーしらがヒロキだけ退け者にするわけねーだろ、あーしらを舐めんなよ?」
え? で、でもほら、俺を残して三人で……
『ヒロちゃん、確かあの時ってヒバリさんが気分が悪くなったから二人が連れて行っただけだったような……』
言われてみれば……
「あー。もしかして、俺の勘違い?」
「そういうことだよ阿保が。ったくこれだからボッチはよぉ」
ボッチじゃないしっ、ハナコさん居るしっ!
『ハナコさんは現実には居ないわよー、落ち付けヒロちゃん』
「で、でもほら、ヒバリさんは幽霊苦手でしょ? ただそこに居るってだけでもハナコさんやテケテケさんを敬遠してるわけで……」
「それなんだけど、丁度良い機会だと思うの。私も幽霊を克服したいわ」
克服って幽霊怖がるのは普通だと思うんだけど。
「現実のは無理でもゲームの幽霊は問題無いくらいにしたいのよ」
「こいつ、幽霊怖いってのに今回の肝試しイベント参加するつもりなんだぜ」
「まぁ、あーしらが付き添うんだけどさ。ヒロキも一緒に参加すんだろ?」
「あー、それが……脅かす側なんだわ今回」
「「はぁ?」」
どういうことだ、と詰め寄られたので簡単に説明する。
ハナコさんたちをテイムしたことで脅かす側に回ってくれと運営に言われた事を告げると、三人に驚かれた。
「いや、プレイヤーなのに脅かす側って」
「え? でも俺のことは結構掲示板で噂になってるぞ?」
「俺らがそんなもん見るタマに見えるか?」
「うーん、掲示板はこまめにチェックした方がいいかもしれないわね」
「そうみたいだな。ちなみに何処の掲示板?」
「え? えーっといろいろあるけど今はほら、イベント用の掲示板立ってるだろ。あそこの最初に書かれてるよ、未知なるモノさんが報告してたかな?」
「未知なるモノ?」
「あー、っと、ゲーム中に知り合ったフレンドだよ」
「マジか、お前フレンド居たんだな」
ユウさん失敬!?
「とりあえずよぉ。俺らと別行動してた間、お前何してたんだ?」
「え? なんかいろいろ? 動画は見てないのか?」
「あー、俺ら今ヒバリの克服に付き合ってるんでな、他の事放置なんだ」
「寝て食事して必要最低限の生活だけして他はゲームだからな」
廃人かよ!? 俺もだった!?
「折角だし、話聞かせろよ」
寺に行こうかと思ってたんだけど……まぁ、いっか。
さすがにう○こ座りは俺には無理なので椅子を用意して話合いに参加する。
「最初はほら、ヒバリさんが保健室に行ったことで俺一人になっただろ」
「ええ。悪かったわね」
「いやま、それはいいんだ。その後暇してるならかくれんぼしないかってNPCの朱莉って子に誘われてさ」
「ん、朱莉って佐島のことか? あいつモブじゃないのか?」
「モブっていうかどうも彼女は特殊AI持ちみたいでさ、まあ暇だったからOKして、放課後までの時間潰しに神社に行ったんだ」
幽霊が出て来た話になると少し顔を青くするヒバリさんだったが、あの時ほど劇的な変化はなかった。多少なりとも耐性が出来てきてるのかもしれない。
しかし、この三人から離れてからほんと怒涛のイベントラッシュだったなぁ。
「いや、お前、どんだけイベントに巻き込まれてんだよ!?」
「普通じゃないわ。ええ、普通じゃないわ」
「どこをどうやったら廃トンネルで高レベルボス撃破できんだよ!? まだ他の奴らも10届いてねぇんだぞ!?」
あれ? そうなのか? 俺が出会ったメンバーは10レベルは越えてたぞ。未知なるモノさんもすでに20くらいになってるだろうし、マイネさんも15は越えてるんじゃないかな?
俺? 俺はあのボス戦終えたからなぁ……36になってる。
んー、微妙? 相手のレベル65だったし、もうちょっと、40越えくらいでもいいような?
もしかしたら貢献度で経験値が割り振られるのかも。ごっそりタヂさんに経験値持ってかれたかもしれん。ま、いっか。




