934.全開放
最後の二人もフルボッコで勝利した。
これで全クリできたわけだけど、どうなる?
一番最悪なのはクリアと同時にプレイヤーが引き込まれて新しいボスに君臨させられるパターンだけど。
たぶんこいつは負けたら取り込まれる方だと思うので、勝ったらダメ、ではないと思うけど。
最悪九字切りしながらお焚きあげで呪物昇華させるしかないけれど……
「ヒロキ、画面が!」
「なにっ!?」
画面が光り輝く。
次の瞬間、光が部屋全体に広がって……
やべぇ、これまさか、勝利したら部屋全体にいるメンバー取り込むタイプの……
……
…………
……………………
視界を覆う光が消えていく。
そして光が収まった先にいたのは、レムさんとギーア、そして、ユウキさんと抱き合うサユキさん。
さらに顔の腫れあがった未知なるモノさんと痣だらけの格ゲー少女、そして今まで敵として出て来た八人の男女。それから、困った顔のコトリさんとぺたんと座り込んだ少年がいた。
うん、情報量が多い。
今まで捕まってた人全員が飛び出して来たってことかな?
他のテイムキャラたちもさすがにこれは想定外だったようで、なぁにこれぇ。とか宇宙猫みたいな顔をして彼らを見つめている。
「あー、その、説明できる人」
「ふぇ……出られた? 出られたぁ」
コトリさんの傍にいた少年が突如泣き出す。
敵キャラだった八名が彼に近づき良かったな。と声を掛け合っている。
うん、だから付いていけないんだって。
イベントの始まりはどこですか? できればあらすじとかくれませんかね?
俺には何が起こったかすらわからないんだけど。
ほら、サユキさん、ユウキさんと戻ってこれたこと喜んでないで教えてくれない?
あ、とりあえず未知なるモノさんたちに回復薬あげないと。
なんか凄い顔腫らしてるし。これって敗北した顔のままって奴だよね。双方一回づつ敗北してたし。
プリレッドさんが代表して回復薬を持っていく。
二人が受け取っている間に、俺はコトリさんへと歩み寄る。
「テンソウメツはどうなったの?」
「それがですね、どうも今回は悪意ある呪詛ではなかったようで。私と取引して私が勝ちましたのでこうして全員解放させました。ただ、この先どうしたものか」
うん、俺はそっちの話を知らないから何がどうしてこうなったのか全く分からないんだ。
誰か詳細を教えてくれよ詳細を。
なんでそこを秘匿してんの。自分たちだけで分かったようにしないでくれない!?
「ふはぁ、体が動くっていいなぁ」
「他人に動かされてるの、凄く嫌でしたね」
「つか、ヒロキ、最初の三戦やってた奴誰だ? 俺の動かし方めっちゃくちゃ下手だったんだが」
うぐっ。
「さー、誰だろうね」
「今の態度で分かったわ。お前だろ。ったく、マジ死んだかと思ったぞ」
「途中から動き良くなりましたけど、アレ最初からダメだったんです?」
「ああ、レムさんがその気にならなかったのと、ギーアがやり方覚えるまで時間かかったんだ。あの二人のおかげでクリアできたんだけどな」
「マジかよ」
「レムさん、もうちょっと早く手伝ってくれればよかったのに……ええい、もふってやる」
格ゲー少女が恨みを込めてレムさんをもふりだす。
レムさんがやめろーっと逃げようとするが、しっかり拘束されてもふられまくっていた。
だから最初から手伝ってくれればよかったのに。
さて、とりあえず泣きまくってる少年が今回の騒動を起こした奴っぽいけど。
どうにも敵意も殺意もないんだよなぁ。
取り込まれてた人たちもなんか少年君を慰めてるし、敵対してるって感じじゃないんだよな。
とはいえ、状況判断以外の情報がないので動くに動けねぇな。
とりあえずこれ以上状況話してくれないならレーザー銃であの小僧の額撃っちまうか。
情報寄こさない方が悪いんだし、とりあえず敵を殺しとけば致命的な失態にはなるまい。
アイテムボックスの銃を取り出そうとした時だった。
あ、っと八人組の一人、ウルトラハードモードのおっさんがこちらに振り向く。
「説明が未だだったな。せっかく助けてくれたのにすまない」
「ああいや、できればもう少し早く状況説明が欲しいところだね。俺たちも敵としてその少年を倒すべきなのか味方として接するべきか判断が出来なくて、暴走する前でよかったよ」
『ヒロキのことだしとりあえずレーザーで撃ち殺しとけとか考えてたかもだしね』
ははは、ハナコさんったらお茶目さんだなぁ。そんな酷いことするわけないじゃないですかー。
俺ってばとっても我慢強い子ですよ。ハナコさんに待てと言われたら何年だってその場で待ちますって。それくらい我慢強い俺がこのくらい放置されたからってレーザー撃つわけないじゃないですかやだー。
「あー。これはヒロキ撃つ気だったわね、ぎりぎりセーフだったんじゃない」
あれ? テケテケさんまで、俺の信用無くね?




