933.意外な助っ人
「うおぉ。不味い、マジ不味い!?」
敵が無駄に強すぎる。
何だあれ、ハメ技で倒そうとしたのに途中で抜け出してからの反撃が鬼だぞ。
ぎりぎり倒れたおかげで追撃がなかったけど、これで起ったら勝てるかって言うと一撃先に入れた方の勝ちになる。
すでに双方レッドゾーンのHPなので立ち上がった瞬間の攻防が命だ。
「クソ、やってやる!」
立つと同時にしゃがんで中キックを……読まれた!?
あ、不味い、これは反撃が……未知なるモノさん、ごっめーん!
ぼっこぼこにされる未知なるモノさん、後で絶対怒られるっ。
敗北しちまったよ、どーすんだこれぇ。
って、勝ちポーズしてた相手に格ゲー少女の必殺技がクリーンヒット。
おお、エルエさんもう一人の相手倒してたのか!?
そうだよな、これ2対2のタッグバトルだから俺が負けてもエルエさんが勝てば勝ちになるのか。
あっぶね、俺だけだったら今ので敗北確定だったじゃん。
一度負けたらどうなるのかわからんからここで負けるのはちょっと不味いぞ。
ただ、今回で三回戦。残りウルトラハードとルナティックな激戦が控えている。
勝てるんだろうか?
なんかもう次の対戦で瞬殺されて2対1の戦いをさせられるエルエさんがフルボッコされる未来しか思い浮かばねぇよ。
「これ以上は、勝つの無理じゃね?」
「あまり言いたくありマせんガ、私もそう思いマす」
エルエさんは相手の動きをトレースしながら戦えるだろうけど、相方が俺だとちょっと無理だな。
俺が戦えるのはハードモードまでだ。これ以上は負ける。
しかし、イベントは既に動き出している。
こっちがコントローラー握ってなくても会話パートが勝手に進んでいるようだ。
もうすぐ四回戦目の戦いが始まっちまう。
このままじゃ未知なるモノさん敗北エンドで終わりだ。
その後、あの二人がゲームに取り込まれたら、次はゲームをプレイしてた俺たちになるだろう。
コトリさんの捕食は間に合わないのだろうか?
「クソ、もう戦闘シーンに入った。ここで負けちまうと未知なるモノさんたちが……」
せめて向こうで自由に動けるようになればまた違った戦闘結果にもなるのだが……
「ぬおぉ!? 開始から連撃だとぉ」
あ。ダメだコレ、おっさん強ぇ。
隙が一切ねぇ。
ただのサラリーマン風のおっさんなのに歴戦の強者じゃねぇか。
「ギーァ」
不意に、俺の手からコントローラーがひったくられた。
なんだ? っとそちらを見れば、コントローラーを地面に置いて、鎌の両手と足を使ってボタンを押し始めるギーアの姿。
え、おお? マジか!?
連撃を受けて浮き上がった未知なるモノさんが上空で復帰、からの反撃を加えて逆に連撃を叩き込む。
え、マジで? なんか一気にハメ技決まりまくってんだけど。
あ、やべ、エルエさんが負けた!?
って、こっちはギーアが勝った!?
どっと1ミリの体力で辛勝かよ。
お前すげぇな。でもまだ一人残ってんだ。
残った二人が戦闘開始。
ギーアのコントローラー捌きで未知なるモノさんが奇怪な動きをし始める。
おお、なんかすげぇ、相手動きが読めずに困惑してるみたいな動きになったぞ。
入った!
最初の一撃が入れば後はもう連撃だ。
ギーアもそれが分かってるのか一気に仕留めに掛かる。
「おおお! ギーアやった! ノーダメージで勝てたぞオイ!」
「ギーァー」
それほどでも、っと照れるようなギーア。
予想外の助っ人がいてくれたもんだ。
おそらく俺たちのコントロール捌きを見て技の出し方などを覚えてくれたんだろう。
ここにきてルナティックモードで戦えそうなメンバーが出て来てくれた。
ただ、エルエさんは負けちまった以上これより強い敵が出てくるルナティックでは敗北が決定したようなもんだ。
「ギーアがいてくれれば一人は倒せそうだが……」
「きゅい」
と、これ以上は無理かも、と皆沈痛な思いを抱いていたところに、レムさんがようやく動き出す。
仕方ないなぁとぱたぱたやってくると、エルエさんからコントローラーを奪い取った。
最後だけはやってやるよ。とでもいうような態度だが、機械得意なレムさんならば!
「頼むギーア、レムさん。二人の力を合わせて最後の一回戦、勝ち抜いてくれ!!」
イベントパートが終り、最後の敵が……って、なんでユウキさんとサユキさんやねん!?
「ここまで来るとはさすがやな、じゃねぇ! なんでお前ら敵になってんだよ!」
「あはははははは、これはさすがのおねーさんも想定外だわ」
皆爆笑してる場合じゃないよ!?
「ええい、ギーア、レムさん、遠慮は要らん、ボッコボコにしてやりな」
「きゅい」
「ギーァ!」
敵の動きは一番強いはずなんだが、ギーアとレムさんのタッグには物足りなかったようだ。
まさに文字通り、フルボッコでノーダメ勝利を見せつけるのだった。




