932.トレースでいいからやってくれ
「ふむ、では儂がやろう」
あ、稲荷さんは却下で。
「なんでじゃ!?」
「虫相撲に続いて機械系対戦全部弱いじゃん。格ゲー少女というかなり強そうなキャラなのに稲荷さんが操作したら敗北の二文字しかチラつかないんだよな」
「酷くない!?」
『酷くはない、事実、ねぇお姉ちゃん』
『えーっと、そう、かなぁ。稲荷さんゲームはあまり得意ではない、よね』
『ハナコ、そこはバシッと言ってやった方がいいわよ。稲荷弱いじゃない』
「ヤミコとブキミはハナコお姉様の遠回しなやさしさを見習うべき。それでヒロキ、誰が手伝った方がいい?」
「そりゃ一番格ゲー上手いメンバーがいいんだけど。まずゲーム得意なメンバーいる?」
俺はテイムメンバーを見回す。
ゲームが得意なメンバーは……
「散紅さんとか?」
「私が得意なのはカードゲームとかのゲームね。テレビゲームは普通よ?」
「じゃあ芽里さんとか?」
「人形の扱いは得意だけど、そういうのは指の使い方より判断力でしょ。私は苦手かなぁ」
「一人系のゲームは好き、対戦は無理」
芽里さんもナスさんもだめか。
ゲームなぁ……
あ、そうだ。機械系だしレムさんは?
「きゅぃ?」
あ、凄く面倒くさそう。
こりゃやる気はなさそうだ。
こうなるとゲームに強そうなメンバーがいないな。
んー。あ、そうか。機械ならばゲームも強いんじゃないか?
エルエさん、頼めるか?
「触るのは初めてですが、ひとまずマスターの動きをトレースしてみます」
それはいいけど技の出し方は多分違うから気を付けてね。
よし、ひとまずエルエさんと二人でやってみよう。
と言っても俺も格ゲーはあんまりやらない方だからな。
やっても基本ハメありのゲームだな。
可能ならエルエさんには格ゲー少女かサユキさんのトレースしてほしかったんだけど、さすがに無理だよなぁ。
ほんと、一番得意な奴らがゲーム内に取り残されてるとか意味が分からん。詰んでんじゃねーか。
コトリさんが食い切るまで生存させとくのが一番楽かもしれんな。
ふむ。ゲーム内の未知なるモノさんたちは俺らがカーソール移動させることで移動できるようだ。
つまりコントローラーがなければ場所移動すらできない状態らしい。
戦闘シーンまでの移動も俺らが動かすのか。結構面倒そうだな。
えーと、このゲームからすると、サユキさんたちを助けるには未知なるモノさんたちを使ってイベントを進め、対戦者10名と戦い勝ち上がらないといけないのだとか。
とはいえ、一回の戦いで二人と戦うので実質的な戦いは五回。
意外と少なくてびっくりだ。
さぁ。まずは一回戦だ。
対戦相手は……眼鏡のひょろ長いお兄さんと、気が弱そうな少年だ。
これはさすがに弱いんじゃないか?
負ける気がしねぇな。
早速対戦が始まるが。
敵が殆ど攻撃してこない。
基本無様な防御ばっかりしていて、たまに破れかぶれっぽい動きで攻撃してくる。
落ち着いて対処していけば負けることの方がありえないくらいのザコだった。
俺も、俺の動きをトレースしているエルエさんもそこまで苦戦することなく相手をボッコボコにしていく。
やっぱり弱いな、抵抗らしい抵抗もなくて拍子抜けするくらいに勝ってしまった。
何かしら変なイベントでも始まるか、と思ったんだが、何の進展もなくイベント進んだな。
二度目の戦闘が始まった。
今度は一般的な成年と女の人だ。
それなりに強くなってるようで一般的な成年は普通に強かった。
なんとか勝ったけど少し間違ったら負けててもおかしくはなかった。
最初がイージーモードなら今回のがノーマルモードと言ったところか。
女性の方はエルエさんにお任せしたけど、遠慮なくボッコボコにしちまったな。
これってもしかしてだけど、徐々に難易度上がる感じか?
ノーマルで今のだと次はハードモードだよな。
勝てないんじゃねぇか?
ちょっと今のでもヤバかったんだけど。
と、ともかくイベント進めよう。
というか、このイベントも結構意味不明だな。
こっちはサユキさんたちの解放について聞きまわってるのに、相手は多分決まった文句しか言えないんだろう。
まったく見当違いの話を始めて戦闘が始まるのだ。
いきなり戦闘画面に切り替わるせいでちょっと焦る。
前回もそれでいいの一発貰っちまったからな。
「エルエさん、使い方わかった?」
「ある程度、出来マす」
「じゃあ俺のトレースは終わりで。この先はちょっと負ける可能性もでてくるから、同程度の実力だとちょっと不味いかな」
「了解、独自昇華、してミます」
これで勝てればいいんだが。さすがに次を越えたら残りの2ステージは無理かも。
俺の実力じゃ格ゲーはハードモードまでくらいが限界そうだな。




