926.対決暗黒大魔王軍6
「くはは、随分と苦戦しているではないか、アルセーヌの!」
「く、貴様のようなパワー馬鹿はどれほど策を弄しようとも打ち破って来るから好かん」
「相性が最悪だと良く言っていたな。まさしくその通りだった訳か!」
「粗暴な輩の相手は疲れるんだ。そろそろ死んでくれ」
「死にそうなのは貴様であろうが」
カルカさん、だいぶ追い詰められてるな。俺たちが辿り着いたことすら気付いてないっぽい。
しゃーない。スレイさん、頼める?
「任せろダーリン。馬鹿な姉は妹が何とかしよう」
クラゲ特有の触手を伸ばし、暗黒大魔王軍首領から距離を取ったカルカさんを背後から絡め捕る。
「なっ!?」
驚く彼女を強制的に撤退。
首領さんの追撃が来るが、それより早くカルカさんを回収する。
「ふむ。せっかくの一対一に介入するとは野暮な奴らだ」
「なぁに、勝負が分かっちまったもんを長々続けても意味がないだろ。あんたの勝ちだ。あんただって理解は出来てたろ」
「……はぁ、理解は出来ていても達成感と言うものがある。それと、途中で奪われるというのは如何ともしがたい」
「だったら……レイドバトルってのぁどうだい? あんた一人に群がる敵、倒し切った達成感はカルカさん倒すよりすげぇだろ?」
言われ、首領が見渡せば、倒したはずのプリピュアたちが復活していた。
中心には少年が一人。不敵な態度で挑戦的な笑みを浮かべている。
まぁ、俺だ。
「おいおい、やってくれるなクソガキ」
「そりゃご丁寧に周囲に倒されたまま放置されてたらよ、回復してくださいってなもんだよな? 悪の首領さん、敵はトドメを刺しとくもんだぜ?」
「くっ、言いおる。次からはそうさせて貰おう」
「んじゃま、暗黒大魔王軍首領、正義(物量)の力を見るがいい! 総員、ぶっ倒せ!!」
俺の号令が開戦の合図となった。
復帰したプレイヤーたちが突撃し、ウチのテイムキャラたちも支援攻撃を開始する。
すでに一度敵対したことで相手の攻撃パターンなどを把握したプレイヤーだ。ただただゴリ押しパワータイプの首領の攻撃など楽々……ではないけどしのげている。
「おお、戦闘中!? ヒロキ、遅れた!」
「芽里さんおっつー。今始めたとこだから遅れてないぜ」
分かれたままだった芽里さんたちが合流する。
おかげで攻撃や防御の層が厚くなった。
「ぐぬぉぉぉ!?」
「主様、肉到着」
「スパウさんお疲れ。戦闘楽しめた?」
「沢山食べた。この肉満足している」
そりゃあよかった。今回は近接特化の戦いだけどスパウさん過剰戦力になりそうだから、俺の傍で見学してて。うん。ヤバそうなら手伝ってくれていいけど、さすがにこれだけいれば大丈夫っしょ。ヤバいのもそろそろ来るし。
と、思った次の瞬間、ずどんっと通路から怪人さんと思しき物体がマンホールと共に飛んできて壁にめり込んだ。
「楽しそうじゃないヒロキ! 私も混ぜなさいよ!!」
「来たよバーサーカーマイネさん。ほら、あそこにいる巨漢がボスだって」
「おーけー、私の獲物じゃーっ!!」
あー、やっぱ特攻しちゃった。
あの人ほんとヤバくなっちゃったなぁ。
なんであんな危険人物になっちまったんだ。
「くたばれボスキャラァ!!」
「ええい、うっとおしい! 羽虫共が群れおって!」
いやー、しかしマジでレイドボスじゃん。
カルカさんよくあんな化け物一人で押し留めたな。
「ん?」
何の音だ?
戦闘音に交じって何か近づいて……
首領さんの頭上が爆散。天井を割り砕き、ヒュドラ男爵が降って来る。
あー、首領の振るった斧に真っ二つされちまった。タイミング悪すぎ。
「おお? ここでも戦いか?」
「アイネさん!?」
どうやらアイネさんの蹴りで地中突き破ってここまで到達したらしい。
彼女の特殊スキルだろうか? 遅れたように、穴からヘンリエッタさんたち地上討伐組も合流してくる。
「こりゃ総力戦だな」
「主様は戦わない?」
「つってもなぁ。ここからレーザー撃つくらいだぜ?」
「ぬお!? しまっ」
ありゃ、適当に撃ったレーザーのせいで首領さんの態勢崩れたな。
あー、そりゃチャンス到来だよな。一気呵成に攻め立てるよね。
マンホール痛そう。
「くたばれボスキャラァッ!!」
マンホールの連撃に首領さんはなすすべがない。
体勢を立て直そうにも他の皆が体勢崩しに専念したせいでマイネさんの連撃を喰らいまくっている。
まさに数の勝利だな。もう首領さんに何もさせないつもりだわあいつら。
「皆!」
「レッド、分かってる!」
「行くよ! 五人のプリピュアが集えば、どんな敵だって負けやしない!」
「「「「「マーブルピュアリアブラスター!!」」」」」
「お、おのれ、おのれプリピュア―――――っ」
「じゃかましっ」
あ、必殺食らう前にマイネさんの一撃で体力ゼロになったぞ!?




