925.対決暗黒大魔王軍5
「っと、そうだった、大丈夫かイエローさん?」
「は、はひ……」
さすがに驚いたのだろう。俺に抱き留められたままだったイエローさんは身を縮こませたまま硬直していらっしゃった。
危険がないのを確認してから彼女を起たせる。
一人で立ってからもしばしぼーっとしていた彼女だが、そんなにびっくりしたのか。
でも、精神立て直さないと、今は敵陣だぞ正義の味方。
「こ、このスケコマシが!」
「あうちっ!? パープル君何を!?」
「天然なのかワザとなのか、ええい、とりあえず反省しろ反省!」
えぇ。じゃあその……反省。
片手をパープル君の肩に乗せ、頭を下げる。
「猿回しの反省じゃないんだよ!?」
「ちょっとダーリン、遊んでないで先行こう、戦闘員が絶え間なく来ちゃうから!」
「それもそうだった。イエローさん、行けるか?」
「へ? あ、はい! イケまひゅっ!」
ようやく精神が戻ってきたようだ。慌てて周囲を見回しながら付いて来た。
よし、そんじゃ行動再開といこうか。
壁の要所要所から敵が出てくるから今までより気を付けて移動するように。
っと、ほら来た!
ま、彩良さんが楽しそうに切り裂いてるけど。
彩良さん一人で何とかなるので俺たちの参戦する余地がないんだよな。
「お、出たぞダーリン、広間だ!」
確かに広間だけど……先行部隊と戦闘員が乱闘中じゃん。
結構な数の戦闘員いるし、モンスターハウスみたいに戦闘員が待ち構えてたんだろうな。
あ、マイネさん発見。
「あー、多分ここの獲物取るとマイネさんが敵になりそうだから素通りしよう」
「それはありそう」
「あの人危険人物過ぎないイエロー?」
「前はここまでおっかない人じゃなかったんだよ。うん」
何かが彼女を変えてしまったのさ。全く、誰だろうね、マイネさんの根本変えちまった罪深い野郎は。
俺たちは横目で激戦を眺めつつ、さらに奥へと続く通路へと向かう。
しばらく奥へ向かうと曲道。
どうやら一度別れた向こう側と繋がっているようだ。
ただ、分かれた芽里さんたちがここまで来てるわけではないようなので、実際に向こうと繋がってるかは不明。
ともかく、合流地点の後、中央にさらに奥へと続く道が存在している。
おそらくこの先が……
「どうする、イエローさん、パープル君。この先に進むか、皆の合流を待つか」
「そんなの」
「行くに決まってるだろ」
ですよねー。俺的には皆が到着してからの方がいいけどね。
少人数で先行したら負ける可能性が増える訳だし。
ま、最悪の想定はしてあるから、行くだけ行ってみようか。
奥へ奥へと向かっていくと、再び広い部屋へと辿り着く。
スポットライトか? かなり眩しいな。
野球のナイター用にでも使いそうなライトがいくつも壁に取り付けられており、床に倒れた複数名を照らしていた。
「レッド!?」
おいおい、まさかプリレッドさんたちが先行してたのかよ!?
すでにここまで辿り着いていたプリレッド、プリブルー、プリグリーンの三名、シルビアさんにメリッサさんも倒れてるな。あとはプレイヤーか?
どうやらスパウさんやスキュラさんは事前の広間で乱戦中のようだ。
今ここで戦闘中なのは、カルカさんと謎の巨漢。
二メートル越えのマッチョ型生物は、将軍というべき言葉が一番似合うような鎧を身に着け、曲刀を振り回しながらカルカさんと激闘を繰り広げていた。
「これは……」
「皆っ」
止めるまもなくイエローさんとパープル君がレッドさんたちの元へと駆け寄る。
イエローさんに抱きかかえられたレッドさん、力なく微笑む。あ、一応意識はあるのか。
「イエ……ロー?」
「レッド! 大丈夫!?」
「ごめん、負け、ちゃった……」
「謝らなくていいよ! それに、まだ、まだ負けてないからっ。プリピュアはまだ、負けてないんだからっ」
いや、でも、全体の半数が戦闘不能じゃさすがに難しいと思うよ。
この状況からしてアレが暗黒大魔王軍の首領さんだよな。
つまりカルカさんと首領同士の頂上決戦中なのか。
若干、重量級パワーに押されてるかな。カルカさんの方が不利か。
おそらく相性的な問題だろう。
パワーゴリ押しの首領さんに対してカルカさんは軽業系だからな。防御ゴリゴリの奴に対して防壁を崩して倒していくタイプなのでパワータイプは苦手なのだ。
「姉上ー、手伝いいるかー」
「そこで見ていろ!」
いらないらしい。
まぁ負けても死亡扱いになるだけだし。しばらくしたら家に復活するから問題はないんだが……
とりあえずこのままってのは面白くないな。
んじゃま、介入すっか。
「イエローさん、はいこれ」
「え? な、なにそれ?」
「いいからレッドさんに飲ませて。パープル君もほら、ブルーさんによろ。俺はグリーンさんにっと」
当然、前々からドロップとして集めていた回復薬を振舞う。
味方の回復とか、当然ですよね。




