924.対決暗黒大魔王軍4
だいぶ広い道になったな。
どうやら奥へ行くほど広くなっていく構造らしい。
今では普通の通路なのに横に三人並んでもまだ余裕があるくらいだ。
「皆急いで走ってるのに、僕ら歩いてていいの?」
どうやら少年だとバレたパープル君は唯一の男性仲間ということで俺に遠慮なく話しかけるようになったらしい。
容姿に対して馬鹿にしたりしなかったことで一定の信頼を得たモノと思われる。
いや、うん、普通に似合うと思うよ。
たまには魔法少年が居てもいいと思うよ、うん、別にそれは気にしない。
正義の味方だしね、俺は尊敬の念を送るよ。
「ダーっ」
戦闘員が複数、前から駆けてくる。
でも前からだしなぁ。
彩良さんが笑いながら鎌振るって狩り取っていくのを見てるだけになりそうだ。
ナスさんとプリイエローさん、プリパープル君、スレイさんが何とも言えない顔で彩良さんを見ているが、仕方ないじゃん。彼女今まで特攻出来る機会なかったわけだし。
唯一といえばこの前のイベントでプレイヤー相手にはっちゃけた時以来だぜ?
「ダーリン、後ろから後続追いついてきたぞ?」
「お、ほんとだ。やっぱりゆっくり歩いてるから追いついて来るよな」
しかし、先行部隊はどうなったんだろうか? 前から戦闘員が来たわけだし、どっかで戦闘員を見逃していったのか、あるいはどっかで戦闘員湧きポイントでもあったか。
ほら、また追加の戦闘員が……飛んできたマンホールに引き裂かれた!?
「あははははははは! もっとだ! 私にもっと戦場をぉぉぉ!!」
ば、バーサーカーマイネ!?
「ひゃはははは、行くぞ野郎共! 逃げる戦闘員はただの戦闘員だ! 逃げない戦闘員は殺しやすい戦闘員だぁヒャッハー!!」
ダメだ、ありゃ近づいただけでこっちにまで攻撃してくる戦闘狂だ。通り過ぎるまで待っておこう。彩良さん戻ってきてー。
ブレーキやら何やらを壊してしまったらしいマイネさんとお付きの三人が通り過ぎるのを待ち、俺たちは再びゆっくりと行軍する。
キカンダーさんたち頑張って。
ただ、しばらく行くとやっぱり戦闘員がやって来る。
やはりどこかでわいて出て来てるな。
彩良さんが楽しそうだからいいけども。
「暇……」
「ナスさんも暴れてく?」
「ううん。別にいい。ただ……さっさと帰って人形作りたい」
なるほど、無理矢理連れ出したもんな。ごめんよ。
「構わない、こういうイベント、構われてる内は、楽しい」
ぼっちはこういうイベント参加してても一人になってたりするもんな。
「じゃ、ぜひ俺の傍にいて話し相手になってくれナスさん」
「お、う、うん……」
あれ? なんか俺変なこと言った?
「お前……それ恥ずかしがってんじゃないか?」
パープル君が遠慮がちに言う。そうなのナスさん? あ、そっぽ向いちゃったじゃん。もしかして怒らせた!?
「いや、怒らせたっていうか、うん、まぁ、女ったらしだってのは理解した。イエロー、この男には近づかないように」
「あはは、心配性だねーパープルは。ねースレイちゃん」
「いやー、ダーリンの女好きに関しては何も言えん」
おいスレイさん!? 無類の女好きみたいに言わないでくれます!? 俺はただテイム出来るメンバーをテイムしてるだけだからな。
「ちょっとヒロキ君、なんか変なの来たよ!」
彩良さんがバックステップで戻って来る。
何が……おお、ありゃドラゴンか!
「ワイバーン子爵である! これ以上の狼藉は許さんぞプリピュア!!」
「子爵級が出て来た!?」
「早速だけど、ナスさん!」
「もう終わってる」
ナスさんが指先をぴんっと弾く。
張り巡らされた糸が動き、ワイバーン子爵が細切れになった。
「へ?」
「えぇ!?」
「さすがナスさん……悪魔は伊達じゃないわね」
プリピュアの二人があっけにとられ、彩良さんが戦慄する。
ナスさんはこれでも地獄で有名な悪魔だからな。
英雄何体も屠れる実力者だからこの程度の敵は朝飯前。まさに赤子の手をひねるようなもんですよ。
「んじゃま、進むか」
それにしても敵の出現状況どうなってんだ?
どっかに出現地点があるはずだけど……と、思った時だった。
通路の一部が開かれ、怪人さんが……
「「あ」」
出会いがしらにプリイエローと顔を付き合わせたのは熊顔の怪人。
とっさにイエローさんの首根っこを引き寄せ抱き留める。
逆の腕は即座にアイテムボックスからレーザー銃を取り出し照準を合わせ……
「なん……」
動き出そうとした怪人の額を打ち抜く。
「す、すご……」
「ふぅ、焦ったぁ」
いや、マジで焦った。なんでこんななんもない通路から怪人出てくんだよ。そりゃそこいらじゅうから戦闘員でてくるよな。
マジで焦ったわ。




