919.ダイラス・リーン殺人事件8
案内人君のツアーコンダクタースキルすらも避けられる。
回避特化型との闘いがここまでストレスフルな戦いになるとは思っても居なかった。
レイレイさんなんてすでに苛つきMAXで地団太踏んで大声で降りてこいとか叫んでいる。
逆にムノチュワを多く倒しているのはティリティさん。
わざわざ自分を攻撃させて捕食攻撃で取り込んでいるようだ。
それを見た未知なるモノさんも真似を始めて、この二人が五体づつ倒したかな。
猫たちで三匹、テインさんの青い膿攻撃で飛行能力失って消されたのが一体。最初の一体撃破も合わせて十五体倒せた。
残るのは五体。
ここに至るまでもう二時間くらい戦ってんじゃねーかな?
コトリさんが苦戦してるのも珍しい。
正直ここまで強いなら味方にしたい、と思わなくもないが、会話不可能っぽいんだよな。
意志も持ってるような感じじゃないし。本能的に相手を殺しに来る生物って感じか。
つまり、駆除するしかない存在って奴だ。
よし、迷いは捨てよう。
こいつらは駆除すべき害虫だ。
徹底的に、ここで潰し切る!
猫たちがまた一匹、ムノチュワを駆除する。
負けてなるか、と天王星の猫と組んだ土星の猫が遅れて一体退治する。
ティリティさんに突撃したムノチュワが捕食されて消滅。
さらに未知なるモノさんがもう一体を捕獲、そのまま捕食して撃破。
残りは一体。
ここまで他のメンバーも頑張ってはいるものの、一体たりとも倒せていない。
コトリさんの最高レベル保持者としてせめて一匹は倒したいと思っているようで、呪弾をガトリング砲みたいに射出している。
「当たらなさすぎある!」
「むしろ流れ弾に当たりそうなの!」
「それはごめん。でも撃つ!」
あ、空中でりんりんさんの矢が俺のレーザーに打ち抜かれた。
「酷い!?」
「めーんごっ」
しかし、ほんとに一切あたらんな。
アレだけ連射されれば一発位まぐれ当たりしそうなもんなのに。
俺もレーザー連射しまくってるのに、呪殺弾とレーザーの弾幕をものともせずに俺たちに攻撃しようとしてくるムノチュワ、ヤバくね?
「ええい、そろそろ当たれ!」
テインさんやマイノグーラさんも切れかけている。
ほんと、全然当たらねぇ……お?
俺のレーザーとコトリさんの呪殺弾、ほぼ隙間なくムノチュワの両脇から襲い掛かる。
いけるか? いや、無理か。
ぎりぎりで逃げ切ったムノチュワ。しかし、その背後からりんりんさん向けて帰って来ていた英雄武器の扇がムノチュワに襲い掛かった。
安心したところだったのか、一瞬反応が遅れたムノチュワが翼と思しき場所に掠る。
「当たった!?」
だが浅い。
とはいえ、翼を潰されたムノチュワがゆらゆらと落下し始める。
すると、猫たちがここぞとばかりに殺到する。
にゃーにゃーと襲い掛かる猫たちを必死に避けるムノチュワ。
しかし多勢に無勢で徐々に切り傷を作り、そして……
「「にゃーっ!!」」
ペルシャ猫と土星の猫の猫パンチが同時に襲い掛かった。
ムノチュワは避けることもできず直撃。
さらに飛ばされた先にいた天王星の猫が猫パンチで真下に落とし、ストンピング。
最後のムノチュワがついに撃破されたのだった。
「今のは私だろ!」
「いいや、私が倒した! 地球の猫風情が倒せる訳なかろうが!」
いや、今のは地球も土星も関係なく、天王星の猫がトドメ刺しただろ。
本人は二人が言い争うのが見たいので、それについて自己主張することなくニヨニヨしている。
天王星の猫は少し離れた場所から土星の猫と地球の猫が争うのを見るのが好きみたいだ。
つまり戦争に参加する気はなく、彼らどちらにも友好的に接することができるということだ。
ま、とりあえずこれでムノチュワ全滅だな。
このレベル帯でまさか苦戦する敵が出てくるとは想定してなかった。
装甲自体はかなり低いので当たれば確実に倒せるんだけど、当たらないのはなぁ。
回避タンクの神髄を見せられた気すらするよ。
「「戦争だ!」」
「はいはい、馬鹿猫共落ち着けー」
「ぬ? ヒロキ!?」
「馬鹿とはなんだ! 私はこいつのような馬鹿ではないぞ!」
「お前らちゃんと見てなかっただろ。トドメ刺したのはそこでニヤついてる天王星の猫だ」
「「なぬ!?」」
「おっと、余計なことを言わないでくれキミ。私は別に譲っても良かったんだぞ?」
「トドメ刺したのはお前だからな。その事実はしっかり伝えとかないと理由もなく戦争されても俺らが困る」
「なるほど、一理ある」
というか、土星の猫と地球の猫が争ってるの、天王星の猫が一枚かんでたりしないだろうな?
「お疲れ様でした、夢見人たちの予想通り、まさかこのような場所に犯人が潜んでいるとは思いませんでした。後は二、三日様子を見て問題なければ船の出向を許可できるだろう」
「ま、死人が出なければすぐにでも解除されるだろう」
それでも少しの間待たないといけないわけか。
じゃ、俺は疲れたのでログアウトさせてもらうぜ。




