918.ダイラス・リーン殺人事件7
商店街の屋根の上へと上がらせて貰った。
どんな生物で何匹いるかわからないので最初から全力。全メンバー投入で一気に殲滅するつもりだ。
ダイラス・リーンの眼メンバーも事実確認の為に上がって来てるのでコトリさんの傍で結界から出ないように言い含めておく。
さて、どんな生物がでてくるか。
とりあえず、ここにいるこたぁ分かってんだ。
もう逃げ場はねぇぜ謎生物。
これ以上の犠牲者は出させやしねぇ、俺たちの為に死んでくれ!
バハルナへの船を出向させるためになぁ、滅びろムノチュワ!
「っ! 結界に感アリ!」
呪滅結界は本能的に気付かれるっぽいので限りなく薄く呪殺能力を極限まで減らした結界を広範囲に、そして呪力を段階的に厚くして多重結界をコトリさんに張って貰った。
一番外側の結界をムノチュワが突破して来たようだ。
あのくらいの呪力なら突破してくる、と。
うわ、本当に光ってやがる。
赤だったり青だったり緑だったり光り輝く生物が高速で近づいてくる。
こちらの顔を狙って来ていることから、アレが今回の犯人で間違いはないだろう。
鑑定してみたが、あまりにも速すぎて鑑定ができな……あ、出来た。
やっぱり名前はムノチュワでいいらしい。
ただ、スキルなどは鑑定できなかったようだ。
理由はレベル差ではなく、早過ぎて鑑定できる速度を超えているのが理由らしい。そんなことある?
名前だけしか鑑定できませんでしたとか書かれてるけど、これ多分運営がやらかしてるだろ。
おそらくムノチュワは鑑定できない、させないギミックボスなのだろう。
そんなムノチュワだが、一匹だけ、という訳じゃなかった。
どうやら数匹いるようで、それぞれ形状が違う様に見える。
光のせいで全体図を見ることが困難だが、サッカーボールのような球体がいたり、鷹や亀に似た生物のように見えるムノチュワもいる。
どうやら形を変える生物ではなく形の違う複数体が別々に目撃されたせいで目撃証言が一致しないなんていう面倒なことになってしまったようだ。
「素早い!?」
「あたらないある!?」
「避けられたの!?」
機動力を誇るなのさんまで空振ったのか!?
無駄に速いせいで皆が振り回されているようだ。
面倒なほど速いな。これは当てるだけでも一苦労しそうだ。
「くっ。私の炎で周辺ごと焼き払えばすぐなのに!」
「止めろよ暴走火焔娘! あんたそれダイラス・リーン滅びる奴じゃん、ンカイの森みたいにするつもりじゃないだろーなーっ」
「ニャルさん遊んでないで手伝って!」
「あ、はいっ」
ムノチュワの数は大体二十匹くらいだろうか。
それぞれ皆が攻撃を与えようとしているが、ムノチュワに翻弄されているようだ。
ええい、俺の曲射攻撃まで避けるのか!?
必中技だぞ、どうなってんだ? 回避スキル極振りか?
「くっ。我が感覚器をもってしても動きを捉えきれんか」
うげ、なんだその蜘蛛の巣状のなんか変なの。頭を囲んでる角から出てるようだけど、気持ち悪っ!?
天王星の猫は感覚器を頼りにして近づいてくるムノチュワを感知しようとしているようだが、ムノチュワの不規則な動きに攻撃が空ぶってばかりである。
うわっ。土星の猫魔法まで唱えだしたぞ。
こいつら猫ってどんな戦い方するんだろうと思ってたけど皆独特過ぎるだろ。
「ニィア゛ァ――――ッ」
土星の猫がムノチュワ一体を撃破したのを見たペルシャ猫、思わず凄い声を出してきた。
すると、どこからともなく無数の猫たちが屋上へと現れ、わらわらと集うと集団でムノチュワを一匹狩り殺す。
意外とヤベェな猫の集団。
「地球の猫はスマートさに欠けるな」
「そんな成りして遠距離型の貴様等に言われたくないな」
「猫もどこの星生まれかで特性があるものさ。ちなみに私は防御特化だよ」
それはその厚い皮でわかるよ、うん。
「しかし、本当に速いな。しかも倒すとすぐ光に変わるから正体すらわからんままだし」
「ひゃぁ!? 顔狙ってくるから避け易いけど、動きが早過ぎて反撃が……」
英雄武器早速使いだしてるりんりんさんだけど、せっかくの高火力武器も相手に当たらなければ意味がない。
敵の体力や防御力はほとんどないようだけど、これはかなり長期戦になりそうだな。
回復役がいないから回復薬で何とかするしかねぇな。
っと、あぶなっ。
コトリさんの結界があるとはいえ、間近まで接近されても気付けないのは拙いだろ。
ええい一発位当たれや!
「っし、捕まえた! くぅたぁばれぇぇぇ!!」
しまった未知なるモノさんに先越された!?
って、地面に叩きつけたつもりの未知なるモノさん、ここが屋根の上だって忘れていたらしい。
ムノチュワは大してダメージ受けずに屋根が陥没した。
「あ、やっべ」
「あとで罰金払ってもらいますね」
ダイラス・リーンの眼メンバーも見学してるので言い逃れは出来ない未知なるモノさんだった。ザマぁ。




