915.ダイラス・リーン殺人事件4
結果、俺たちは三手に分かれて調査を行うことにした。
地球の猫ことペルシャ猫と共にダイラス・リーンの猫たちに聞きまわるチームが、ティリティさん、クトゥグアさん、りんりんさん、レイレイさん、なのさん。
土星の猫と共にレン人たちに聞き取り調査するチームが未知なるモノさん、案内人君、ニャルさん、テインさん、マイノグーラさん。
そして俺と一緒に事件のあった中心地付近で聞き込みを行うのが、天王星の猫と夢の守護者さん、コトリさん、ギーァ、くねくねさんだ。
中心地近くの商店などに聞き込みを行いつつ周囲に行き交う人に尋ねてみたり、一応、俺たち三チームに一人づつついて来たダイラス・リーンの眼メンバーさんを交えて死亡現場を調べてみたりする。
正直言えば、すでに分かってることしかわからなかった。
いや、一応ね。関係あるかどうかわからないけど、深夜に発行する光を見た、とか見たこともない虫を見た、とか光るサッカーボールとか、よくわからない証言はあったんだ。
それが繋がるかどうかと言われるとちょっとわからんとしか言いようがない。
とりあえず、この近辺で光る亀か鷹か猫か虫かサッカーボールかラグビーボールみたいなものがいるらしいってことはわかった。
うん、つまりわからないと言うことが分かったのである。
あと、どうも切り裂く何かは顔面か首筋を狙ってくるようだ。
路地奥の浮浪者が数名被害に遭っていたようだが、ラリッてたのでダイラス・リーンの眼メンバーは薬中のたわごととして処理してしまっていたようだが、こいつら多分襲われた生存者だ。
話を聞くに夜中に道を歩いていると上から何かが襲い掛かってきて顔面を切り裂かれた。
電撃を受けたような痛みで仰け反っているうちに居なくなってしまった、という証言もあった。
上から、襲い掛かる、か。
路地裏の道半ばで俺は上を見上げる。
青い空が見えるっちゃ見えるんだが、建物に囲まれているここでは真上の青しか見えない。
ふむ。屋根、上ってみるのがいいかもしれんな。
とはいえ、さすがに皆がそろってない状態で向かうと死亡フラグが建ちそうだ。
ここは一旦路地裏から戻って……なんだ?
「旦那様、今呪滅結界に何かが触れました。多分、上です」
おいおい、まだ昼間だぜ?
いや、待てよ。夜間に襲われたのは死んだ奴らだ。路地裏の奴らは結構な頻度で襲撃受けてるって話だったな、もしかして、日陰を好む生物か?
「死んだ?」
「いえ、呪詛結界に触れた瞬間逃げました。あの感覚から呪いを受ける前に身を引いたのでしょう。本能か、知恵持ちか、どちらにしろ厄介ですね」
「呪滅結界触れといて呪い受ける前に離脱できる敵か。なんだと思う?」
メンバーがメンバーなので期待はできないけど、今いる皆に尋ねてみる。
ダイラス・リーンの眼メンバーはさすがにわからないです、と匙を投げ、コトリさんは見当もつきません、と考えるのを止めてしまった。
くねくねさんは思考停止で踊り始め、ギーァと夢の守護者さんはその場で万歳。いや、シオマネキの真似かな?
これはダメだ。と最後の砦となった天王星の猫に全てを託すつもりで視線を向ける。
「ふむ。私の知る限り、クリーチャーの中に同じ特性を持った生物は存在しない。人間が行っている訳でもなさそうだ。キミはどうだい? 一旦ドリームランドを離れてみて、該当しそうな生物を知らないかな?」
俺? 困ったぞ、そんな言われても特徴を鑑みた生物なんざ見当もつかんぞ。
とりあえず整理してみようか。
今回の犯人と思しき生物は、顔面に対して切り裂いてきて、顔や首を斬られると電撃受けたような衝撃が来る。
さらに、発光して、亀か鷹か猫か虫かサッカーボールかラグビーボールみたいなものらしい。
そんな生物いるか?
えーっと、動物はさすがにいねぇよな? 改造人間? ありそうではある。
妖怪……髪切りとか? 鎌鼬は?
宇宙人? さすがにそれは種類特定とか無理だなぁ。
同じ意味で外の神系も想定できない。
実は犯人はアブホースの落とし仔の一つです、とか言われても、そっすか。としか言えないだろう。
えーっと神様系、天使、あるいは悪魔? 古代人系? 亜人とか?
んー、あとは幽霊、都市伝説、UMA……ん? UMA?
未確認アニマル?
「どうした?」
「いや、待って。なんか今、引っかかった」
考えろ、思い出せ。確か……あ! UMA図鑑!
確かアレに今の話に似た話があったはず。
「あー、クソ、エルエさんがいれば分かるのに」
「エルエ? ふむ、現実世界に居る者と連絡が取りたいのか。電話番号は分かるか?」
「こちらになります」
おっと、コトリさん個人情報は本人の許可なく他人に見せちゃダメなんだぜ?
「うむ、クリスタライザーを使えばこのように、っと、ヒロキ、尋ねてみるといい」
マジで? うわ、マジだ。エルエさんと繋がってる!?




