909.今まで居なかったじゃん!?
自己イデア内を俺とコトリさんの二人で移動する。
まだ二度くらいしか来てないのに場所覚えてしまったので向かう時はスムーズだ。
階段を降りるのが面倒ではあるが、それ以外は安全に炎の洞窟まで向かうことが出来た。
「あれ? ヒロキ君?」
「なんでまたこっち来てんの? 今ドリームランドに居てるんじゃ?」
「チーっス、イレギュラーでコトリさんが迷い込んだ関係でこっちで目覚めました。ダイラス・リーンに戻るにはどうしたらいいっすか?」
「んー。多分一度現実世界に出てコトリさんだっけ? 彼女がいない状態で夢に入り直すのが一番かな」
「うわ、面倒臭い!? コトリさんと一緒にドリームランド行くのはダメ?」
「許可されてないならダメでしょ」
許可されてればいいのか。ちょっと待ってて。
夢の守護者さんに連絡入れて状況説明。
え、こっち来てくれるの。じゃあお願い。
「ナシュトさん、守護者さんが来てジャッジしてくれるって……って、なんだそれぇー!?」
連絡が終ると、ナシュトとカマン=ターの二人とコトリさんを分断するかのように炎の柱が揺蕩っていた。
なぁにそれぇ?
「おお? 珍しいな」
「これは大いなる者が僕らを守るためにこの神殿内に揺蕩わせているモノなんだ」
なぁにそれ、俺知らないよその生物。生物でいいの?
「ま、僕らに攻撃してきたりしない限りは襲い掛かって来たりはしないよ」
コトリさんがいきなり攻撃してくることはないと思うけどね。
とりあえず放置でよかろう。
「私はそんな野蛮ではないと思うのですが……」
「ああうん、それはわかるけど、多分この呪滅結界に反応してるんだと思うよ」
「あー、コトリさん、一旦結界切っとこう、この周辺は危険ないんだし」
「そうですか?」
呪滅結界が解除されると、炎の柱はしばし周囲を揺蕩ったあと、証明代わりの松明がある場所へと向かい、炎の一部に擬態を始めた。
そこにいたんかい!?
「ヒロキ、来たぞ」
「うぇ!? うおぉ!? 夢の守護者さんいつの間に!?」
「あら? ギーァさんの親戚ですか?」
「ほぅ。これはまた面白い生物が来たものだ。本日は正式な訪問ではないそうだが、まぁ我が一緒であればよかろう」
鎌となっている手の部分を前に出してくる夢の守護者さん。コトリさんはこれを軽く握って握手。
握手でいいのかこれ?
まぁ本人たちが納得してるならいいか。
「夢の守護者さん、俺らダイラス・リーンから始めたいんだけど、出来そうかな?」
「うむ、無理だな」
無理っすか!?
「この先の階段から森に出る、その先ダイラス・リーンまで向かうしかあるまい。後は一度出てヒロキだけダイラス・リーンに向かうか、だな」
船大丈夫だろうか?
とりあえず未知なるモノさんに連絡しておこう。
「できればコトリさんもダイラス・リーンまで連れて行きたいかな」
「ならば行くしかないだろう。あるいは扉を開いて外側から向かうか?」
それって最初にドリームランド行った時の扉の先だよな。あれって大丈夫なのか?
無数に扉あるし、迷ったらどこに行くかわからないだろ。
「我が案内すればダイラス・リーンの扉までは向かえるが?」
「結構遠かったり?」
「いや、扉をいくつか潜るだけだ。我がいれば問題はない、が、道中の敵性生物に関してはお前たちを頼ることになる。我が同僚を殺したわけでもない相手を殺すことはできない」
なるほど、道中の露払いは俺とコトリさんがやるわけな。
あっちだとニャルさんたちに迎えに来てもらった方が安全なんだろうけど……
コトリさんがいるならお任せで大丈夫だろ。
未知なるモノさんからの連絡も付いたし、まだ船来るまで多少時間あるっていうから今のうちに追いついてしまおう。
どうやら殺人事件がまた起きた、とかでダイラス・リーンが騒がしいらしいし。
今のうちに合流して、海上封鎖とかされないうちにささっと脱出してしまおう。
「よし、行こう!」
夢の守護者さんに案内され、扉を開く。
自己イデアから総合イデアへ。
出た瞬間、目の前にディスマンがいた。
「おや?」
「死ね!」
即座に動く夢の守護者。
ディスマンは何もできずに瞬殺された。
こいつまた俺の夢に入り込む気だったな。
油断も隙もない奴だ。
というか俺の自己イデアがばがばすぎないか? セキュリティーどうなってんだ?
「むぅ。逃げられたか」
逃げたというか見事に霧散したな。
ばらばら殺人事件だったんだが。
せめて言い訳くらい言わせてやってほしかった。
別に聞く気はないけれど。
若干のイレギュラーはあったものの、総合イデア内からダイラス・リーンまではコトリさんの結界と夢の守護者さんの案内のおかげで実に安全な旅路となったのである。




