908.夢の世界へ
言ってはなんだけど、サユキさんの事件のせいで七不思議攻略は時間的に無理になってしまった。
こればっかりは仕方ないとはいえ、予定がまた後回しになったのは確かだ。
やはりあらかじめ決めてた予定を潰されるのはちょっとストレスが溜まるというもの。
これから夢の世界へ向かう訳だし、ストレス抱えたまま向かうとどっかのマンホール少女みたいに夢の世界でやらかしかねない。
これはやはりストレスを解消しておかないといけないな。
運営こき下ろすかハナコさんに癒されるか、それとも他の何かでストレス発散するべきか。
ハナコさぁーん。
『はいはい、よく頑張りました。ほらヒロキ、夢の世界とかいうのに行くんでしょ。子守歌歌ってあげるからゆっくりお休みなさいな』
「マジで! うおぉぉぉ! もう何年でも寝られそう!」
「でしたら私添い寝させて貰ってもいいかしら? 二人きりでゲーム世界楽しめると思ったのに引き離されてしまったもの」
あー、そういえばコトリさんもストレスたまっちゃったか。
せっかくストレス解消のために午前中一緒だったのに。
そういうわけなら、と自室に向かった俺はコトリさんに抱きしめられ、ハナコさんに子守唄を歌われて眠るというダブル役満的な幸福を味わいながら眠りに入るのだった。
『ねんねーんころーりやー……』
ば、ばぁぶぅ……
……
…………
………………あれ?
ふと自分が立っていることに気付いて目を開く。
するとダイラス・リーンではなくなぜか自己イデアに佇んでいた。
「なんで自己イデア?」
「あら? ここはどこかしら?」
「え?」
間近に声が聞こえ、俺は思わずそちらを見る。コトリさんが困惑しながらそこにいた。
コトリさん、何でここに!?
「え? あ、あの、旦那様? こ、これは夢かしら? そ、そうよね。旦那様の横でハナコの子守歌聞きながら寝入ったのだからこれは夢よね。つまり、この世界の旦那様には何をしても……ふふ、うふふ」
あれ、なんかヤバい?
「待った! コトリさんストップ。勘違いしてるぞ!」
「夢なんて初めて見るけれど、ここでちょっとハメを外して子作りしても問題ありませんよね」
その場合どうなるんだろうな。子供出来るのか? 夢の世界だから出来る訳もないか。
でもなんか夢の住民として生まれてきそうで怖いな。
「コトリさん現実! これ現実みたいなもんだからっ。俺本人!」
「本人なのは当然です、さぁ、旦那様、本当の家族になりましょ、あら、感触が凄くリアル?」
―― 天の声より警告でーす。落ち着けコトリバコ。これヒロキの自己イデア内だからそいつ本物のヒロキだよー ――
「ええい、今いいところでして……よ? ひぎぁ!?」
「密着してるから俺にも電撃がぁ!?」
警告など気にするものか、とコトリさんが俺の服を強引に引きちぎろうとした瞬間、どこからともなく落雷が迸りコトリさんを直撃した。
コトリさんに押し倒されていた俺にも当然電撃が迸り、なんか絶妙に痛みしかない刺激を味遭わされたのである。とんだとばっちりだよ。今日は厄日か!?
……
…………
……………………
「落ち着いた?」
「な、なんとか……」
コトリさんもようやくドリームランド手前の自己イデアにいることを理解してくれたようだ。
天の声が聞こえてる訳だし、せっかくなので尋ねてみよう。
と、この状況について尋ねてみると、どうやらヤマノケスキルのせいでコトリさんが俺の夢見に混線してしまったのだとか。
一度自己イデアを体験すれば次回からコトリさんも自己イデアからドリームランドに行けるそうなので、一度こちらのイデアでナシュトとカマン=ターに会わせて紹介だけしておこう。
ヤマノケスキルで付いてきたとはいえ、俺の精神を侵食したりはしてないらしいし、一度コトリさんには脱出して貰うとしよう。勉強して貰わないとだしな、ドリームランドの基礎知識を。
あれ、覚えるの地味に面倒なんだよな。そういうの覚えるのが好きなら苦じゃないんだろうけど、俺はそこまで興味を覚えてるわけじゃないから、瀝青グモとかルズの領主とか言われてもなんのこっちゃって思うだろ? 俺もそこまで詳しく覚える気はなかったんだ。触りだけでよかったと思うんだよね。
「では、本日はドリームランドに行くことは無理なのでしょうか?」
おっと、コトリさんが今回のドリームランド満喫する気だぞ!?
一度目覚める気はないらしい。
「とりあえず聞いてみよう。まずはナシュトとカマン=ターの二人、あとは夢の守護者さんの許可あればいいだろ」
「ではしばしご一緒させてくださいまし」
さっそくコトリさんは俺とコトリさんを覆う様に呪滅結界を張り巡らせる。
ここ、俺の自己イデアだからヤバい生物はいないはずだぞ? たぶん。
たまにディスマンとか入って来てるけど、ちゃんとヤバい奴は防衛機構がぶっ倒してくれてるみたいだし。




