906.呪いのゲーム6
「出来たで?」
「出来たね」
「なんですそれ?」
適当に魚介混ぜ合わせてレンチンしたもん、だな。
気持ちいいくらい選択肢狭まったわ。
んで、今主人公君が作ってくれた物がレンジ内部で完成した。
「なるほどねぇ、こうなるのか」
出来た物体Xを取り出し、俺はほくそ笑む。
なかなか上手くやってたみたいだけど、詰めが甘いなぁ。
「ひぃ、呪物やん!?」
「主人公さんが作ったからか酷いのができましたね。さすがに私でもそれはちょっと」
「ああ。問題ないよ。これは俺が回収しとく」
準備、完了。
「ところで一つ、はっきりさせたいことがあるんだが」
そう言って、俺は懐からレーザー銃を取り出す。
「ヒロキさん?」
「旦那様、何を?」
かちゃり、俺は銃口を主人公君に向け、引き金を……
引く、と見せかけて体を捻り、そいつの額を打ち抜く。
「旦那、さ、ま?」
想定外のことに驚くコトリさん、その額には丸い風穴が空いていた。
「猫被る必要はもういらないぜ?」
俺の言葉に、倒れそうになっていたコトリさんが不敵な笑みを浮かべて立ち直る。
「……まさかバレてるとは思わなかったわ。完璧に模倣したと思ったのに」
「なかなか面白い余興だけど詰めが甘いな。本来のコトリさんであればまず最初に呪詛結界を使う。今は呪滅だったっけ? まぁどっちでもいい。つまり、スキルを使わない時点でコトリさんである事実に疑問が出る。それに、君は少し焦り過ぎだな。サユキさんを守るように見せて殺す側に偏り過ぎ。チョークを防いだのも俺にバレないためだろうけど鉄扇なんざ使うより結界で弾く方が楽だろ。そもそも電話すりゃすぐに合流出来るはずなのにわざわざ俺をサユキさんと合流させるまで歩かせたのも不自然だ。最初にお前が誘導しただろ、急いで探そう、ってさ。ま、焦ってる理由はわかるさ。サユキさんを早々に呪殺しないとお前詰むもんな」
コトリさんには一つ、もしもの場合に行動するよう伝えておいた。
もしも、俺と別行動になった場合は迷うことなくリンフォンを発動させろ、というものだ。
つまりコトリさんと俺を引き離してコトリさんになり替わりながら俺を消すために動いていたんだろうが、焦りから結構ぼろが出てた。コトリさんなら確実に間に合うサユキさん殺害の場面も普通に死なせてたし。
ま、それというのも、そもそも守る必要のない物体が死のうが生きようがどうでもよかったからだろうけど。
まさかコトリさんに化けるだけじゃなくサユキさんにまで化けているとはなぁ。
俺じゃなければわからなかっただろう。
「なぜ……わかったの」
それはいいから額に風穴空いたままのコトリさん姿で言わないでもらえませんかね。
「コトリさんに関してはさっき言った通り。それと……」
サユキさんを引っ張りコトリさんモドキに投げ渡す。
すると、今度はサユキさんがゲームの制約などで移動できない、なんてことはなくコトリさんの体にぶつかり融合する。
「本当のサユキさんを呪詛塗れにして主人公として同席、自分の死に様を見せつける、か。随分と悪趣味だな」
「そこまで!?」
「さっきまで確証はなかった。コトリさんがここに居ないのは分かってたからあとはサユキさんが本物かどうかを調べるだけ。俺にとっちゃゲームのクリアは二の次だからな」
そうだ。優先順位を間違えちゃいけない。
まずサユキさんを連れ帰る。そのためにゲームクリアが条件ならクリアする必要があるんだろうが、今はない。
拝み屋スキルで除霊を行い呪詛を散らす。
主人公君だった呪詛の塊が散らされ、中に閉じ込められていたサユキさんが倒れ込む。
そもそも、何度も死んでるのに今まで通りの精神性であること自体がおかしいのだ。
サユキさんが偽物だという可能性は十分にあった。
でも確証がもてなかった。
なので、確証できる証拠を探した。
運よく料理出来るだけの素材を集められてよかった。
この辺りはコトリさんにすでに奪われてたから自由に持ち運び出来たのかな?
「サユキさんはな。料理すればどんなものもダークマターにしちまう才能を持ってんだよ!」
それがサユキさんが主人公やらされてるっていう確証の理由だ。
サユキさんモドキが普通に料理出来てた時点で偽物だとは分かったが、本物がこっちに居てくれたのは僥倖だった。
サユキさんモドキを取り込んだ呪いのゲームは姿を変える。
現れたのは、青い顔の女。
これってアレか? おまえが今から寝ると朝になったらギタギタに切り裂かれて死ぬ! とか言ってくるという噂のゲーム女。
「驚いたわ。まさかこんなことをしてくる奴らが居るなんて」
「そりゃどうも……というか、話が噛み合わんのだが」
バレた以上は秘密にする必要はないとでもいう様に、彼女はその場に土下座を始める。
いや、あの?
「お願いします、助けてくださいっ」
は?
「あの呪詛の塊、私の世界内で地獄を開こうとしてるんです!」
まぁ。そうするように伝えたからな。
「お願いだから助けて! そいつ取り込めない以上このままじゃ消されちゃうっ」
だから消すために行動してんだってば。
「とりあえずサユキさんと俺外に出してくんない?」
「そしたら呪詛に取り込まれるっ」
「コトリさんと直で話せるようにして貰えれば」
「旦那様を取り殺そうとした時点で私刑だって聞きません!」
なるほど、彼女にとって俺を放置して呪詛で取り殺さなかったのは下手にちょっかい掛けると自分が死ぬのが分かってたからか。
サユキさんに関しても残機減らしてなかったとか? あ、そっちは普通に取り殺すつもりだったのね。




