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90.駆け抜けろ

「いっけぇぇぇ!!」


 俺、ハナコさんディーネさんの三人でレーザー銃と鬼火を連射する。

 もはや相手のHPもわずか。触手が俺達に届きダメージを与えながらふっ飛ばすまでの距離もわずか。5センチ、4センチ、3、2、1……残り、5ミリ……


 鼻先を高速回転する触手が掠めたところで、次の触手が掻き消える。

 全身からどっと汗が噴き出した。

 危なかった。

 今のは本気で死ぬと思った。

 見ればタヂさんも隣り合っており、むしろ俺よりも後ろに下がっているように見える。

 背後から押されているスレイさんも限界ぎりぎりで持ちこたえていて、俺とスレイさんの背中は完全密着中だ。


「全員、全力で走り出せ!」


 タヂさんが声を張り上げる。

 立ち竦みそうになっていた体を無理矢理動かし俺が前へと歩きだす。

 暗闇の中、何処に向えばいいかも考えずに、ただ、真っ直ぐ。


『ヒロキ、先導するわ、急いで!』


「殿はおねーさん達に任せなさい! ツチノコさん、この人形連れてヒロちゃんの後追って!」


「マネージャーさん、任せて。落ちてるアイテムはディーネが回収したげるから」


 ディーネさんが水魔法を使って回収してくれるようだ。

 アイテム回収も殿も皆に任せ、俺はひたすらに走りだす。

 これで、良いんだよな?


「よい、急げよヒロキ!」


「ツチノコさん遅いだ。おらに掴まれ。一気に距離詰めッぞ」


「シャァァ!?」


 うわ、なんか間横を変な風が後ろから前に飛んでった!?


「暗いけど見えてるダーリン? 我は見えとるからいいが、この辺り骸骨が多いぞ!?」


 見たくねぇ!? さっきのレギオンがやらかしたせいでこの辺りは無縁仏が多いのか。

 とにかく暗闇ありがとう。ハナコさんの指示に従い下すら見ずに必死に走る。

 どれだけ走っただろうか?

 真っ暗闇の中、ただ走る足音だけが響き、皆が付いて来てくれてるか不安が圧しかかる。

 ハナコさんの声が無ければ早々に気力が折れていたかもしれない。

 背後から真っ直ぐ、もうすぐよ、と何度も声を掛けてくれるハナコさんの存在があったから、俺は走り続けることができた。


 やがて、一筋の光が見えた。 

 次第重くなっていた足も速まって行く。


「待ってヒロちゃん、向こうに何もいないとは限らないわよ!」


「そ、そうだった!」


「でぇじょーぶだ。おらたちが先行して外でただ!」


 光の先から、ネネコさんの声が聞こえて来た。

 すでにツチノコさんとツチノコさんに咥えられたメリーさんを引き連れ外に出ているようだ。

 ならばと遠慮なく速度を上げて彼女たちの元へ追い付く。


「うっわ、山間部!?」


 荒れたトンネルを抜けた先、山々に囲まれた盆地地帯が広がっていた。

 遠くに学校らしき物が見える。あれが田舎の学校だろう。

 ようやく、ようやく田舎の学校に向う道が確保出来たらしい。


「これで田舎の学校に乗り込める」


「いや、ヒロキよ。田舎の学校行くだけなら電車とか車使えよ。道繋がってんだからよ」


「……いやまそうなんだけども」


 タヂさんよ、それはお金払って移動する奴だろ。

 アレ毎回金払って電車乗らないと移動できないからさ、ここ越えたら選択肢に加わるし自由に行き来できるんだぜ?


「まぁ、トンネル攻略できりゃ自由に選択移動できるし金はかからねぇがよ」


 タヂさんが呆れている。


「浮遊霊、こっちまでは追ってこないのだな?」


「あいつらレギオンが居た辺り越えたら追ってこなくなったわよ? 多分家主が居なくなってもその威厳からトンネルの奥までは恐くて入り込めないんでしょ。もしくは自分の身体があった場所に戻りたかっただけかもだけど」


 あれ、じゃあ最後は走る意味すらなかったとか?

 俺、空回りしまくってた?


「はー、今回は疲れたわい。おいヒロキ」


「はい、なんでしょうタヂさん!」


「お前の漢気が見られる事を期待しておく、せいぜい足掻いてみせろ。儂はそれまで手助けせんからな」


 と告げたタヂさんはそのままのしのしと峠を下っていく。

 これ、一緒に歩きだしたら普通に追い付けるんだけど、姿見えなくなるまで待っといた方がいいんだろうか?


「さて、峠は抜けたわね」


「残る場所は寺と廃病院だっけ?」


「それなんだけど、その二つは適正レベルを輝に聞いてからにしよう。次もレギオンみたいなの出てきたらタヂさん居ない状態じゃ対処できないし」


「それもそうね」


「とりあえず、今日はあそこの学校まで行ったら家に戻ろう」


 田舎の学校を場所移動選択肢に加えるのだ、ソレが出来れば今回の探索は大成功ってことで。

 峠のこちら側は幽霊は殆どいないようだ。

 体勢も整えたかったので一旦皆で集まる。


「全員いるな。メリーさん、改めて助っ人ありがと」


「……」


 メリーさん?

 あああっ!? ツチノコさんに咥えられてるせいで唾液塗れで、でろんっとしてる!?

 慌てて生気を失ったメリーさんを救出する。


 ……

 …………

 ………………


「別に、あんたのために手伝った訳じゃないし。あのままだと私までやられてたから仕方なくよっ」


 ふんっと腕組んでそっぽ向くメリーさん。ツンデレさんかな?


「しかもちゃっかりテイムされてるとか、メリー、あんたツンデレ?」


「ツンデレなんてしてないし! っていうかあんた都市伝説じゃないテケテケ、なんで七不思議のボスやってんの!?」


 うーん? なんかよくわからないことで喧嘩しはじめたな。

 まぁ良いや放置で。

 さって、とりあえず明日に寺と廃病院回って鍛冶屋に向えば、翌日には準備完了かな。


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