904.呪いのゲーム4
教室へとやってきた。
いやもう、マジ面倒臭い。
やり直すたびに不審者ぶち殺さないとだし、地味に繰り返す景色に飽きがき始めている。
「あ、来ました」
「ようやくか」
俺たち以外の誰かがドアを開く。
入ってきたのは……
「え? ヒロキ、さん? コトリさんまでっ!」
俺たちの姿を見た瞬間、その女は泣きそうな顔でへなへなと座り込む。
そんな女性にどうしたの? と声をかけるこのゲームの主人公。
マジかぁ。いやまぁ主人公君は基本ゲーム画面を通してみてるプレイヤーだから、姿がないのは確かなんだけど、まさか呪詛人間が主人公とはな。
「これは呪人の傍で見張られながら殺され続ける、という苦行ですね。よくまだ精神を保っていたものでです」
「ほんまに、本当に死ぬかと思った、というか何度も死んでんよウチぃ」
泣きながら立ち上がるサユキさん。
主人公の傍を離れて俺たちの元へ来ようとして……
うわ、マジか。移動制限まであんのか。
俺たちに近寄ろうとしているようだが、その場で足踏みし始めるサユキさん。
一定以上主人公から離れられないようだ。
しかも主人公は俺たちが最初からいないかのように勝手にしゃべっている。
どうやらこのままゲーム通りに動くつもりのようだ。
「とりあえずサユキさん、開始地点教えてよ。あと残機」
「え? えーっと、開始地点は――――」
説明初めて数分。死亡フラグの選択肢はついに新しい選択肢に入ったようだ。
今は国語の授業かな。俺とコトリさんが警護についているサユキさんと主人公君の前に選択肢が現れる。
サユキさんは選べない。
選択肢を選ぶのはあくまでもツチノコさんたち外のメンバーである。
今回の選択肢は、必死に起きておく、と気付かれないように寝る。
この二択ならまず起きておくを選ぶ。
しかし、起きていると、まさかの隣で寝ていた主人公君にチョークが飛んでくる。
ノーコン先生の一撃は隣にいたサユキさんの額へと吸い込まれ……
「はい」
鉄扇でチョークを天井向けて打ち上げたコトリさんにより、サユキさんの生還が確定。
というかチョークで死ぬのかサユキさん。
「い、生きてる? 最初の選択肢で、生きてる!」
はいはい、よかったね。
というか、本来死ぬ選択肢で生還した以上、バグが発生したわけだが、どうなる?
「ん? 今何か起こった?」
「な、なんでもないで?」
サユキさんがひきつった笑みで主人公君に応えると、主人公君はそっか。とそっけなく告げる。
授業始まったばかりなのに先生が出ていった。
そして、主人公君が立ち上がる。
「放課後だよ。今日はどこ寄って帰ろうかな?」
次の選択肢に入った!?
なるほど、生還した場合はそのまま次の選択肢へと繋がるのか。
「とりあえずは良い感じに繋がりました。このまま致命的な選択の後のつじつま合わせがどうなるか調べたいですね」
「侵食率はどう?」
「なかなか面倒な相手です。10%といったところですね」
少ないのか多いのかわからんな。
しかし、なるほどなぁ。
そうなるとまだまだ時間はかかるか。
どうやら本当にここから放課後扱いになるようだ。
授業、ほとんどなかったな。
さて、選択肢は……山に行く、海に行く、町に行く、三択か。
今回選ばれたのは……山に行く?
おいおい死亡フラグしかなさそうだぞ。
絶対迷って餓死とかなるでしょ。
早速向かおう、と主人公君についてサユキさんが移動する。
俺らも後を追ってみるかな。
サユキさんたちを追っていくと、どんどん山深い場所へと移動していく。
これ、絶対迷うよな。
深い森に入っていくサユキさんの前に次の選択肢。
うわ、右か左の面倒くさい選択肢じゃん。
まずはどっちだ? どっちに……左だな。
左の小道へと向かう二人。
次の瞬間、ターンっと音が聞こえた。
サユキさんの側頭部を何かが貫通し、サユキさんが死んだ。
「あー、マジっすか」
嘘だろ。ここで獲物と間違えて猟師さんに狩られるとか想定外が過ぎる。
サユキさんが死んだことで俺とコトリさんはまた始まりの場所へと転移する。
ふむ。距離を取って警護するとサユキさんほぼ確実に死ぬな。
「行きましょう、合流地点は既に決まってますし、変な選択肢を選んでしまう前に」
「……そうだな。とりあえず学校前で合流するとすっか」
別に教室で合流もアリだけど、とりあえず最初の選択肢からの行動が知りたい。
という訳で、一旦学校前迄来てからサユキさんの自宅へ向けて歩く。
えーっと、教えて貰った場所的にこの辺りに……いねぇな。
学園からまっすぐ来たから選択肢の数からいってこの辺りでぶつかるはずなんだが?
なぜ合流できないのか。
仕方ない、学園に戻ってみるか。




