901.呪いのゲーム1
マイネさんは俺などいないかのようにゲームを続けている。
このまま彼女がゲームし続けると不味い。それはわかるが引き離す方法がわからない。
「誰か! 誰か来てくれーっ」
俺の手には負えない。
早々に判断した俺は大声で叫ぶ。
「呼びましたか旦那様?」
こ、コトリさん!?
まぁいいや、なんでこんなすぐ近くに居たのかは敢えて問うまい。
「コトリさんどうしよう、マイネさんが呪われたっぽい」
「呪い、ですか? どういったも……っ!?」
部屋に入ってきたコトリさん。呪いのスペシャリストはそのゲームを見るなり目を見開く。
そして一心不乱にゲームを進めているマイネさんを見た刹那。助走を付けてのドロップキック。
側面から無防備に受けたマイネさんがくの字に折れ曲がって吹き飛び、ゲームパッドが床に落ちた。
「いったぁぁ!? ちょっとヒロキなにす……えぇ、コトリさん!?」
「ふぅ、危ないところでした」
よほど焦っていたのか、受け身も取らずに地面にお尻から落ちたらしいコトリさん。
お尻をさすりながら立ち上がり、着崩れた着物を整える。
「な、なんでコトリさんがいるの? どうなってんの!?」
「まず最初に、コントローラーには誰も触れないように。このゲーム自体が呪いの媒介です」
ゲームソフトを使ったことでゲーム機本体まで呪物になっているらしい。
となると、サユキさんは完全に取り込まれたとみるべきだろう。
「やっぱり画面に映ってるのはサユキさんか」
「はい、おそらく前に取り込まれた誰かを死なせてしまい自分が取り込まれたかと」
「それって……残機無し、になったってこと?」
「そうなります。サユキさんの残機は……残り71ですね」
あの短期間でどれだけ死んだのサユキさん!?
っていうかこのゲーム選択肢どれ選んでもサユキさん死んでね? いや、マイネさんが悉く反対の選択肢選んでるように見えるけど、完全に運任せじゃん。
「これ、コトリさん何とかなりそう?」
「いえ。ゲームは呪いといえども専門外なので。とりあえず全員呼んでみましょう。三人寄れば文殊の知恵ともいいます。何かしら解決策が出るやもしれません」
やっぱそれが一番か。
ゲームの呪いなぁ。面倒ごとが出来ちまった。
こりゃ夜間の部は七不思議攻略してる場合じゃないな。未知なるモノさんたちにも連絡入れとこう。
それからしばし、テイムキャラが皆この部屋と廊下の方に集まってきた。
ここに来てないのは移動できないモナ・リザさんくらいか?
「これはまた、変なモノに関わったみたいね」
散紅さんが飽きれた顔をしていらっしゃる。
今回は俺関係ないからな。
「ふむ。機械自体は何の変哲もないゲーム機だな。改造されてる感じもない」
スレイさんにはゲーム機本体を調べて貰った。
機械関連はスペシャリストだしな。頭もいいから何かしら閃くかな、と思ったけど、呪い関連は専門外だからあまり役には立たなそう。
ウチのメンバーには悪魔も天使も機械好きも呪物も外の神や稲荷さんだっていると言うのに、皆が皆、これは専門外だ、と小首をかしげている。
それだけこの呪いのゲームは特殊なモノらしい。
とりあえず、ゲームを止めてしまうとサユキさんは戻ってこないのは確定。
サユキさんを戻すには、やはりゲームの攻略が肝になるようだ。
しかし、このゲーム、残機減るの早いんだよな。サユキさんすぐ死ぬし。
なんだよ、ただ一緒に歩くだけで隕石衝突して頭蓋骨陥没死って。
「一般的な選択をしても死ぬ、かと思えば逆の選択肢を選んでも死ぬ。何とも死にやすいゲームだな」
「ねぇ、サユキさんってテイム済みなんでしょ? 死んだら一定時間後に戻るんだからそこまで気にしなくてもいいんじゃ?」
「いや、運営のことだからこういうのに限って永遠死んだまま、にしてくる可能性が高い。あいつら人の不幸で絶望してる顔を見るのが最高って奴が結構いるからな」
「終わってんなぁ……」
「それでもこんなゲーム作れるだけの知識と実力持ってんだ。まったく世の中いろいろ間違ってるぜ」
『それ、ヒロキが言っても説得力無いと思う』
『と言うかさぁハナコ、どうせ運が絡んでるんだし、ダーリンがプレイすればよくない?』
「それがそうでもないみたいよヤミコさん。何しろこのゲーム、呪い側で選択肢を変えれる可能性が高いのよ。じゃないと毎回選択肢で死ぬなんてありえないわ」
まぁ確率的にも全部死亡を選ぶ確率は限りなくゼロに近いもんな。
一回は逆の選択肢が死亡フラグでした、があってもおかしくないのに、必ずサユキさん死んでるし。
残機の感じからして100問くらいは選択肢が用意されてるだろう。
それを失敗させずに選んでクリア、か。並大抵の運じゃできそうにない。というか呪いのゲーム的に向こうの都合で殺しに掛かれると思った方がいいだろう。




