900.七不思議攻略、できません
多眼の英雄さんに懇切丁寧に説明することしばし、なんとか協力をもぎ取った俺は死体に戻った英雄をアイテムボックスに回収させて貰い、ドール討伐以外には絶対に使わないことを村長の前でゲッシュとして誓った。
よくわからんがゲッシュというのは制約らしく、自分の行動を制限することで巨大な力を手に入れられるモノらしい。その代わり破ると急激なデバフにより即死上等の紙装甲になるらしい。
今回の制約は多眼の英雄さんの死体をドール討伐でのみ使用するという制約。
つまり、それ以外の戦闘で使ったり、見世物などに使用した場合、せっかく強くなった俺のステータスが極限まで下がりかねん。
このゲッシュをしちまった以上は変な場所で英雄召喚しないようにしないとな。
まぁ見世物なんぞする気はないからそっちは問題ないけど。
ともかく、今回やるべきことってものを全部やり終えたので、俺たちはUFOへと帰還した。
これから七不思議最後の一つを攻略するためにメンバー選定を……と、そういやなんかユウキさんが言ってたな。
姉さんが出てこない、とか?
「居たーっ! ちょっとヒロキ、なんで秘密結社撃破イベント起こさないのよ!」
うげ、マイネさん居たのかい。
「ドリームランドじゃ拘束されてるけどね、こっちは自由に動けるのよ! で、どうなってんの!」
どうもなにも説明はしただろ。
とりあえず会議室になってる居間の方行こうぜ。
七不思議のメンバー選出しなきゃだし。
と、マイネさんのお小言を聞きながら部屋へと戻る。
りんりんさんたち、自分たち関係ありませんよ、とさっさと部屋に向かいやがったし。
なのさん俺に抱き着いてたのにりんりんさんたちと逃げやがった。
おのれ悪女め。こういう時は一緒にお小言付き合うもんだろーっ。
居間へと向かうと、すでに皆揃っているようだ。
いや、何人かはいないな。
アイドルデビュー組はまだ帰って来てないか。
あとは……サユキさんもいないな。ローリィさんはまだ寝てんのか?
「まぁ、いいか。ハナコさんも帰ってないしもうしばらく自由行動かな」
せっかくだしノームさんテイムしてみるかな。
いったん外に出ることになるけど。
「あ、それならヒロキ、ねーちゃんの様子見てくれよ」
あー、そうだったな。
ったく、サユキさんニート生活満喫しすぎだろ。
ほらマイネさん行こうぜ。
「私も? まぁケツひっぱたいて外に出すくらいは手伝うけどさ」
暴力はんたーい。
「えーっと、サユキさんよね。ここだっけ?」
と、サユキさんのネームプレートが書かれた部屋へと入るマイネさん。
俺より先に入らないでくださいま……す?
俺たちの目の前に、ぐっちゃぐちゃに散らかった部屋が現れる。
ペットボトルがそこかしこに転がっており、ポテトチップスの開かれた袋が散乱している。
これは酷い。酷いけど、家主はどこだ?
部屋の中央にはテレビから伸びた家庭用ゲーム機と思しきものとコントローラー。
テレビは付けっぱ、ゲーム画面がぴっこぴっこと自己主張している。
「なんだこれ?」
「サユキさんがいないってことは、トイレか?」
「そんなわけないでしょ。何か事件に巻き込まれたと思った方がいいんじゃない?」
そんなまさか、と思いつつゲーム画面を見てみれば、2Dキャラながら、どこか見覚えのあるキャラクターが映っている。
そう、サユキさんだ。
というか、なんだこのゲーム。サユキさん死なないで?
「何このゲーム?」
待てよ。確かその名前、どっかで聞いたような。
そうだ! 確かサユキさんのスキル入手イベント!
サユキさんのイベントは……ゲームサユキさん死なないで攻略、ゲーム格ゲーコロシアム攻略、ライザン道場ダイエット、タツタさんのお料理教室、デスエさんのお料理教室だったな。
やっぱりだ。ゲーム、サユキさん死なないで。これを攻略すればスキルが手に入るイベントだ。
「ってことはこのゲームやればいいのね」
あ、ちょまっ。
俺が止めるより早くマイネさんがゲームパッドを持つと、ゲームを開始する。
どうやらこれ、恋愛ゲームっぽいな。シミュレーションゲームって奴だ。
文章が出て読みながら進んでいくと、選択肢が出現。何度も選ぶことでいくつものエンディングに辿り着く、という奴である。
もちろん、グッドエンドは攻略対象と恋仲になるなど。バッドエンドは振られたり、相手が死んだり、自分が死んだり、なんてのもある。
「あっ」
最初の選択肢、『おはようと声をかける』と『無視して通り過ぎる』の二つが出たので、マイネさんは仲良くなれるおはようと声をかける、と選択。
すると、声を掛けた瞬間、振り向いたサユキさんの背後から2tトラック。
撥ねられ宙を舞ったサユキさんが頭から落下。凄い音が鳴った。
なぁに、これぇ。
サユキさん死んだんですけど!?
あ、戻った。
というかサユキさん残機制なのか。
残機? あ、待て、なんか嫌な予感しかしねぇ!?
「マイネさん、待って。一旦皆呼んで来よう。これヤバい奴だ」
しかし、マイネさんは俺の声等聞こえないかのように、ただただ画面を凝視してゲームに没頭していた。これ、ゲームする方もヤバい奴だ!?




