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899.土の精霊

「おーーーーーーはーーーーーーよーーーーーー」


 うわ、スローモーション撮影でもしてるような声の伸びだ。

 地面から出て来た人型土塊、意外とグラマラスボディだ。

 しかしながら土の体なので触っても弾力関連はあまりなさそうである。

 いや、むしろ泥の何とも言えない柔らかさはあるかもしれない。


 なんにせよ、下手に触って運営の罠にかかる訳にはいかないので、試してみたい気持ちを押し込んでしばし状況を見守る。

 ディーネさんに呼び出されたノームは、両手両足を土の中に入れたまま、女豹のポーズでディーネさんを見上げる。


「あー、うーーーーんーーーーでーーーーねーーーーーだーーーーー」


「あんたこんな場所で何してんの。まったく四大精霊だってのにこんな見つかりにくい場所で寝てるんじゃないわよ! ディーネみたいにアイドル目指しなさいな」


「あーーーーいーーーーどーーーーるーーーー? めーーーーーーんーーーーーどーーーーーーいーーーー」


 会話するのにいちいち相手の言葉を待ち続けるのは結構辛いな。


「とりあえず会えたわけだしスキルは手に入った?」


「ええ、マネージャーさんのおかげでちょっとスキルアップね。アイドル業には意味ないスキルだけど。水流に土や石を混ぜたゲイルトルネードとか土石流とか扱えるみたい。あと泥弾?」


 なるほど、相手精霊との協力技が使えるようになるのか。

 風と水で風雪とかか? 火と水は……水蒸気爆発かな?


「んじゃノームさん、他の精霊どこにいるかとか知らない?」


「えーーーーとーーーーねーーーーしーーーーーーらーーーーーなーーーーーいーーーーー」


 知らんのかい。


「ちなみにテイムとかできないかな?」


「ねーーーーーどーーーーーこーーーーーしょーーーーもーーーーー」


 寝床?


「ノームのことだしゆっくり寝られる場所が欲しいんでしょ。ノームが好むのは栄養豊富な土のある場所。マネージャーさんの家近くなら十分な栄養分あるんじゃない? 一度呼べたし、目的地で呼んでみたらどう? 気に入ったらテイムされるかも」


 なるほど、さすが精霊様だな。


「そんじゃまた呼ばせて貰うよ」


「おーーーーーーけーーーーー」


 オーケーサインを指で作ると、ノームさんはその場に溶けるように消えていった。

 もう土の中に精霊がいるかどうかなんて全くわからない。


「とりあえず、これで蚯蚓神社参拝と精霊はクリアだな。あとは英雄の武器か」


「こっちですじゃ」


 村長に案内されて多眼の英雄が眠る地へと向かう。

 村から一度出るらしい。

 と言っても村長の家より奥の方だけど。


「この先にございます。ただ、彼の人生はあまりにも絶望に彩られておりました。死者を冒涜するようなことだけは、なさいますな」


「あー、そうっすね」


 ただ、会話のためにも一度蘇す必要があるんだよな。

 落とし仔さんは村長さんも認めてるみたいだし、彼女のやることだから問題はあるまい。たぶん。

 岩なのか墓なのかはわからないが、土の上に不自然に設置されている場所へと辿り着く。

 どうやらここに英雄が眠っているらしい。


「落とし仔さん、頼む」


「ん。甦れー」


 気のない言葉と共に何らかの能力を発動。

 ぼこり、地面が盛り上がり、ソレが現れる。


「な、なんと!?」


 地面から飛び出すゾンビの腕。

 呪いを振りまくようにびくんびくんと胎動し、地面にくたりと倒れると、力を入れて体を持ち上げる。

 おー、でっけぇ!?

 二メートル越えの大男だったようだ。


「フシュー……」


 現れた上半身に驚きつつ、六つ眼のそいつが下半身まで外に出てくる前に話しかける。


「失礼、多眼の英雄さんでいいかな?」


「……なにゆえ。我が眠りを妨げた?」


 お、声帯まだ無事なのか。

 ゆっくりと体を引っ張り出しながら、英雄が尋ねてくる。異様な眼とがっしりした体躯のせいで威圧感が凄いな。


「協力を頼みたい。そのために無理をしてでもあんたに交渉を持ちかける必要があった」


「協力、だと? 人間が、この俺に!」


 おっと、地雷か。

 まぁ俺が人間である時点で地雷原か。

 

「今、昔の英雄たちを集めている。目的はこの世界を滅ぼしに来るドールという生物群を討伐するためだ。奴らは英雄武具でなければ戦えないらしい」


「ならば武器だけ持っていけばいい」


「武器を貰えるならそれはそれで嬉しい。しかし英雄の力があればもっと簡単に世界を守れる。違うか?」


「人間は信用できん」


「だろうな。けど、この方だったら?」


 と俺は背後に控えていた落とし仔さんを紹介する。

 しばし見つめる英雄。


「驚いた、な。なぜ人の味方をしている。貴女の母神は人間からすれば醜悪の権化、蔑んでくる相手に与する意味はないはず」


「我が主は母に貢物した。母とても喜んだ。この肉はその返礼だ」


「……アブホース神に認められし人間、か……よく見れば、連れている者もなかなかに変わっている。神に蛇に呪いの塊か」


「俺は容姿やら人外とかで区別してないからな」


「美少女かそうじゃないかある」


「いや、別に味方になるならオッサンとかでもいいからな? 一応」


 なぜかテイムはされないけども。

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おじテイマーも居るな
美少女テイマー(元男の子含む)
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