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89.総力戦

「トンネル抜けるわよっ!?」


 押されに押され、俺達はトンネルから後少しで外に出る場所まで後退していた。

 峠の方からは浮遊霊たちがこちらに寄ってきているのが見える。

 正直アレと挟み打ちされるのはちょっと不味い。


「私達で掃討するしかないんじゃないのテケテケ」


「ソレが一番か。ツチノコさん、ついでだから手伝って。あの叫ぶ奴」


「シャー」


 まさかのツチノコさん活躍の兆し!?

 テケテケさんとメリーさんに連れられて、背後の幽霊討伐へと出向くツチノコさん。

 心なしかその後ろ姿が雄々しく見える。


「ええい、さすがにこれは儂でもキツいわい」


「ってかタヂさん居なかったら確実詰んでましたっ、マジありがとうございます」


「そもそもが挑むレベル帯ではなかろうが! 無謀過ぎるわっ」


 そうは言われてもここの幽霊が仲間になってくれるかもって輝君に紹介されたんだし。

 俺達をここに向わせた輝君が一番悪いってことでタヂさん、抗議付いてきます?


「行ってたまるかっ。だがここに来た理由は理解した。必須レベル帯の報告義務違反だな。そいつぁ帰ってから報告だ」


 何処に帰って誰に報告するのやら。

 とりあえず輝、どんまい。


 まぁ輝はこの際置いといて。

 俺達の前に居るレギオンは今、全身を高速回転させて徐々にこちらに近づいて来ている。

 簡単に言えば戦闘コマといったところか。

 問題は無数に存在するデスマスク型の触手が一緒に高速回転していることだ。


 伸縮自在だからこそこちらのリーチを越えて無数の高速スピン攻撃が襲いかかってくるのだ。

 正直タヂさんが防衛してくれてなければ既に俺が逃げ遅れてたと思うんだ。

 その場合俺は死亡でレギオンの呪いを全身に受けてしばらく死にまくりの呪殺パレードに入っていたはずだ。


 タヂさんと知り合うきっかけになったのはネネコさんの相撲したいっていう駄々。あの時はネネコさんに呆れたものだけど、今はむしろ彼女の行動に感謝するしかないだろう。

 あとでキュウリ御供えしよう。

 そんなネネコさんは、といえば、さすがに今のレギオンに攻撃はできないので、後方の幽霊退治に参戦している。

 ついでを言えば、スレイさんもそちら側だ。塩を使った攻撃は可能だけど、魔力を纏わせて攻撃、という方法が出来なかったスレイさんもまた、塩を袋ごと俺から奪って後方支援に向っている。

 結果、レギオン迎撃チームは防衛にタヂさん。中衛に俺とディーネさん。後衛にハナコさんのたった四人での遠距離狙撃部隊となっていた。

 ここに稲荷さんが加わってくれればいいんだけど、彼女はレベル差があるのと魔力ではなく神通力しか使えないってことで相手の阻害と俺達の速度を上げる補助に従事、しかし、背後の浮遊霊の数が増えたらしく皆でも捌ききれなくなってるらしい。


 さすがに今背後を見る訳にはいかないので聞こえてくる声を参考にしてるだけだが、かなり切羽詰まっている。

 ゆえに稲荷さんは風狐を召喚して後方の支援に回してくれた。

 つまり、もうこれ以上の援軍は無い。

 たった三人でレギオンの残りHPを削り切らないと俺達の負け。後方の幽霊達を撃破してくれているが、こちらも徐々に押さえ込まれてるようだし、恐らくトンネルを出た時点で負けフラグが立つんだろう。


 つまり、俺達はトンネルを出るまでにレギオンを撃破してトンネルをつっ切らないと後方の浮遊霊たちに襲われてデッドエンドになる訳だ。

 おそらくイベントだからってことで、前に稲荷神社から帰る時遭遇した浮遊霊と同じくらいの幽霊達が襲いかかってきているようだ。絶え間ない浮遊霊の迎撃は、恐らくレギオンと同程度の手間だろう。

 つまり、俺達は前後二体のレギオンに挟まれているようなものである。


「レギオンのHPはあと500程、中心に居る本体に直撃させればほぼ五回のダメージで終わるはずだ」


「直撃させればね! マネージャー、あの触手邪魔ッ」


 問題は触手が高速回転しているせいでレーザー銃使っても本体に届く前に触手に当たってダメージが減衰してしまうのだ。

 御蔭で触手に当たった場合は10とか20位しかダメージは無く、たまに部位破壊で触手が千切れて数秒して元に戻る程度。


『ええい、当たれッ! 【赤いちゃんちゃんこ着せましょか?】』


 おお、相手も霊体だからか触手越しでも結構ダメージ入った。継続ダメージも入ったようだけど、まだ倒せない。

 既に俺の背後にはスレイさんが背中合わせに幽霊達を撃退している段階だ。

 背後との境界線はほぼない。

 これ以上長引けば誰かが脱落する。結果的に俺達が前後の壁に押し潰されるように消し飛ばされてしまう。


「ディーネさん、ハナコさん、持てる能力全てを使って全力攻撃、アレが後数センチこっちに来たら俺達の負けだッ」


 タヂさんの背がすぐ隣まで来ていた。

 さすがのタヂさんも汗まみれで必死に触手を捌いているが、このままだと背後から来る浮遊霊達に取り憑かれたり呪われたりでデメリットを喰らうだろう。

 そうなればレギオンを撃破してもそこで終わりだ。逃げ切れずに浮遊霊の群れに押し潰される。

 もはや、一刻の猶予もない。

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