892.呪物ください
「なるほどのぅ」
「うむ。神としてはそちらの方が先輩かな? 背は私の方が高いようだが」
「なっ!? これはただの化身じゃぁ!! 本気の儂はもうっとこうぼんきゅっぼんっでくねくねぷりんじゃからな!」
「ぷりん? おいしいか?」
「落とし仔さん、くねくねぷりんは食べ物じゃないですよ」
うーん。カオス。
巫女さんたちが帰ってきたことで姦姦蛇螺さんと鉢合わせ。
結果的に相談することで何かしら稲荷さんたちと契約結んだ様子だけど、俺はずっと蚊帳の外だったのでツチノコさんたちと遊んでおくしかなかった。
落とし仔さんたちはりんりんさんたちに丸投げしておいたので問題はないだろう。天然ボケと無気力なので基本だんまりだけどな。りんりんさんならなのさんとも付き合いあるし、そういう系統との会話力も高かろう。
それよりも姦姦蛇螺さんをどうするかって話なのだけど。
どうやら彼女と呪いは別口のようだ。
一応一緒ではあるけれど、呪いの源とは切り離せるようなので彼女が結界外で自由行動していても問題はない。
むしろ呪詛を払うには彼女が現世での楽しみを覚えた方がいいらしいのだ。
なので結界の外に出ることに関しては問題ないとか。
これからは巫女さんと共にここの蛇神神社の巫女を行いながらコンビニでお楽しみを行うらしい。
テイム? うんまぁ、なんかドール討伐は手伝ってやるとだけ言質貰っただけでテイムはしてない。
ただ、その代わり。
「呪物、ください」
コトリさんが大蛇の頭で出来た呪物と聞いて真っ黒な眼を輝かせていた。
なのでこれから姦姦蛇螺さんと二人結界内に入って呪物回収するらしい。
そんなもん回収してどうするんだってはなしだけど、一応ステータス強化には繋がるらしいので、俺がとやかく言うべきじゃないんだろう。
どうぞ、回収してきてください。
「んじゃ、行ってくる」
「呪っ物♪ 呪っ物♪」
コトリさんが小躍りしてる。
よほど結界から漏れ出てた呪詛で内部の呪物を美味しそうに見えたんだろう。
コトリさんたちが神社をでて結界へと向かっていくのを見届けて、俺たちは円陣を組む様に集まった。
「あの、姦姦蛇螺様本当に外にお出ししていいのですか? 私呪殺されません?」
「そもそもあの結界自体穴だらけじゃったしなぁ。しばらくごとに掛け直しでしかも別々の場所で結界作れって、その間内部の姦姦蛇螺がおとなしく移動してくれるのかって話もあるし」
「結界の綻びからそりゃ出てるよね、外」
「本人からは敵意が害意感じないから俺は問題ないと思うけど?」
「ヒロキさんが問題ないなら問題なさそうだけど、対外的には大問題ある。封印解除で各神社とかからクレーム来たりしない?」
「阿闍梨様辺りが様子見に来られるかも。その時姦姦蛇螺様見つけたらどうなるやら」
「うーん。その辺りの対策した方がいいんだろうなぁ。どうしよう?」
「お祓い屋さんたちの総本山に説明行くの」
場所なんざ知らんよ?
あ、でもあの地図に記載されてるか?
でも下手に向かったら問答無用でハナコさん浄化されられたりしないかな。
俺、目の前でハナコさん消されたら総本山灰燼に帰す可能性あるぞ。
「ふむ、神関連は儂から連絡しよう。後はコトリが呪物を回収してしまえばこの地を結界で覆う必要性もなくなる。巫女の方から連盟に詳細連絡をしておけば問題はあるまい」
ほんとかな。
嫌だよプレイヤーに討伐依頼とか来るの。
最悪を考えて巫女さんと姦姦蛇螺さんに俺の連絡先は教えておいたけどさ。
そう考えると拝み屋さんたちの総本山とやらに行っとくのもありかぁ。
でも今行くには時間があんまないんだよなぁ。
でもドール討伐戦にはちょうどよさそうなメンツだろうし。
あー、秘密結社討伐がどんどん後回しになっていく。
「えっとー、総本山総本山……あの、仏教徒の総本山と陰陽師の総本山と道士総本山がありますよ?」
なんで三つも?
んー、ああ。仏教総本山が多分阿闍梨とかそういう系のだろう。
陰陽師の方は安倍晴明とか芦屋道満とか土御門家とかだろうな。
残りの道士の総本山は……これってもしかして道教の総本山になるのか? ってことはこの世界キョンシーとかいちゃう系?
ゾンビにキョンシーにドラキュラに、噛みつき感染系とか世界滅亡まっしぐらだろ。
それに加えて精神寄生体とか成体兵器とか呪詛の塊とか、よく世界滅亡免れてるなこのゲーム世界。
「皆様お待たせしました」
お、コトリさんが帰って……なんか一層呪物感が増してない?
「確かにかなり強力な呪詛でしたが、そもそも私すでに久世のコトリバコ。負けるどおりがありませんでしたね」
まぁそうだよね。いくら強力な大蛇の呪詛とか言ってもパワーアップしまくってる呪詛神コトリバコに取り込まれるか取り込むか、と聞かれれば、大蛇の方が打ち勝てる可能性が見えないし。




