889.神社でお留守番
「ほ、綻び?」
「うむ。森の中に瘴気が満ちとるし、結界に綻びが出来とるから清浄な空気も一掃されとるな。姦姦蛇螺が出てこようとしとるんか、阿呆が封印解いてそのままになっとるだけか、ともかく放置するのは拙いのぅ」
「稲荷さんなら何とかできる?」
「結界を張るのはよいが、ここに稲荷神の加護がないからの。ずっとこの場におらんといかんわ」
「「シャー」」
ツチノコさんたちも手伝うならどう?
「それよりも今ある結界を補修してしまうのが手っ取り早いの。呪詛避けにコトリを借りることになるが?」
「結構かかるのか?」
「まぁ、数時間じゃな。行ったり来たりせねばならんし」
「じゃあしばらくこの近辺にいるよ。稲荷さんたちは補修やってきてあげて」
「ふむ、ならやってみるかの。そこな巫女よ。結界の補修を行ってもよいか?」
「え? あ、はい、その方がよさそうなら是非に」
「ではツチノコ二人とコトリ、ネネコも付いてこい」
あれ、それじゃあ俺のテイムキャラ、ほとんどいなくならね?
残ってるのシェリーさんと落とし仔さんだけじゃん。しかもシェリーさんはまだテイムされてないし。
「それじゃしばらく近場でレベリングしようかな」
「ここらの敵はかなり強力なの!」
「えっと、マダとーさん大丈夫あるか?」
「神社周辺は居なかったぞ。多分大丈夫だろ」
多分だけどな。
りんりんさんたちがレベル上げに向かったので、神社に残ったのは俺とシェリーさんと落とし仔さんだけとなった。
やることがないのでひとまず休むことにした。
でもこの辺り、座れる場所がねぇんだよな。
さすがに境内は罰当たりだろうし。
狛犬の代わりにトグロ巻いた蛇が左右の石像として存在している。
一瞬うん……いや、なんでもないや。やっぱいうのやめよう。
「暇ですねぇ」
「ですね」
って、二人とも賽銭箱の奥にある階段に座らない!? 何してんの罰当たりでしょ!?
「座る場所ここしかない」
「ずっと立っておくのは疲れました」
そりゃそうかもだけどさぁ!?
「罰当たりだの」
「でしょう、この二人信心がねぇから仕方ないっちゃ仕方ないんですけどね。妖怪と肉塊だし」
「変わった生物だとは思ったがなるほど、人でないなら座っても神も怒るまいよ」
そうかなぁ? そうかも?
「って、誰ぇ!?」
慌てて背後を振り向きながら飛びのく。
そこには、巫女服のお姉さんが立っていた。
いや、立っていたというか、佇んでいたというか這っていたというか。
下半身蛇で六本の腕を持つ巫女さんがそこにいた。
ちろちろと口から蛇みたいな舌が出てたりする。
うん、これ、どう考えても……
「姦姦蛇螺、外出てんじゃん!」
「あそこあまりにも暇なので。一度封印が弱まった隙に出られるだけの隙間を空けておいたのだ。おかげで最近はコンビニにハマってな」
意外と現代っ子だな。
「その姿でコンビニ行くんです?」
「さすがに人化くらいはするよ。私も何年と蛇神やっておるからな」
「なるほどー。ゆったりお話でも、と思ったんすけどここじゃ座る場所もないっすね」
「構わんさ。なんならそこの境内にでも座ろうか?」
罰当たり、いや、祀ってるのが姦姦蛇螺なら問題はない、のか?
「座っちゃっていいんすか?」
「許可しよう。なんか知らんが私を祀っているようだし、問題はあるまいよ」
と、早速人化した姦姦蛇螺がシェリーさんと落とし仔さんの間に座る。
俺はどこに座れと?
「ほれ来い」
えぇー。
手招きされている以上行かない訳にはいかないよな、相手神様だし。
これもラッキースケベのおかげか?
姦姦蛇螺の太ももに座ることになった俺。
姦姦蛇螺の座高が高いので俺が座ってもすっぽり収まる感じになっている。
まぁ今の俺が小学生体型だからだろうけども。
「うむうむ。若い男の子はハリが違うの。愛い愛い」
「あるじ、まんざらでもない? この肉も抱き着いた方がいい?」
「あらあら、まだまだ子供ですねぇ」
なぁにこれぇ。
こ、この俺が、普通に子供扱いされている!?
しかしここで反論する意味はないし、なんというか……役得です。
「何百年と封印されておると、森の中も飽きてなぁ。近年やってくる阿呆共が映像を映す板を持って実録姦姦蛇螺ぁーとか楽しそうにしておったでな。呪ってやったら変わったモノを落としていきおってな情報がいろいろと手に入った。するとコンビニとやらに行ってみたくなってなぁ」
「コンビニってなんですかぁ?」
「ほぅ、知らんのか?」
「おかしいなぁ。シェリーさんは俺たちと行動する際に何度かコンビニ寄ってんだけどな?」
「あら? そうだったかしら?」
「この肉はコンビニの記憶がありません」
そりゃそーだ。
あ、姦姦蛇螺さん、話長くなりそうですしこれどうぞ。一応ここの神様に奉納したお酒っす。




