886.森の奥のヤマノケ
巨頭オ村でやることを終えた俺たちは、さらに奥にあるらしい姦姦蛇螺の神社? いや、その禁足地の近場にある神社へと向かうことにした。
結構ヤバい感じの蛇らしいので禁足地には近づかないようにしよう。
コトリさんが居ても絶対安全とは言えないしな。
ディスマンに教えて貰ったからか、神社のある場所が地図に光点として出現しているので、それを頼りにして近づいて行けばいいようだ。
今回もツチノコさんたちを先頭にしてマダにーさんたちを駆逐してもらう。
まぁコトリさんがいるからマダにーさんたちも弾かれて消されるんだけどね。
ツチノコさんたちはたまに結界の外に出てマダにーさんを食していく。
しばらくそんな感じで探索を進めていくと、巨頭族がでてこなくなり、一層光の届かない密林地帯へと変わっていく。
出現する敵も変わった?
なんか派手な青色の鳥っぽいの出てきたり、人型大の巨大アリが大群で襲ってきたり、コトリさんの結界がなかったらヤバいんじゃないかここ?
って、うおぉ!? 今木が動いた!?
「あれは忍者ナナフシだそうですよ」
「あっちのはバルカンヒクイドリあるな」
「なの? ばるかん? あっちのはマグナムディノポネラなの」
ジャングル系の敵が出るのかな?
っていうか、ナナフシがなんか投げて来た!? 手裏剣!? 葉っぱ手裏剣だ!
「ひぇぁ!? 何じゃ今の!? ヒクイドリの額からなんか沢山出て来たぞ!? バルカン砲なのか!?」
「あらぁ……ディノなんとかさんがいきなり飛んできて消えましたよぉ?」
弾丸の如く飛んできたディノポネラだったが、コトリさんの結界に自ら飛び込み呪殺されたようだ。
ほんと、コトリさん付いてきてくれて助かったよ。
今回コトリさんがいなかったら新しい神社まで辿り着けなかったんじゃなかろうか?
ツチノコさんたちがマダにーさんを何とかしてくれたとして、弾丸のスピードで襲ってくるディノポネラにバルカン砲発射してくるヒクイドリ、上からは枝に擬態したナナフシが葉っぱ手裏剣投げてくる、と。この密林攻略させる気ないだろ運営。
「ヒロキ、ちょっとあいつらと相撲取っちゃダメか?」
ダメです、なんかあいつら相撲する気なさそうだし。
固有結界使わないとだめじゃないか?
「なら使う!」
「とりあえず神社行くまでは我慢で」
「そんな!?」
ネネコさん連れてくるのはいいけど基本相撲で暴走するから気を付けないとな。
「くけけけけ……」
ん? なんか笑い声が聞こえる?
この先か?
「嫌な気配がするわ旦那様。皆さん私の傍に」
コトリさんが何かに気付いたようで皆を自分の傍へと集める。
警戒しながら前へと進んでいると、変な生物を見つけた。
白いのっぺりとした生物だ。
にたにたと笑いながら片足で飛び跳ねている。
一本だたらの亜種か?
「テン……ソウ……メツ……」
なんだあいつ?
まぁ近づいて来たらコトリさんの結界で消されるか。
「あれ? なんだっけ。なんか聞いたことある怪異の話に似てるのがいたような?」
「りんりん、アレ知ってるあるか?」
「えっと、えっと、待って。確か……ヤマノケ?」
りんりんさんがその名に辿り着いた時、それはヤマノケが結界に突撃して消失するのとほぼ一緒だった。
「死んだな」
「一瞬でしたねぇ」
「白い肉消えた」
シェリーさんと落とし仔さんが何とも言えない顔で告げる。
ちょっとボスっぽい感じに出現したのに瞬殺されたからなぁ、そりゃそんな顔するよね。
「テン……ソウ……メツ……」
……ん?
今、後ろから変な声聞こえた?
慌てて後ろを振り向く。
ヤマノケとかいう生物は居なかった。
見回してみるが、そこにいるのは俺たちだけだ。
俺、落とし仔さん、シェリーさん、ツチノコさん二人、稲荷さんにネネコさん、なのさんりんりんさんレイレイさんも聞こえた声に周囲を見回している。
さっきのは空耳だったか?
「そうです! ヤマノケ! 思い出しました」
「りんりんさん?」
「ヤバいですよヒロキさん! ヤマノケって女性特攻の危険怪異です! テンソウメツとかいいながら近づいてきて女性の精神に入り込むんです」
は?
「確か49日そのままだと一生憑りつかれたままになるとか!」
マジで精神寄生体のドールみたいな奴じゃねぇか!?
え、今あいつの声聞こえたってことは、誰か憑りつかれた!?
「皆精神は無事か!」
「おら問題ねぇだ」
「う、うむ。儂もだ」
「テン……ソウ……メツ……」
また聞こえた!? 空耳じゃねぇ! 誰だ? 誰に……
「りんりん、大丈夫なの?」
「憑りつかれたらテンソウメツとか言い始めますからそれを言ってなければ憑りつかれては無いはずです」
「なら私じゃないあるなー」
「「シャー」」
無事なのは、シェリーさんだろ、落とし仔さんも普通にしゃべってるし、りんりんさんたち三人でもない。ツチノコさんたちからも聞こえない。稲荷さんもネネコさんも無事?
じゃあ、憑りつかれたのは……
「はいれたはいれたはいれた……」
自然、皆の視線が彼女へと向く。
コトリさんの唇から、コトリさんではありえない声が聞こえていた……




