885.英雄激闘
巨頭オ村のイベントはあと一つ。
そうだった。ナスさん連れてくればよかった。英雄どこかに居ても復帰してくるだろうし。
召喚陣でナスさん呼び出すかな。
「あるじ、何してる?」
「英雄武器の捜索だな。ナスさん連れてくるんだった。死者蘇生できればこの辺に英雄がいるってわかるのに」
「死者蘇生……これか?」
ぼこり、巨頭オ村の一角で、土が盛り上がる。
中から朽ち果てた中華系ゾンビ娘が現れた。
蘇生できるんですか落とし仔さぁん!? 捕食だけじゃなかったの!
「ん。意志なしで操るくらいはできる」
そっすかー。
やっぱこの人化け物でしたわー。
「ゆ゛る゛ざな゛い゛」
って、なんか英雄ゾンビがこっちに敵意向けてるんですがぁ!?
「おっと、ここから先は私の番ね! その武器、譲ってもらうある!」
「わわ、遅れてもう一体出て来た。この人が私の武器持ってるのかな!?」
「手伝うの」
レイレイさんが割り入り、りんりんさんとなのさんが隣り合う。
なるほど、三人の戦いになるのか。がんばえー。とりあえず相手が満足したら交渉するんでよろしく。
「英雄じゃろ? あの三人ではキツイのではないか?」
「いや、そうでもないぞ。ゾンビ化してても意志は英雄さんのモノらしいし、ほら、相手がどういう存在か理解したようで手加減して動いてる」
「おお、確かに」
中華系英雄はチャイナ服にお団子二つの女性だった。
武器はチャクラムっていうのかな、二つの輪っかを振り回したり投げたりして相手を切り裂く武器らしい。
レイレイさんは彼女と一対一で戦うつもりだ。
武器はヌンチャクを振り回し、ハイーッと叫びながら攻撃してる。
うん、届いてないよ?
りんりんさんが戦ってるのは大きな扇を持つお姉さんだ。こちらも妖艶な姿でゾンビでさえなけれればめっちゃくちゃ美女だったんだろうけど、今は見るも無残なゾンビさんだ。
りんりんさんの弓から放たれた矢を扇で弾き、風魔法か扇を振るった真空波か、ともかく見えない刃でりんりんさんへと攻撃を行っている。
なのさんが二人のフォローを行うためにチャイナ娘と妖艶お姉さんの間を行ったり来たりしながら攻撃を続けているので、致命的ダメージは食らっていないが、りんりんさんとレイレイさんの方が押され気味だ。
俺はコトリさんと共にランチシートをその場に敷いてリラックスモード。二人でお茶を飲みながら見学だ。
隣では稲荷さんがおいなりさんを食べている。それ、どっから持ってきたの?
あとアブホースの落とし仔さんが襲い掛かってくる巨頭族を間引いているので、ちょっと捕食音が酷いです。あと蛇共、アブホースに余ってるマダにーさん奉納しないでくれません? これ以上お礼とかいらんのよ。
「ヒロキ、おらも参戦してええか?」
「彼らに聞いてくれ。試験中なら手伝うのは無し、そうでないなら適当に遊んできなよ」
「おーし、ちょっくら行ってくる!」
シェリーさんは……寝とる!?
こんなところで寝れるとか、大物かな?
「ぬはははは、おらと相撲しよーぅっ」
ゾンビ相手でも普通に組み合おうとするのはどうなんだ。
うわ、ぬぐっちょって言ったよ今! ってこの音は落とし仔さんの捕食音だった。
ふむー、ネネコさんが突撃したおかげで四対二になって安定したフォロー状態で戦えるようになったな、りんりんさんとレイレイさんの動きが少し良くなった。
「しかし、暇になったな」
「私はこういう時間も好きですよ?」
「まぁコトリさんとゆっくりする機会久々だし、いいか」
二人寄り添い合って戦いを見守る。
できれば見るのは桜並木とか景勝地の方がよかったなぁ。
ゾンビとの激闘見ながらお茶することになろうとは。あと背後から咀嚼音がするので決してゆったりしたほのぼの日常には程遠い。
っと、そろそろ決着付くかな。
さすがに二対一になった英雄さんは押され気味だったしな。
多分本気出せば勝てるんだろうけど、彼らの頑張りに負けてくれるようだ。
「そこまで!!」
トドメを刺そうとしたりんりんさんとレイレイさんを一言で止める。
「ヒロキさん!?」
「あー、英雄のお二方、少々お話があります。満足して死ぬのはいいですがその前に俺の話を聞いてほしい」
話の内容は簡単だ、ドール討伐戦に参加してくれないか、という話と、復活の可能性があるけど復活してみます? ってことである。
最初こそ理解不能、といった様子だったが、何度か詳細に説明していくと、了承の握手となった。
うん、美少女との握手は嬉しいんだけど、ゾンビは遠慮したいなぁ。ひぃ、ぬちょってしたぁ。
二体はご満足いただけたようでゾンビ化が解除、骨へと戻る。
それをアイテムボックスに回収し、英雄武器はりんりんさんとレイレイさんが回収する。
「あとはなのだけね」
「なのは既に持ってるの」
「いつの間に!?」
なのさん、英雄武器持ってたのかよ。というかその鎌、英雄武器だったのか。




