878.黒いガレー船
黒いガレー船の近くまでやってきた。
真っ黒いボディーに幾つもの櫂が突き出ている木造船だ。オールを漕ぐ小型船の大型版といったところで現代の船との違いは、人力という点だろう。
おそらく奴隷たちが櫂を漕いで海を移動してるんだろう。
大きさは豪華客船くらいの大きさで、乗組員たちがせわしなく木箱をもって船に登っている。
ふむ。このまま潜入するには目立ちすぎるな。
ティリティさん、闇魔法やっちゃおうか?
「それが一番無難か。ではガレー船のどこで落ち合う?」
んじゃ、あの辺りで。
「了解」
闇魔法で桟橋周辺からガレー船乗り口を暗闇に変える。
すぐさま闇に特攻し、俺はナイトヴィジョン頼りでガレー船へと侵入。
貨物室へと潜り込み、魔法が切れるのを待つ。
しばらく待っていると、ティリティさん、ニャルさん、クトゥグアさんの順に合流して来た。
闇に親和性の高い順といったところか。
ニャルさん一応地属性らしいし。クトゥグアさんは真反対の属性だしなぁ。火炎属性なんて闇を照らす系だもの。
「ふぅ、潜入成功!」
「あいつら慌ててたよ。ここにも来るかも?」
「それについては問題ねぇ。見な、ここの床剥いだら一人分横向きに成れるスペースがある。ここから床這って四人隠れれば十分問題無し、ニャルさんが不定形化して最後に塞いで、ついでに様子を見ておいてくれ」
「ニャル使いが荒くない!?」
「なんなら変わるぞ? ダーリンの役に立つのも良き妻の条件だ」
「私の仕事を取るなぁーっ」
「ニャルラトホテプは面倒くさいな。全く」
クトゥグアさんも似たようなもんだけどな。言わないけど。
床を剥いで隠れた後は、ニャルさんが安全を告げるまでじっとする。
意外とどたどたうるさいな。かなり念入りに探されてるようだ。
まぁ貨物室だから隠れられる場所は沢山あるもんな。
でもその辺りに隠れることなくまさか床引っぺがして潜り込んでるとは思うまい。
結果、念入りに探しても見つからなかったようで捜索班は別の場所を探しに向かったようだ。
「もういいみたい」
「長かったな。ダーリンと密着できたから問題はないが」
「そんなことをしていたのかヒロキ」
「そんなことされておりましたクトゥグアさん」
「ハナコに言ってやろー」
「よし分かった。ドリームランドから目覚めた瞬間ニャルラトホテプを殺せばいいのか」
「うむ。手伝おう」
「冗談だからやめてね!?」
ニャルさんの場合冗談と思えない冗談だからなぁ。
しかし、出航までしばらくやることないな。
「ニャルさん、出航するかどうか確認できる?」
「ニャルラトホテプに頼むまでもない。すでに上から監視してある。船内への侵入者がいなければ出発準備は完了したようだ。あとは捜索が終わり次第だな」
俺らのせいで出航遅くなってんのかよ。
んじゃましばらくゆっくりするか。
「んで? この後どーすんの?」
「まさか潜入したかっただけという訳ではあるまい?」
「ああ。うん。実はついさっきダイラス・リーンのイベントに遭遇してな。一応本筋としてはウルタールに戻ってアタルさんから結界の使い方と発光体の復活方法教えてもらう予定なんだけど、運営の創ったイベントとかそのままやるとダイラス・リーンが滅びるからさ。船が出航した後船を結界で塞いで発光体復活させちまおうかと思って」
「外道でしょ?」
「相手にとっては、だな」
「あのー、一応このガレー船の乗組員、私めの奉仕種族なんですが?」
「だってダイラス・リーンやウルタール攻めようとしてんじゃん。ニャルさんも敵になるなら一緒に潰しとこうかと」
「よし、手伝おう!」
「だから冗談でもやめてねぇっ!?」
っと、船内に振動が。
どうやら船が出航したようだ。
「あとはどの辺りで脱出するか、だな」
町からは多少移動した辺りがいいだろ。
「では私が合図を送ろうか。今しばらくゆっくりしよう」
せっかくだし貨物室の中にあるモノ全部アイテムボックスに入れとくか。
どうせこのガレー船は沈むんだし。
「おいおい、ヒロキがなんか非道なことしてるんですけどー」
「失敬な。無駄になる資材を回収しているだけだって。有効活用しないとな」
「そろそろいいと思うぞ。港町からだいぶ離れた」
クトゥグアさんの許可も出たし、そろそろ大立ち回りと行きますか。
「順番の確認するぞ。まず皆で敵性分子の排除。船中央部にルビーの設置、我々の脱出から結界を張って発光体の復活。そのまま離脱だ」
「にゃはは、任務了解。鳥になってヒロキを引き上げればいいな」
「ふむ、ティリティは私が連れあげればいいのか」
「よろしく」
んじゃま、黒いガレー船攻略と行こうじゃないか!
ドアを開いたら一気に行くぞ。作戦、開始だ!




