877.レンの住民
ティリティさんとデートは結構楽しかった。
デートの仕方もこれでいいみたいだし、今度は元世界の方でハナコさんとデートしたいな。
でもハナコさんの場合服とか意味ないからなぁ。アラクネさんの店で買うしかないか。
となると遊園地とか動物園を攻めたほうがいいな。
遊園地はまだ復帰できそうにないし、動物園か水族館に向かうか。
「んー。美味しいっ。このダイラス・リーンクレープ、大当たりだぞ」
「確かに意外といけるなこのクレープ」
黄泉世界ではないので夢世界で食事をしても問題なく元の世界に返ってこられる。
つまりまぁ夢で食べても現実じゃ食べたことにならないってことだろう。たぶん。
ということは魚介類も問題ないのか?
「お、そこの魚屋? 変わったのあるな。さっきのとこと違って変なぶよぶよがある」
「あー、それはダメだぞダーリン。ダゴンかクトゥルフの肉とかそんな奴だ。食べたら眷属化するから夢見人でも詰むぞ。現実世界にも影響あるし。眷属化したいならぜひ我輩の肉を食べるべき、いや、なんでもない……」
なにそれ怖い。
夢の食べ物も全然大丈夫じゃなかった。
なんでも食べていいって訳じゃなさそうだ。ティリティさんたちに許可貰った奴以外食べないようにしよう。
変なの混じってる可能性あるし。
「ん? そろそろ中央広場か?」
「そうみたい……ダーリン、隠れようか」
中央広場の中央に巨大な台石の上にこれまた巨大なルビーっぽい石が設置されていた。
しかも浅黒い肌の2角、尻尾、蹄をもつターバンを巻いた商人が数名、その周囲を見回っている。
うわー、嫌な予感しかしねぇ。
「レン人だな。となるとあの巨大な石は……」
発光体じゃねぇか。どーすんだよ。こんなイベントいらねぇよ!?
アタルさんにお願いしてダイラス・リーン潰すしかねぇか?
あの小説通りによ?
しかし、あいつらなんでここにいるんだ?
ムーンビースト共何するつもりなんだろうか?
奴隷が手に入らないから街に人を連れ去るつもりかもだが、あんなもん置いたら皆町から出てくだろ?
もしかして、この町を占拠するつもりか?
確かにそれなら港町を手中に収められる。このダイラス・リーンは各港町への要衝となる場所だし。ムーンビーストにとってはにっくき敵である猫たちのいるウルタールへの橋頭保になるだろう。
なるほどなぁ、レン人だけが使える発光体は周囲の人間たちの精神を削り取るし、徐々に制圧してウルタールから猫を追い出すか滅ぼしてしまおうってことか。
なら……阻止するしかないな。
「ティリティさん、作戦変更だ。あれ、奪っちまおう」
「ほ?」
「発光体入りの巨大ルビー、アレを奪うのさ。ついでにガレー船に乗り込んで海の真ん中あたりで発光体解き放ったら、どうなんだろうな?」
「さすがダーリン。考えることえげつない!? でも乗った。面白そうだし」
突撃の合図はティリティさんの魔法だ。
中央広場一体にティリティさんが闇魔法を放つ。
真っ暗闇に支配されたのを見計らい、俺は闇の中へと突入。
ナイトヴィジョンのおかげで闇の中でも普通に見えるからルビー迄辿り着くと、即座に手で触れアイテムボックスにしまい込む。
ついでに一体のレン人を背後から締め落として装備を奪取。
あとはアタルさんに「結界を張る呪文」と「ルビーから魔物を解放する呪文」を教えてもらうべきなんだけど。
「ガレー船帰るまでに戻ってこれるかな?」
「吾輩唱えられるから問題ないぞ。さっさと乗り込もう。帰りはビヤーキーを使えばすぐだ」
マジかー。ショゴスロードマジ優秀。
闇が晴れる前に中央広場から離脱し、ガレー船へと向かう。
背後でレン人たちの慌てる声が聞こえるが、無視だ無視。
ちゃんとルビー奪う代わりに代わりのモノ置いてきたからそれで我慢してくれ。
タコっぽい謎生物だ。ちゃんと救出はしてやったからな。後は好きにするがいい。
「お? ヒロキじゃん。何してんのー?」
「む、ヒロキか。何を急いでいる?」
ニャルさんとクトゥグアさん!? なんで二人が一緒に居るんだ?
意外と仲がいいんだろうか?
二人がいるのは射的の店っぽいけど。
「二人は何してんの?」
「当然、勝負だ!」
「クトゥグアの雑魚が勝負しようっていうからね、まぁ私の勝ちだけどな」
「何を言う、3勝2敗3分けでこっちの勝ちだ」
「はぁ!? こっちの勝ちだろ。どこ数え間違えてんだ!」
やっぱり仲、いいなぁ。
「ダーリン、レン人たち異変気付いた!」
「マジか、んじゃ二人とも急ぐからまたな」
「また、ってどこ行くつもり!?」
「ガレー船」
「「私も行こう! って真似すんな!?」」
面白そうな気配を察したらしい二人が同時に後を追ってきた。
まぁニャルさんがいればヤバいことにはなるまい。一応彼女の眷属相手だし。ぶっ殺す側だけど。




