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876.ティリティさんと二人きり

「この辺りはショッピングモールかな?」


「ダーリン、どう考えても閑古鳥鳴いてるぞここ」


 ショッピングモールはショッピングモールでも場末というか、近くにショッピング施設が出来て客をごっそり取られた寂れた商店街、といった感じだ。

 ちゃんとやってるのはやってるけど客がいない。

 理由は今ガレー船が来てるから、だろう。

 通常時はもう少しにぎわっていると思われる。

 

 まずは一番近くの服屋かな。

 ここでも一番主流なのがローブらしい。

 色違いのおしゃれなローブが沢山売られているようだ。

 

「ローブしかない……」


「いや、ちゃんとほら、ニカーブとかチャドルとかもあるぞ」


「吾輩はいらない、かなぁ?」


「一応この町用に一つどう? この辺りいいんじゃね? サルワール・カミーズとか意外とありかも?」


「そ、そうか? そうだろうか!?」


「ニカーブは、ちょっと似合いすぎるな。眼だけ爛々光ってるし」


「むぅぅ。姿隠しには良いが、なんだか恥ずかしい」


「こっちにするか? 布お化けコーデ」


「布に目と口の場所だけ開けた奴ではないか。それならこっちの方がいい」


「じゃあそれで。店員さんこれ一着ぷりーず」


「嵌められた!?」 


 俺の言葉に店員がやってきてささっとニカーブを回収していく。

 

「とりあえず他に欲しいのある?」

 

「い、いい。これ以上買わせるのは偲びない」


「オキャクサン、イイノアリマスゼ」


 おっと、店員さんノッて来た。

 奥に引っ込んで持ってきたのは……なるほど! 魔法少女服か!


「な、ななな!?」


「ティリティさん、ぜひ、着てみない?」


「だ、だだだ、ダメだぞ。露出が多い、ほ、ほら、スカート短いし、脇出るし、おへそも出るぞ!? しかもセーラー服に似てるぞ!? わ、吾輩が着るのは少々年齢的にアウトじゃないか!?」


 年齢どれくらいなのか知らないけど、行けると思うぞ。というかほぼ真っ黒だしわからんだろ。

 しばし、俺と店員さんで服の両側持って見守っていると、むぅぅっと震えるティリティさんは、観念したのか、俺たちから服を奪い取ると試着室へと向かっていった。


「んで、店員さん、ちょいと聞きたいことがあるんだが」


「キキマショウ」


 意外と話せる店員さんでよかった。ノリもいいし、ダイラス・リーンの中では優良物件だな。服の買い物はここでしよう。

 とはいえ、ドリームランド内の物品は持ち運びできないからドリームランド内のみなんだよな。

 せっかくの服もティリティさんあまり着てくれなさそう。


 それからしばし、ティリティさんが戻ってくるのを待つ。

 ふっふっふ、全員分のローブは手に入れたし、土産も手に入った。

 この店での用事はもう終わったと言っていいだろう。


「だ、ダーリン、どうだろう?」


 おずおずと、試着室のカーテンを開いて姿を現すティリティさん。

 セーラー服を基調とした魔法少女服に身を包んだ真っ黒ボディのティリティさんが現れた。

 意外と、アリだな。いいと思います!


「店員さん、アレも買いで!」


「マイドオオキニ! オニイサントテモイイヒト、オダイジンサマ」


 揉み手をこすりまくる店員さんがレジを打ち込んでいく。

 おー、結構な値段だな。じゃ、一括で。


「イチオウイッテオキマスガ、ドリームランドノショウヒン、ゲンジツニモッテケナイデスヨ?」


「ドリームランド内で使うから問題ないよ。あんがとさん」


 会計を済ませ、恥ずかしがるティリティさんを連れ出そうとしたけどさすがに無理だった。

 恥ずかしがったティリティさんはすぐさま試着室に引っ込み元の魔導士ルックへと戻ってしまった。

 魔法少女の方が見栄え良かったのに。次の場所でロリポップな杖買うよ?


 防具屋を後にして、次に入ったのは生鮮食品店。

 と言っても主食はパンでチーズが主流のようだ。

 ウルタールから輸入している葉物野菜もあるようだが、肉類はほとんど見かけない。

 どうやらこの周辺は肉が取れない地域らしい。

 代わりに魚が結構売られてる。


 ほとんどの魚が見たことない異業種だけどな。

 見ろよティリティさん、こいつなんてまだ生きてて今にも飛びかかってきそうなほど凄い形相を……ぎゃあぁぁ!? あっぶねぇ、マジで噛みつこうとして来やがった!?

 ドリームランドの魚は活きが良すぎていけねぇや。


「お、ダーリン見て見て、タコもいるぞ」


「現実のタコとはちょっと違うなぁ。火星人の想像みたいな生物だぞこれ」


【そこの者、助けてくれ、このままだと売り物として処されてしまう】


 そ、空耳が聞こえる。

 空耳だ。うん。聞こえなかったことにしよう。

 さすがにタコを救出する意味はないはずだ。


「どうしたダーリン?」


「はは、なんでもないよ。さ、あっち行こうぜ」


 ティリティさんをそっと促し、俺はその場を後にした。

 悲痛な空耳がしばらく続いたが、空耳だから聞こえない。聞こえないったら聞こえないんだよ!

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