872.猫の街から港町へ
「夢の中だけどおはー」
「よぉヒロキ。昼と夜はどこ行ってたんだ?」
「あ、ヒロキさん、待ってましたよ。ゲームの中で眠るって新鮮なゲームの仕方ですよね」
宿の一階に降りてくると、すでにドリームランド入りしていた未知なるモノさんと案内人。さらにりんりんとレイレイが待っていた。
二人ともドリームランド来れたのか。
「いやー、ダンスレッスン削ってでも勉強したかいあったよ」
「受験勉強より勉強したある」
お前ら優先事項はき違えてないか?
「ちなみになのさんは?」
「さぁ? こっち来てるかと思ったけど、いないね?」
「夜間一緒だったから来るかと思ったけど、ログアウトしたのかな?」
「え、なの夜中一緒だったの!? おのれ抜け駆けか!」
「私の金蔓が!」
おい、レイレイ、人を見ながら金蔓とかいうな。
「とりあえず座れよヒロキ。今日の移動に関して話し合い中だ」
「おっけー。どんな感じで進んでんの?」
「ドールを見に行くためにまずはここから南に向かってダイラス・リーンに向かう」
「一応、黒いガレー船には近づかないってことが決まったよ」
「こっから七日かかるらしいけど、ゲーム内だとどうなのかな?」
「意外と端折られてるんじゃない? 魔法の森からウルタールもそこまで離れてなかったでしょ?」
そういえばそうだな。
「ってことは、七時間くらいで着けるか?」
「70分くらいじゃね?」
「魔法の森からウルタールまでを考えると確かにそれくらいが妥当でしょうね。あまり遠くに作ってしまうと移動だけで何日もかかりますし、プレイヤーが飽きるかもしれません」
「あー、それはあるな」
「せっかくですし道すがら、今日の行動について話しません? あ、ヒロキさんは最後で」
何でだよ!?
それから、道すがらりんりんとレイレイの苦戦したテストの話を聞いたり、ほぼ畑仕事の手伝いで今日はログイン出来てなかった未知なるモノさんの話を聞いたりする。
話のきっかけを作った案内人君は一人でいろいろ回ってきたようだ。今は世界の果てを探して旅しているらしい。
この世界に果てはあるのか、あるいはループしてるのか、あらゆる可能性を考えながら真理に向かって旅立っているとのこと。
下手に世界の果てに向かってキャラロストしないことを祈っておくよ。
「そういえばニャルさんたちは何してたんだ?」
「んに? そんなもんUFOの中でゆったりしてたに決まってるじゃない」
「こいつ、クトゥグアと一緒にテレビ見ながら居間でごろごろしていたぞ」
「失敬な、ニャルラトホテプなんかと一緒にするな!」
「そうだそうだ、クトゥグアなんかと一緒にすんなテイン」
反応が同じなんだよなぁ。
ああ、ちなみにドリームランドに入ってからは俺のパーティーはいつものドリームランド組になっている。
ティリティさん、ギーァ、ニャルさん、マイノグーラさん、クトゥグアさん、テインさん、くねくねさんである。と……言いたかったんだけど、マイノグーラさんは疲れたって言いだして今回はドリームランドに来なかった。
ギーァは普通に来てるのにな。
「ギーァ?」
なんでもないよ、気にしないでギーァ。
「あれ? そういえばなんか山登るとか登らないとか言ってなかったっけ?」
「霊峰ハテグ=クラだろ。バルザイの偃月刀がある場所。お前が来る前に聞いたんだがよ、ここしばらく番神どもがあそこで踊ってんだと。見つかると生きて帰れないらしいからな。しばらくは向かわない方がいい。一応、ドールの確認終えてから向かえば丁度いない時くらいになるらしいぞ」
「たらい回し系ゲームかな?」
「初期のRPGか? まぁ確かにドール確認が条件ってなら行ったり来たりでたらい回しだよな」
「んで登ったら上ったで遅かった、みたいにライバルキャラに先越されたり、ヤバい封印が解けたりするんだ」
「ない、とはいいきれないからなぁ、ここもゲーム内だし」
「リアル過ぎるからたまに現実世界と混同しちゃうんですよね、元の世界に戻った時の方が現実感なかったりしますし」
案内人君も結構極まってるなぁ。
そのうち現実世界戻りたくない、とか言って限界までゲームしてたりしそうだな。
そのまま救急車で運ばれるんだ。
俺も可能性がないわけじゃないから気を付けないとな。たまに現実世界のゲーム筐体メンテナンスしたり埃取ったりしとかないと。
「ダイラス・リーンかぁ、港町って何気に初めてじゃないですか?」
「言われてみれば、田舎っぽい街や市街地はあったけど港町は初だな。ちょっと楽しみになって来た」
「魚とかおいしいあるか?」
「未知の寄生虫いたりして」
りんりんさんそういうのフラグになるから言わないでくれません?
火を通しても死なない寄生虫とかマダにーさんクラスですよ?




